27 / 159
第27話 備忘録CaseIII・ドロシア②
しおりを挟む
ダリアは自身が菊から、ダリアへと生まれ変わるまでにどれだけ、いじられたのかを知っている。
ユリナからの過酷な要求に応えようと努力し、自らを磨いたお陰で今の自分があることも理解していた。
露もまた、自分と同じ轍を踏むであろうことも……。
だが、ダリアは我が身可愛さゆえに目を瞑ることにしたのである。
同世代の同僚と言うべき露が茨の道を歩むことを分かっていながら、敢えて口を挟まずに噤むことを決めた。
下手にユリナの怒りを買いたくない。
どちらかといえば、内気なダリアにとって、そんな危険をわざわざ冒すような冒険はしたくないのだ。
四百年の時を経てきた自分達など、軽く息を吹きかけるだけで消し飛ばせる程度に過ぎない。
ユリナはそういう次元の違う存在なのだと肌で感じていたダリアにとって、当然の決断とも言えた。
「まず、キャラとしての設定が大事だわ」
腰に手を当て、威圧的にドロシアを人差し指で指すユリナの顔には普段、見慣れない物体の姿があった。
眼鏡である。
細いフレームのラウンドタイプの眼鏡は見た目を重視したのか、お洒落に見えるだけでなく掛けているだけで知的に見せる効果がある。
人に物を教える際は眼鏡を掛けた方がいいと雑誌の知識を鵜吞みにした結果でもあった。
しかし、、ユリナにも弱点がある。
麗央に誉められるとあまりにも素直過ぎると言わざるを得ない反応を見せてしまう点だった。
「リーナは眼鏡も似合うね」と言われた途端、ユリナの頬は見る間に朱で染まった。
急な誉め言葉に滅法弱いのだ。
ただし、麗央からの誉め言葉に限るという条件付きだが……。
「せ、設定ですか?」
「そう。今、こうして、私が眼鏡をかけているのもキャラとしての設定なのよ」
「は、はぁ。そうなのですね」
肉感的な体つきに少しばかり、きつめに見える顔立ちの美女の姿になったドロシアだが、まだ新しい体と現代という時代に慣れていない。
「そのギャップも売りになるわね!」とユリナが一人頷いているが、当然、ドロシアには何のことだか、理解出来ないのである。
「それで……ジャーン! ドロシアにはこれを着てもらいまぁ~す♪」
ユリナがどこからか、取り出した布面積が明らかに小さい革製の服を披露するとドロシアの顔色が明らかに悪くなった。
麗央もさすがに「それを彼女に着せるんだ」とどこか、呆れている。
ドロシアの実り切った豊かな双丘が零れ落ちそうなギリギリのデザインの胸元。
両腰のサイド部分もカットされており、肌が露わになっている。
それどころか、下半身はムダ毛処理を怠ると明らかにYoTubeから、アカウントを停止されそうだった。
攻めに攻めたハイレグ水着の形状なのだ。
申し訳程度なミニスカートを模したシルクレースの飾りが付いているが、ほぼ意味を成していない。
「たった一人の愛する人を思い続けて、胸を焦がすお姉さん系のサキュバスよ。絶対、バズるキャラでしょ?」
ついには両手を腰に当て、得意満面の顔をしているユリナを前に麗央とドロシアは思うのだった。
「悪魔だ。悪魔がいる」と……。
ユリナからの過酷な要求に応えようと努力し、自らを磨いたお陰で今の自分があることも理解していた。
露もまた、自分と同じ轍を踏むであろうことも……。
だが、ダリアは我が身可愛さゆえに目を瞑ることにしたのである。
同世代の同僚と言うべき露が茨の道を歩むことを分かっていながら、敢えて口を挟まずに噤むことを決めた。
下手にユリナの怒りを買いたくない。
どちらかといえば、内気なダリアにとって、そんな危険をわざわざ冒すような冒険はしたくないのだ。
四百年の時を経てきた自分達など、軽く息を吹きかけるだけで消し飛ばせる程度に過ぎない。
ユリナはそういう次元の違う存在なのだと肌で感じていたダリアにとって、当然の決断とも言えた。
「まず、キャラとしての設定が大事だわ」
腰に手を当て、威圧的にドロシアを人差し指で指すユリナの顔には普段、見慣れない物体の姿があった。
眼鏡である。
細いフレームのラウンドタイプの眼鏡は見た目を重視したのか、お洒落に見えるだけでなく掛けているだけで知的に見せる効果がある。
人に物を教える際は眼鏡を掛けた方がいいと雑誌の知識を鵜吞みにした結果でもあった。
しかし、、ユリナにも弱点がある。
麗央に誉められるとあまりにも素直過ぎると言わざるを得ない反応を見せてしまう点だった。
「リーナは眼鏡も似合うね」と言われた途端、ユリナの頬は見る間に朱で染まった。
急な誉め言葉に滅法弱いのだ。
ただし、麗央からの誉め言葉に限るという条件付きだが……。
「せ、設定ですか?」
「そう。今、こうして、私が眼鏡をかけているのもキャラとしての設定なのよ」
「は、はぁ。そうなのですね」
肉感的な体つきに少しばかり、きつめに見える顔立ちの美女の姿になったドロシアだが、まだ新しい体と現代という時代に慣れていない。
「そのギャップも売りになるわね!」とユリナが一人頷いているが、当然、ドロシアには何のことだか、理解出来ないのである。
「それで……ジャーン! ドロシアにはこれを着てもらいまぁ~す♪」
ユリナがどこからか、取り出した布面積が明らかに小さい革製の服を披露するとドロシアの顔色が明らかに悪くなった。
麗央もさすがに「それを彼女に着せるんだ」とどこか、呆れている。
ドロシアの実り切った豊かな双丘が零れ落ちそうなギリギリのデザインの胸元。
両腰のサイド部分もカットされており、肌が露わになっている。
それどころか、下半身はムダ毛処理を怠ると明らかにYoTubeから、アカウントを停止されそうだった。
攻めに攻めたハイレグ水着の形状なのだ。
申し訳程度なミニスカートを模したシルクレースの飾りが付いているが、ほぼ意味を成していない。
「たった一人の愛する人を思い続けて、胸を焦がすお姉さん系のサキュバスよ。絶対、バズるキャラでしょ?」
ついには両手を腰に当て、得意満面の顔をしているユリナを前に麗央とドロシアは思うのだった。
「悪魔だ。悪魔がいる」と……。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる