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第4話 病みの深い歌姫
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「ゆっくり休むんだよ」
「うん。分かっているわ。休めば、いいのでしょ。休むわ。おやすみなさい、レオ」
「おやすみ。リーナ」
麗央は黒を基調としたゴシック・ドレスを着たユリナを着替えさせることなく、そのままベッドに寝かせると彼女の額に軽く、キスを落とすと寝室を出て行った。
薄目を開けて、様子を窺っていたユリナは僅かに口角を上げ、悪戯っ子のような笑みを浮かべるとたわわに実った双丘の谷間から、スマートフォンを取り出す。
「レオは甘いのよね。チェックしないのが悪いのよ」
あどけない少女のような外見とは裏腹に彼女の双丘は凶悪なまでに育っていた。
その谷間にスカーレットレッドで塗られた愛用のスマートフォンを隠していたのだ。
麗央とユリナは子供の頃から、常に一緒だった。
四歳年上なのが影響し、お姉さん風を吹かせたいユリナとの間のぎこちない夫婦の真似事はその頃から、ずっと続いている。
互いを大切に思い、愛しているのは疑いようもない事実だったが、二人の間に肉体的な繋がりは未だにないままだ。
求めあうような激しい、大人の口付けを交わすことはあってもそれ以上に関係が進まない理由は二人の性知識が壊滅的なほどに死んでいるからだっだ。
愛し合っている二人が心から願えば、赤ちゃんはキャベツ畑からやってくる。
本気でそう信じているのが麗央とユリナである。
だから、必要以上のスキンシップを取ることはなく、ましてや胸の谷間のチェックなど、するはずがなかったのだ。
ユリナはYoTubeでリリーと名乗り、チャンネル登録者数が百万をゆうに超える人気YoTuberである。
週末。
それも土曜日の午前零時から、歌のライブ配信をという限定された活動しか行っていないにも関わらず、その人気は凄まじく、半ば神格化されているほどだった。
そして、雷家の家計もユリナが配信から得たいわゆる投げ銭によるもので成り立っていた。
屋敷から、ほぼ出ることがない籠の鳥のような状態にあるユリナだったが、十分過ぎるほどに稼いでいたのだ。
麗央も実はヨーチューバーである。
週末の夜にしか配信をしない妻とは全く、逆のスタイルである。
彼のライブ配信は平日の日中に行われるのだ。
しかし、チャンネル登録者は両手の指でも余っている。
理由はあまりにもニッチ過ぎるがゆえに埋もれていたのだ。
ユリナは身バレを防ぐ為、決して顔を出すことなく活動していたので麗央も同じように顔を隠そうと考えた。
その手段が鉄製のバケツを頭に被ることだった。
「ねぇ、レオ。それだと前が見えないでしょ?」
「大丈夫。問題ないよ。こうすれば、いいんだ」
鉄のバケツに人差し指で軽々と穴を開ける夫の馬鹿力に呆れつつも「それを披露したら、ウケると思うけど?」とアドバイスするユリナを他所に麗央は我が道を往く。
バケツ頭で淡々と居合切りを披露する。
礼に始まり、礼に終わるが一言も発しない。
バケツ頭が淡々と竹やネギを寸断するだけである。
面白い要素は何もないのでバズりようもなかった。
ただ、不思議なことが一つだけあった。
ライブ配信にいつも同じリスナーがいるのだ。
そのリスナーが熱心にコメントを書き込んでいた。
「今日もレオを応援しなきゃ♪」
照明の落とされた薄暗い寝室でスマートフォンの光に照らされたユリナはうっとりとしており、目の焦点も合っていない。
(バケツで顔が見えなくても今日のレオもかっこいいわ。好きっ。食べてしまいたいくらいに大好き。世界にあなたと私だけだったら、よかったのに……。ふふふふふっ。あははははっ)
静かな室内に彼女がスマートフォンを操作する音だけが不気味に響いていた。
「うん。分かっているわ。休めば、いいのでしょ。休むわ。おやすみなさい、レオ」
「おやすみ。リーナ」
麗央は黒を基調としたゴシック・ドレスを着たユリナを着替えさせることなく、そのままベッドに寝かせると彼女の額に軽く、キスを落とすと寝室を出て行った。
薄目を開けて、様子を窺っていたユリナは僅かに口角を上げ、悪戯っ子のような笑みを浮かべるとたわわに実った双丘の谷間から、スマートフォンを取り出す。
「レオは甘いのよね。チェックしないのが悪いのよ」
あどけない少女のような外見とは裏腹に彼女の双丘は凶悪なまでに育っていた。
その谷間にスカーレットレッドで塗られた愛用のスマートフォンを隠していたのだ。
麗央とユリナは子供の頃から、常に一緒だった。
四歳年上なのが影響し、お姉さん風を吹かせたいユリナとの間のぎこちない夫婦の真似事はその頃から、ずっと続いている。
互いを大切に思い、愛しているのは疑いようもない事実だったが、二人の間に肉体的な繋がりは未だにないままだ。
求めあうような激しい、大人の口付けを交わすことはあってもそれ以上に関係が進まない理由は二人の性知識が壊滅的なほどに死んでいるからだっだ。
愛し合っている二人が心から願えば、赤ちゃんはキャベツ畑からやってくる。
本気でそう信じているのが麗央とユリナである。
だから、必要以上のスキンシップを取ることはなく、ましてや胸の谷間のチェックなど、するはずがなかったのだ。
ユリナはYoTubeでリリーと名乗り、チャンネル登録者数が百万をゆうに超える人気YoTuberである。
週末。
それも土曜日の午前零時から、歌のライブ配信をという限定された活動しか行っていないにも関わらず、その人気は凄まじく、半ば神格化されているほどだった。
そして、雷家の家計もユリナが配信から得たいわゆる投げ銭によるもので成り立っていた。
屋敷から、ほぼ出ることがない籠の鳥のような状態にあるユリナだったが、十分過ぎるほどに稼いでいたのだ。
麗央も実はヨーチューバーである。
週末の夜にしか配信をしない妻とは全く、逆のスタイルである。
彼のライブ配信は平日の日中に行われるのだ。
しかし、チャンネル登録者は両手の指でも余っている。
理由はあまりにもニッチ過ぎるがゆえに埋もれていたのだ。
ユリナは身バレを防ぐ為、決して顔を出すことなく活動していたので麗央も同じように顔を隠そうと考えた。
その手段が鉄製のバケツを頭に被ることだった。
「ねぇ、レオ。それだと前が見えないでしょ?」
「大丈夫。問題ないよ。こうすれば、いいんだ」
鉄のバケツに人差し指で軽々と穴を開ける夫の馬鹿力に呆れつつも「それを披露したら、ウケると思うけど?」とアドバイスするユリナを他所に麗央は我が道を往く。
バケツ頭で淡々と居合切りを披露する。
礼に始まり、礼に終わるが一言も発しない。
バケツ頭が淡々と竹やネギを寸断するだけである。
面白い要素は何もないのでバズりようもなかった。
ただ、不思議なことが一つだけあった。
ライブ配信にいつも同じリスナーがいるのだ。
そのリスナーが熱心にコメントを書き込んでいた。
「今日もレオを応援しなきゃ♪」
照明の落とされた薄暗い寝室でスマートフォンの光に照らされたユリナはうっとりとしており、目の焦点も合っていない。
(バケツで顔が見えなくても今日のレオもかっこいいわ。好きっ。食べてしまいたいくらいに大好き。世界にあなたと私だけだったら、よかったのに……。ふふふふふっ。あははははっ)
静かな室内に彼女がスマートフォンを操作する音だけが不気味に響いていた。
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