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第53話 歌姫はソワソワしている①
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キャンプ系YoTuberとして、イリスをデビューさせたユリナの考えは既存のアイデアに留まっていなかった。
兄である銀色の悪魔と行動することを義務付けた。
これは非常にリスクが高い。
ザックことイザークはポメラニアンの振りをしているが、無理がある。
まともに犬の振りが出来ない。
普通にその姿のまま、人語を発していた。
吹き替えだと誤魔化せるものでもない。
しかし、ユリナには奥の手があった。
これまでもそれを最大限に利用し、日本全土から生体エナジーを合法的に奪うことに成功している。
動画共有サイト『YoTube』を運営しているのがグローリー社である。
検索エンジンを始めとしたインターネットに関連したサービスや通信機器といった製品までを提供し、世界中を席巻している大企業だ。
旧アメリカに本社があり、社主セルベール・グローリーは世界屈指の大富豪としても知られていた。
このセルベールの孫娘エリザベスが、経営を任されているのがYoTubeなのだ。
そして、そのエリザベス・グローリー……またの名をエリザヴェータ・スラーヴァの正体こそ、ユリナである。
歌のライブ配信を行いながら、一切がアーカイブに残らない秘密はここにあった。
グローリー社のノウハウを全て投入し、編集し操作しているのだ。
ユリナは人々に疑念を与えることを避けるべく、ペットの動物が自然に会話をしているように見える吹き替え動画を予め、YoTubeに放流していた。
意図的と悟られないように配慮し、遅効性の毒が沁み込むが如く、ジワジワと人々の記憶に刻まれていく。
その策が功を奏したのか、案の定ネットでもCGに過ぎないという声が圧倒的に高かった。
イザークがいる以上、不測の事態が起きたとしてもイリスに危機が及ぶことはないと判断したユリナは、イリスをキャンプ系ではなく心霊スポットに蔓延る怪異を退治させる方針に切り替えた。
何よりもイリスには妖の太郎として、ハンターの技を培っていた経験もある。
コミュニケーション能力にやや難があるのは本人も認めるところであり、それを短期間で矯正するのは無理だとユリナも考えざるを得なかった。
そうである以上、イリスの特技を最大限に生かしたライブ配信を行うのが彼女にとっても最良のチョイスであるとユリナは最終的な判断を下した。
この読みはまたも大きな当たりを引き寄せ、見た目が愛らしく言葉遣いのたどたどしい少女となぜか偉そうな態度の喋る犬というコンビが大人気となった。
人気コンビYoTuberとなったイリスとイザークは、新たな心霊スポットでライブを行うべく雷邸を離れている。
ダリア、ドロシア、リ・トスらのユリナが、プロデュースしたYoTuberも新居に活動の拠点を移していた。
ユリナが手配した新居は配信環境が整い、怪異の為に用意された怪異の為の集合住宅だった。
「だから、今日は久しぶりに二人きりよ」
「そうだね」
使用人代わりとして、邸内を動いている亡霊を除けば、麗央とユリナしかいない。
ここ最近は見られない光景でもあった。
二人きりになろうとすると邪魔が入り、ユリナの機嫌が悪くなるという悪循環に陥りかけていただけに麗央もほっと胸を撫で下ろす。
ゆっくりとした午後の一時だった。
二人でお茶を飲みながら、ただ静かに時を過ごす。
麗央は年齢の割にこういった時間の過ごし方を好んでいた。
ただ、ユリナと同じ時を過ごしているだけでも彼にとっては十分なのだ。
「ねぇ、レオ」
「うん? どうしたんだい?」
「ちょっと立ってみて」
「急にまた……いいけどさ」
ところがユリナが何かを思い付いたらしく、目を輝かせながら妙なことを言い始めた。
ここで下手に反論をしても口で勝てる気がしないどころか、やり込められて「え? そういうのが負け惜しみぃ~」と勝利宣言をされるのが関の山なのだ。
兄である銀色の悪魔と行動することを義務付けた。
これは非常にリスクが高い。
ザックことイザークはポメラニアンの振りをしているが、無理がある。
まともに犬の振りが出来ない。
普通にその姿のまま、人語を発していた。
吹き替えだと誤魔化せるものでもない。
しかし、ユリナには奥の手があった。
これまでもそれを最大限に利用し、日本全土から生体エナジーを合法的に奪うことに成功している。
動画共有サイト『YoTube』を運営しているのがグローリー社である。
検索エンジンを始めとしたインターネットに関連したサービスや通信機器といった製品までを提供し、世界中を席巻している大企業だ。
旧アメリカに本社があり、社主セルベール・グローリーは世界屈指の大富豪としても知られていた。
このセルベールの孫娘エリザベスが、経営を任されているのがYoTubeなのだ。
そして、そのエリザベス・グローリー……またの名をエリザヴェータ・スラーヴァの正体こそ、ユリナである。
歌のライブ配信を行いながら、一切がアーカイブに残らない秘密はここにあった。
グローリー社のノウハウを全て投入し、編集し操作しているのだ。
ユリナは人々に疑念を与えることを避けるべく、ペットの動物が自然に会話をしているように見える吹き替え動画を予め、YoTubeに放流していた。
意図的と悟られないように配慮し、遅効性の毒が沁み込むが如く、ジワジワと人々の記憶に刻まれていく。
その策が功を奏したのか、案の定ネットでもCGに過ぎないという声が圧倒的に高かった。
イザークがいる以上、不測の事態が起きたとしてもイリスに危機が及ぶことはないと判断したユリナは、イリスをキャンプ系ではなく心霊スポットに蔓延る怪異を退治させる方針に切り替えた。
何よりもイリスには妖の太郎として、ハンターの技を培っていた経験もある。
コミュニケーション能力にやや難があるのは本人も認めるところであり、それを短期間で矯正するのは無理だとユリナも考えざるを得なかった。
そうである以上、イリスの特技を最大限に生かしたライブ配信を行うのが彼女にとっても最良のチョイスであるとユリナは最終的な判断を下した。
この読みはまたも大きな当たりを引き寄せ、見た目が愛らしく言葉遣いのたどたどしい少女となぜか偉そうな態度の喋る犬というコンビが大人気となった。
人気コンビYoTuberとなったイリスとイザークは、新たな心霊スポットでライブを行うべく雷邸を離れている。
ダリア、ドロシア、リ・トスらのユリナが、プロデュースしたYoTuberも新居に活動の拠点を移していた。
ユリナが手配した新居は配信環境が整い、怪異の為に用意された怪異の為の集合住宅だった。
「だから、今日は久しぶりに二人きりよ」
「そうだね」
使用人代わりとして、邸内を動いている亡霊を除けば、麗央とユリナしかいない。
ここ最近は見られない光景でもあった。
二人きりになろうとすると邪魔が入り、ユリナの機嫌が悪くなるという悪循環に陥りかけていただけに麗央もほっと胸を撫で下ろす。
ゆっくりとした午後の一時だった。
二人でお茶を飲みながら、ただ静かに時を過ごす。
麗央は年齢の割にこういった時間の過ごし方を好んでいた。
ただ、ユリナと同じ時を過ごしているだけでも彼にとっては十分なのだ。
「ねぇ、レオ」
「うん? どうしたんだい?」
「ちょっと立ってみて」
「急にまた……いいけどさ」
ところがユリナが何かを思い付いたらしく、目を輝かせながら妙なことを言い始めた。
ここで下手に反論をしても口で勝てる気がしないどころか、やり込められて「え? そういうのが負け惜しみぃ~」と勝利宣言をされるのが関の山なのだ。
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