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第40話 備忘録CaseIV・リトスデビュー
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かくして、リ・トスと命名された七人組YoTuberユニットが華々しく、デビューした。
予め、行われた宣伝が期待以上の成果を出し、ユリナの睨んだ通り、大勢の視聴者がそのデビューを見守ることになった。
『歌姫』リリーがプロデュースしたYoTuberは既にダリア、ドロシアの二人。
リリーファミリーというにはいささか数が少なかったところ、一気に七人の増員である。
それも男性が七人という点が反響を呼んでいた。
元より、リリーには孤高の『歌姫』というイメージが強い。
アーカイブを一切残さず、ただ歌を謳うのみを貫く、彼女に並々ならぬプロ根性を感じる視聴者が多かった。
さらにダリア、ドロシアが男性の庇護欲を誘う黒髪の美少女だったことも大きい。
リリーはもしかしたら、男が嫌いな百合属性ではないかと少々、下世話な詮索までがされた。
実際、ユリナの周囲は幼少期より女性ばかりだったので強ち、間違っている指摘ではなかったのだが……。
ここにきて、ファミリーに男性七人が加えられる。
ファンの間で憶測が憶測を呼ぶ相乗効果が生み出された。
それすらもユリナの考えた策であるとも知らず。
そして、メインボーカルであるアダマースをセンターに左右を各メンバーが固め、リ・トスの初配信がライブで始まったのである。
「こんなに集まってくれて、サンキューな」
鷹揚に右手を上げ、少し気怠そうな雰囲気を醸し出すアダマースに黄色い声ならぬ、黄色いコメントだった。
アダマースの愛称であるアディの名が怒涛のように書き込まれていき、まだ一言しか喋っていないのに投げ銭が飛び交うあたり、一種の狂気すら感じるほどだ。
「俺達のデビュー曲。聞いてくれ!」
それまで七人の顔をアップで映していたカメラが一斉に引くと観客を煽るように真っ赤な幕が張られ、赤いライトで照らし出された舞台と七人の全身が映り込む。
情熱的で熱情を感じさせる激しい調子の前奏がスタートするとボーカルのアダマースは一歩、下がった。
代わりに六人のメンバーが前に出て、それぞれが得意なステップを見せつける。
この時点でそれぞれのメンバーにいわゆる固定ファンが付いており、コメント欄は追うのが困難になるペースで回転していった。
全てはユリナの目論見通り、事が進んだのである。
液晶ディスプレイの大画面にはリ・トスのライブ配信が映っていた。
凄まじい勢いで流れていくコメント欄と飛び交う投げ銭は、ダリアやドロシアのデビュー時よりも勢いに乗っているようにさえ見えた。
「ねぇ、レオ。だから、私の言った通りになったでしょ?」
「そうだね」
ユリナは画面に集中しているのか、俯き加減で表情が読み取りにくい。
しかし、口許が僅かに弧を描こうとしているのを辛うじて、堪えているのだと気付かない麗央ではなかった。
妻がやや面倒な性質の持ち主であることを十二分なほどに理解している麗央である。
(まあ、いいか。リーナが満足しているみたいだし……)
元々、男性の苦手なユリナが我慢をして、手掛けたデビューであることを知らない麗央ではない。
こういう時、どうすればいいのかも分かっていた。
彼女は誰よりも麗央に誉めてもらいたいのだ。
「頑張ったね」
そう言うと麗央はユリナの頭を優しく撫でる。
まるで大切な物を扱うような仕草だが、あながち間違ってはいない。
彼にとって、彼女が掛け替えのない存在であるのは事実なのだから。
撫でられているユリナはうっとりとした表情でされるがままになっている。
こうして、二人の平凡でありながらも決して平凡ではない日常が過ぎていく……。
予め、行われた宣伝が期待以上の成果を出し、ユリナの睨んだ通り、大勢の視聴者がそのデビューを見守ることになった。
『歌姫』リリーがプロデュースしたYoTuberは既にダリア、ドロシアの二人。
リリーファミリーというにはいささか数が少なかったところ、一気に七人の増員である。
それも男性が七人という点が反響を呼んでいた。
元より、リリーには孤高の『歌姫』というイメージが強い。
アーカイブを一切残さず、ただ歌を謳うのみを貫く、彼女に並々ならぬプロ根性を感じる視聴者が多かった。
さらにダリア、ドロシアが男性の庇護欲を誘う黒髪の美少女だったことも大きい。
リリーはもしかしたら、男が嫌いな百合属性ではないかと少々、下世話な詮索までがされた。
実際、ユリナの周囲は幼少期より女性ばかりだったので強ち、間違っている指摘ではなかったのだが……。
ここにきて、ファミリーに男性七人が加えられる。
ファンの間で憶測が憶測を呼ぶ相乗効果が生み出された。
それすらもユリナの考えた策であるとも知らず。
そして、メインボーカルであるアダマースをセンターに左右を各メンバーが固め、リ・トスの初配信がライブで始まったのである。
「こんなに集まってくれて、サンキューな」
鷹揚に右手を上げ、少し気怠そうな雰囲気を醸し出すアダマースに黄色い声ならぬ、黄色いコメントだった。
アダマースの愛称であるアディの名が怒涛のように書き込まれていき、まだ一言しか喋っていないのに投げ銭が飛び交うあたり、一種の狂気すら感じるほどだ。
「俺達のデビュー曲。聞いてくれ!」
それまで七人の顔をアップで映していたカメラが一斉に引くと観客を煽るように真っ赤な幕が張られ、赤いライトで照らし出された舞台と七人の全身が映り込む。
情熱的で熱情を感じさせる激しい調子の前奏がスタートするとボーカルのアダマースは一歩、下がった。
代わりに六人のメンバーが前に出て、それぞれが得意なステップを見せつける。
この時点でそれぞれのメンバーにいわゆる固定ファンが付いており、コメント欄は追うのが困難になるペースで回転していった。
全てはユリナの目論見通り、事が進んだのである。
液晶ディスプレイの大画面にはリ・トスのライブ配信が映っていた。
凄まじい勢いで流れていくコメント欄と飛び交う投げ銭は、ダリアやドロシアのデビュー時よりも勢いに乗っているようにさえ見えた。
「ねぇ、レオ。だから、私の言った通りになったでしょ?」
「そうだね」
ユリナは画面に集中しているのか、俯き加減で表情が読み取りにくい。
しかし、口許が僅かに弧を描こうとしているのを辛うじて、堪えているのだと気付かない麗央ではなかった。
妻がやや面倒な性質の持ち主であることを十二分なほどに理解している麗央である。
(まあ、いいか。リーナが満足しているみたいだし……)
元々、男性の苦手なユリナが我慢をして、手掛けたデビューであることを知らない麗央ではない。
こういう時、どうすればいいのかも分かっていた。
彼女は誰よりも麗央に誉めてもらいたいのだ。
「頑張ったね」
そう言うと麗央はユリナの頭を優しく撫でる。
まるで大切な物を扱うような仕草だが、あながち間違ってはいない。
彼にとって、彼女が掛け替えのない存在であるのは事実なのだから。
撫でられているユリナはうっとりとした表情でされるがままになっている。
こうして、二人の平凡でありながらも決して平凡ではない日常が過ぎていく……。
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