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第11話 備忘録CaseI・デビュー
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真っ白なミニスカ着物を完璧に着こなし、裾の短さを恥じらいつつも見えそうで見えないギリギリのラインを攻める。
新たな美少女YoTuberの誕生にネット界隈は盛り上がっていた。
彼女の名はダリア。
彗星の如く現れた新進気鋭のヨーチューバーである。
日本国内だけではなく、世界規模で影響力を及ぼしつつある『歌姫』がプロデュースし、デビューしたのも大きな話題を呼んでいた。
「ね? だから、言ったでしょ」
「そうだね」
ほくそ笑むユリナを見るとダリアのYoTubeデビューを我が事のように喜んでいるように見える。
少なくとも表向きはそのようにしか、見えない。
麗央はこう考えていた。
ユリナが掛け値なしに愛情を注ぎ、優しく接するのは自分に対してだけだと本能的に感じていた。
それは自惚れではなく、確信である。
時に揶揄うような仕草をしながらも余りある愛を感じずにはいられなかったからだ。
しかし、それは誰にでも適用されるという訳ではない。
ユリナは己を頼ってきた者や所縁のある者に対して、決して、見捨てずに寄り添う優しさを持ち合わせている。
それは間違いない。
ただし、そこに何らかの思惑が絡んでいることが非常に多いのだ。
少なくとも掛け値なしで誰彼をも救おうとしない。
それなのになぜ、ダリアにここまで肩入れをするのだろうか。
そんな疑問が麗央の胸を過ぎるが、彼は元々、深く考えるのが苦手な質だ。
それ以上、考えたりはしなかった。
結果だけを見れば、ダリアのYoTubeデビューは大成功だった。
ユリナが彼女のデビューに先駆け、プロモーション動画を作り、SNSで大々的に宣伝したことも影響し、初配信のライブには予想した以上のリスナーが集まったのだ。
光宗博士が造った器は最高のモノである。
黒髪清楚女子高生として、世の男性が好みそうな要素をてんこ盛りした器なのだから。
配信開始前に集まった待機人数は何と五百人以上。
デビュー前であり、有名でもないヨーチューバーとしては異例の数だと言える。
その数の多さに配信主であるダリアが、慄いてしまった。
デビューに至るまで様々なエキスパートの亡霊の薫陶を受け、鍛えられたとはいえ付け焼刃である。
元々の彼女の弱気な性質がここにきて、露呈したのだ。
「み、みなしゃ~ん。よ、よろしくお願いし、しまひゅ」
地獄の特訓を潜り抜けてきたダリアは事もあろうに挨拶で噛んでしまった。
致命的なミスである。
(や、やってしまいました……)
出だしから、失敗したことで恥ずかしさのあまり、真っ赤な茹蛸のようになったダリアにリスナーがすぐに反応した。
豪雨の如く、打ち寄せるコメントの多さにあれほど、練習を積み打ち合わせをした内容がダリアの頭から、全て飛んだ。
(ま、真っ白……ど、どうしよう)
焦ったダリアはさらなる失態を犯す。
緊張のあまり、かちこちに固まった手足を無理に動かそうとして、盛大に転んでしまったのだ。
短い裾のミニスカ着物を着ていたことが仇となり、大勢のリスナーの前で下着を晒す羽目になったダリアは、号泣しながら配信を切ったのである。
意図せぬアクシデントが発生したこのライブは大当たりになった。
切り抜きで動画はさらに拡散していき、ダリアの名は一躍、知れ渡ったのだ。
「九百九十六、九百九十七、九百九十八、九百九十九……あっ~、一人足りない! あと一人で収益化なんです。お願いしまぁす☆」
あざとさを学び、早口で数えるようになったダリアのプロモーション動画を見て、麗央は首を捻った。
「リーナ。これも全部、君の計画通りだったのかい?」
「も、もっちろん。私が考えたんだもの。当然の結果だわ」
「じゃあ、俺のチャンネルもプロデュースしてくれないかな」
「それはダメ」
「そんなことをしたら、私だけのレオじゃなくなるわ」と言えないユリナは言葉に詰まり、麗央をただ上目遣いに見つめることしか出来ない。
「わ、分かったよ。ずるいよな。そんな顔されたら、何も言えなくなるじゃないか」
「どうして?」
本当に理由が分からないと言わんばかりに小首を傾げたユリナを前に麗央は、ふいとそっぽを向いて誤魔化した。
「かわいいいからだよ」
「え? 何? 聞こえないけど?」
「か」
「か?」
「か、|かーわいふぁい《Car Wi-Fi)をどうしようかな」
「全く、もう……ねぇ、レオくん。素直に認めましょう? 私が世界で一番かわいくて、最強だって」
「い、いや。ま、負けてないから。うん。負けてないんだ」
麗央は妙なところで頑固だった。
口を尖らせ、それでもまだ、認めようとはしない。
認めているが認めると負けた気がしてならないと考えてしまうのだ。
素直で真っ直ぐな麗央のそんな強情な一面も含めて、ユリナは全てを愛おしく思っている。
「はい。負っけ惜しみぃ~☆」
「いや、負けてないし!」
「またまた! 負け惜しみぃ!」
二人ともお互いに素直な気持ちをぶつけず、じゃれ合うだけで終わってしまう。
