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第25話 備忘録CaseIII・類は友を呼ぶ
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「実は……」
露は涙ながらに身の上話を始めた。
実のところ、ユリナは露が何の目的で訪れたのかとあらかた察していた。
ダリアという成功例がある以上、避けられない事態であることを理解していたからに他ならない。
ただ、彼女は麗央の顔に締まりのないことが気に入らない。
その一点に尽きるのだ。
ユリナの勘は鋭い。
しかし、そんな勘だけでは解決できないこともある。
麗央がまさか、自分の着物姿を妄想して、締まりのない顔になっているとは考えていないのだ。
彼女がどうにか、感情を抑えられているのは露という部外者がいるからだった。
それでも根は真面目で困っている者を見過ごせない性分でもある。
ユリナは麗央に何かしらの不満をぶつけたい衝動に駆られながらも思いに蓋をして、露の話に耳を傾けることに決めた。
だが、彼女の身の上にいつしか、他人事とは思えない共感を抱いていることに気が付いた。
(分かる! 分かるんだけど……どういうこと?)
ユリナには自分と露が一人の男を骨まで愛する同じようなタイプだという自覚は全くといって、なかった。
共感している理由に合点はいかない。
だが、手を貸すのはやぶさかではない。
ユリナはそう考え始めていた。
露もまた、菊と同じく、数百年の時を過ごした年季の入っている亡霊である。
菊と露の違いを分かりやすく、説明するとすれば、一言で済むだろう。
動であるか、静であるか。
ここに尽きる。
菊は特定の標的を持たず、不特定の標的を定置で待つ。
露は定置せず、特定の標的のみに仕掛ける。
無自覚に生前の性質が影響を及ぼしていたのかもしれない。
ポジティブなのか、ネガティブなのか。
その違いは非常に大きかったが、人間は時の流れとともに生態が変化していく生き物である。
両者ともに時代の変化に追いつくことが出来ず、衰退していき、そのままでは消滅の時を待つだけでもあった。
菊の方が先に動きを見せだけでなく、あまりにも意外な転身を果たし、成功した。
ここにきて露もようやく、頑なだった心を動かしたのである。
「うん。だいたいは分かったわ」
切々と言う表現がこれほどに似合う人はそういないとユリナは感じていた。
たった一人の男を愛し続け、愛された。
この世で添い遂げることは叶わず、せめてあの世で共にいようと誓った。
それなのに男は露を残して、成仏してしまった。
一人残された露は男への思いを胸に細々と生きてきたが、それも限界を迎えようとしている。
「私に任せて。いい考えがあるの」
ユリナは思わず女でも惚れそうな花の綻ぶような顔をしている。
ただし、その目はまたしても決して、笑っていない。
心が凍てつくような視線をそれとなく、向けられた露は何ともぞっとしない気持ちになった。
(本当に大丈夫なのでしょうか……)
今更のように雷邸に来たことを後悔し始める露だった。
露は涙ながらに身の上話を始めた。
実のところ、ユリナは露が何の目的で訪れたのかとあらかた察していた。
ダリアという成功例がある以上、避けられない事態であることを理解していたからに他ならない。
ただ、彼女は麗央の顔に締まりのないことが気に入らない。
その一点に尽きるのだ。
ユリナの勘は鋭い。
しかし、そんな勘だけでは解決できないこともある。
麗央がまさか、自分の着物姿を妄想して、締まりのない顔になっているとは考えていないのだ。
彼女がどうにか、感情を抑えられているのは露という部外者がいるからだった。
それでも根は真面目で困っている者を見過ごせない性分でもある。
ユリナは麗央に何かしらの不満をぶつけたい衝動に駆られながらも思いに蓋をして、露の話に耳を傾けることに決めた。
だが、彼女の身の上にいつしか、他人事とは思えない共感を抱いていることに気が付いた。
(分かる! 分かるんだけど……どういうこと?)
ユリナには自分と露が一人の男を骨まで愛する同じようなタイプだという自覚は全くといって、なかった。
共感している理由に合点はいかない。
だが、手を貸すのはやぶさかではない。
ユリナはそう考え始めていた。
露もまた、菊と同じく、数百年の時を過ごした年季の入っている亡霊である。
菊と露の違いを分かりやすく、説明するとすれば、一言で済むだろう。
動であるか、静であるか。
ここに尽きる。
菊は特定の標的を持たず、不特定の標的を定置で待つ。
露は定置せず、特定の標的のみに仕掛ける。
無自覚に生前の性質が影響を及ぼしていたのかもしれない。
ポジティブなのか、ネガティブなのか。
その違いは非常に大きかったが、人間は時の流れとともに生態が変化していく生き物である。
両者ともに時代の変化に追いつくことが出来ず、衰退していき、そのままでは消滅の時を待つだけでもあった。
菊の方が先に動きを見せだけでなく、あまりにも意外な転身を果たし、成功した。
ここにきて露もようやく、頑なだった心を動かしたのである。
「うん。だいたいは分かったわ」
切々と言う表現がこれほどに似合う人はそういないとユリナは感じていた。
たった一人の男を愛し続け、愛された。
この世で添い遂げることは叶わず、せめてあの世で共にいようと誓った。
それなのに男は露を残して、成仏してしまった。
一人残された露は男への思いを胸に細々と生きてきたが、それも限界を迎えようとしている。
「私に任せて。いい考えがあるの」
ユリナは思わず女でも惚れそうな花の綻ぶような顔をしている。
ただし、その目はまたしても決して、笑っていない。
心が凍てつくような視線をそれとなく、向けられた露は何ともぞっとしない気持ちになった。
(本当に大丈夫なのでしょうか……)
今更のように雷邸に来たことを後悔し始める露だった。
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