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第10話 備忘録CaseI・エヴォリューション
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ユリナによる菊から、ダリアへの生まれ変わり計画は革新的を通り越し、斬新すぎるものだった。
井戸を拠り所とする。
これ自体が誤りであると一刀両断した。
自然に含まれるマナはいずれ枯渇していく。
これは避けようのない事実だった。
増えすぎた人類の存在はマナの消費に拍車をかけ、いつ失われてもおかしくなかったのである。
「だから、考えを変えるべきだわ。たくさんあるところから、いただけばいいの」
「な、なるほど」
またも自信たっぷりな様子のユリナにいつしか、ダリアも感化されていた。
この人についていけば、世界は変わる。
自分も変わることが出来るという漠然とした期待と安心感が心に生まれていたのだ。
「私に任せて。あなたを人気ヨーチューバーにしてみせるわ」
「え? は、はい?」
「そうと決まれば、用意しないといけないわ。いい?」
聞き慣れない単語の羅列に目を白黒させるダリアを他所に話を進めるユリナが、指を鳴らすと応じるように宙に火の玉がいくつも生じた。
ダリアも長きに渡って、亡霊生活を続けていた身である。
火の玉は見慣れたものだったから、恐ろしいと感じるはずはなかった。
しかし、思わず「ひっ」と声を上げそうになり、慌てて口を押える。
青白い炎を上げる火の玉の中心に髑髏が浮かんでいた。
仄暗い物言わぬ深淵の闇を映した眼窩はこの世への恨みを訴えているようにさえ、見えた。
「この子達が全部、やってくれるから安心して」
「あ、あんしん!?」
ゆらゆらと揺らめく炎が返事をしているように見えたが、ダリアにはとても安心出来るものではない。
何をどうしようというのか。
ダリアは急に押し寄せてきた不安に無い胸を押しつぶされそうになっていた。
「大丈夫だよ。リーナがバックアップしてくれるなら、大丈夫さ」
そう言いながら、サムズアップしてくる能天気な麗央に「このすっとこどっこいめ!」と思いながらも決して、口には出せないダリア。
火の玉によって、連行されるように化粧室へと向かう羽目になった彼女の様子はさながら、出荷されていく家畜のようだった。
「さすが、一流のプロは違うわ」
化粧室から戻ってきたダリアを見て、ユリナは我が事のように喜んで見せた。
子供でもなく、大人でもない多感な年頃の少女のあどけなさを残しながらも魅力的に見せるメイクアップは完璧だった。
ナチュラルメイクをベースに垂れ目をさらに強調するかのような目許のメイクは、一朝一夕の見真似で出来る技ではなかった。
「じ、自分でも信じられないのでございます」
「あっ。う~ん。それも直した方がいいわね」
「そうだね」
うんうんとシンクロしたかのように同じ動きをする若夫婦を見て、ダリアは己の運命を悟ったのである。
諦めよ、されば道は開かれんと……。
「ノンノン。チガイマース」
「そ、そうでございますか」
「それもノン。もっとアザトーク」
「あざとーす? ノンノン」
チッチッチッと人差し指を左右に振る気障な男性の身体は半透明だ。
その隣で腕を組んでいる気難しい顔をした女性もまた、半透明。
かくして、ダリアはかつて、生きている時は一流カウンセラーやボイストレーナーだった者から、短時間でみっちりと詰め込まれることになった。
飴と鞭の使い分けもなったもので過酷なスパルタでありながらもダリアへの負荷を出来るだけ、緩やかにしていた。
そうとはいえども、僅か三日間のうちに現代の基礎知識を皮切りに様々な知恵と知識を詰め込まれる方の身にとっては溜まったものではない。
しかし、人とは成長する生き物だ。
慣れとは怖い。
あれほど、弱気でおとなしかったダリアが見る間に自信を付けていき、生き生きとしていった。
期限の三日が過ぎる頃には完全に出来上がった現代的な少女が誕生していたのである。
井戸を拠り所とする。
これ自体が誤りであると一刀両断した。
自然に含まれるマナはいずれ枯渇していく。
これは避けようのない事実だった。
増えすぎた人類の存在はマナの消費に拍車をかけ、いつ失われてもおかしくなかったのである。
「だから、考えを変えるべきだわ。たくさんあるところから、いただけばいいの」
「な、なるほど」
またも自信たっぷりな様子のユリナにいつしか、ダリアも感化されていた。
この人についていけば、世界は変わる。
自分も変わることが出来るという漠然とした期待と安心感が心に生まれていたのだ。
「私に任せて。あなたを人気ヨーチューバーにしてみせるわ」
「え? は、はい?」
「そうと決まれば、用意しないといけないわ。いい?」
聞き慣れない単語の羅列に目を白黒させるダリアを他所に話を進めるユリナが、指を鳴らすと応じるように宙に火の玉がいくつも生じた。
ダリアも長きに渡って、亡霊生活を続けていた身である。
火の玉は見慣れたものだったから、恐ろしいと感じるはずはなかった。
しかし、思わず「ひっ」と声を上げそうになり、慌てて口を押える。
青白い炎を上げる火の玉の中心に髑髏が浮かんでいた。
仄暗い物言わぬ深淵の闇を映した眼窩はこの世への恨みを訴えているようにさえ、見えた。
「この子達が全部、やってくれるから安心して」
「あ、あんしん!?」
ゆらゆらと揺らめく炎が返事をしているように見えたが、ダリアにはとても安心出来るものではない。
何をどうしようというのか。
ダリアは急に押し寄せてきた不安に無い胸を押しつぶされそうになっていた。
「大丈夫だよ。リーナがバックアップしてくれるなら、大丈夫さ」
そう言いながら、サムズアップしてくる能天気な麗央に「このすっとこどっこいめ!」と思いながらも決して、口には出せないダリア。
火の玉によって、連行されるように化粧室へと向かう羽目になった彼女の様子はさながら、出荷されていく家畜のようだった。
「さすが、一流のプロは違うわ」
化粧室から戻ってきたダリアを見て、ユリナは我が事のように喜んで見せた。
子供でもなく、大人でもない多感な年頃の少女のあどけなさを残しながらも魅力的に見せるメイクアップは完璧だった。
ナチュラルメイクをベースに垂れ目をさらに強調するかのような目許のメイクは、一朝一夕の見真似で出来る技ではなかった。
「じ、自分でも信じられないのでございます」
「あっ。う~ん。それも直した方がいいわね」
「そうだね」
うんうんとシンクロしたかのように同じ動きをする若夫婦を見て、ダリアは己の運命を悟ったのである。
諦めよ、されば道は開かれんと……。
「ノンノン。チガイマース」
「そ、そうでございますか」
「それもノン。もっとアザトーク」
「あざとーす? ノンノン」
チッチッチッと人差し指を左右に振る気障な男性の身体は半透明だ。
その隣で腕を組んでいる気難しい顔をした女性もまた、半透明。
かくして、ダリアはかつて、生きている時は一流カウンセラーやボイストレーナーだった者から、短時間でみっちりと詰め込まれることになった。
飴と鞭の使い分けもなったもので過酷なスパルタでありながらもダリアへの負荷を出来るだけ、緩やかにしていた。
そうとはいえども、僅か三日間のうちに現代の基礎知識を皮切りに様々な知恵と知識を詰め込まれる方の身にとっては溜まったものではない。
しかし、人とは成長する生き物だ。
慣れとは怖い。
あれほど、弱気でおとなしかったダリアが見る間に自信を付けていき、生き生きとしていった。
期限の三日が過ぎる頃には完全に出来上がった現代的な少女が誕生していたのである。
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