子供っぽさが抜けない関係のまま、二人は足踏みをしている。
一歩踏み出すと今の関係が壊れることを恐れているかのように……。
新たな美少女YoTuberの誕生にネット界隈は盛り上がっていた。
彼女の名はダリア。
彗星の如く現れた新進気鋭のヨーチューバーである。
日本国内だけではなく、世界規模で影響力を及ぼしつつある『歌姫』がプロデュースし、デビューしたのも大きな話題を呼んでいた。
「ね? だから、言ったでしょ」
「そうだね」
ほくそ笑むユリナを見るとダリアのYoTubeデビューを我が事のように喜んでいるように見える。
少なくとも表向きはそのようにしか、見えない。
麗央はこう考えていた。
ユリナが掛け値なしに愛情を注ぎ、優しく接するのは自分に対してだけだと本能的に感じていた。
それは自惚れではなく、確信である。
時に揶揄うような仕草をしながらも余りある愛を感じずにはいられなかったからだ。
しかし、それは誰にでも適用されるという訳ではない。
ユリナは己を頼ってきた者や所縁のある者に対して、決して、見捨てずに寄り添う優しさを持ち合わせている。
それは間違いない。
ただし、そこに何らかの思惑が絡んでいることが非常に多いのだ。
少なくとも掛け値なしで誰彼をも救おうとしない。
それなのになぜ、ダリアにここまで肩入れをするのだろうか。
そんな疑問が麗央の胸を過ぎるが、彼は元々、深く考えるのが苦手な質だ。
それ以上、考えたりはしなかった。
結果だけを見れば、ダリアのYoTubeデビューは大成功だった。
ユリナが彼女のデビューに先駆け、プロモーション動画を作り、SNSで大々的に宣伝したことも影響し、初配信のライブには予想した以上のリスナーが集まったのだ。
光宗博士が造った器は最高のモノである。
黒髪清楚女子高生として、世の男性が好みそうな要素をてんこ盛りした器なのだから。
配信開始前に集まった待機人数は何と五百人以上。
デビュー前であり、有名でもないヨーチューバーとしては異例の数だと言える。
その数の多さに配信主であるダリアが、慄いてしまった。
デビューに至るまで様々なエキスパートの亡霊の薫陶を受け、鍛えられたとはいえ付け焼刃である。
元々の彼女の弱気な性質がここにきて、露呈したのだ。
「み、みなしゃ~ん。よ、よろしくお願いし、しまひゅ」
地獄の特訓を潜り抜けてきたダリアは事もあろうに挨拶で噛んでしまった。
致命的なミスである。
(や、やってしまいました……)
出だしから、失敗したことで恥ずかしさのあまり、真っ赤な茹蛸のようになったダリアにリスナーがすぐに反応した。
豪雨の如く、打ち寄せるコメントの多さにあれほど、練習を積み打ち合わせをした内容がダリアの頭から、全て飛んだ。
(ま、真っ白……ど、どうしよう)
焦ったダリアはさらなる失態を犯す。
緊張のあまり、かちこちに固まった手足を無理に動かそうとして、盛大に転んでしまったのだ。
短い裾のミニスカ着物を着ていたことが仇となり、大勢のリスナーの前で下着を晒す羽目になったダリアは、号泣しながら配信を切ったのである。
意図せぬアクシデントが発生したこのライブは大当たりになった。
切り抜きで動画はさらに拡散していき、ダリアの名は一躍、知れ渡ったのだ。
「九百九十六、九百九十七、九百九十八、九百九十九……あっ~、一人足りない! あと一人で収益化なんです。お願いしまぁす☆」
あざとさを学び、早口で数えるようになったダリアのプロモーション動画を見て、麗央は首を捻った。
「リーナ。これも全部、君の計画通りだったのかい?」
「も、もっちろん。私が考えたんだもの。当然の結果だわ」
「じゃあ、俺のチャンネルもプロデュースしてくれないかな」
「それはダメ」
「そんなことをしたら、私だけのレオじゃなくなるわ」と言えないユリナは言葉に詰まり、麗央をただ上目遣いに見つめることしか出来ない。
「わ、分かったよ。ずるいよな。そんな顔されたら、何も言えなくなるじゃないか」
「どうして?」
本当に理由が分からないと言わんばかりに小首を傾げたユリナを前に麗央は、ふいとそっぽを向いて誤魔化した。
「かわいいいからだよ」
「え? 何? 聞こえないけど?」
「か」
「か?」
「か、|かーわいふぁい《Car Wi-Fi)をどうしようかな」
「全く、もう……ねぇ、レオくん。素直に認めましょう? 私が世界で一番かわいくて、最強だって」
「い、いや。ま、負けてないから。うん。負けてないんだ」
麗央は妙なところで頑固だった。
口を尖らせ、それでもまだ、認めようとはしない。
認めているが認めると負けた気がしてならないと考えてしまうのだ。
素直で真っ直ぐな麗央のそんな強情な一面も含めて、ユリナは全てを愛おしく思っている。
「はい。負っけ惜しみぃ~☆」
「いや、負けてないし!」
「またまた! 負け惜しみぃ!」
二人ともお互いに素直な気持ちをぶつけず、じゃれ合うだけで終わってしまう。
子供っぽさが抜けない関係のまま、二人は足踏みをしている。
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