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第39話 烏令嬢と無垢の竜
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様子を見て、正解だと思った。
オートクレールの言うままにカトルを処断しなくて、本当に良かった。
カトルは確かに人として、色々と足りていない。
年齢は九歳だと言うけど、細くて小さいので見た目はもっと幼く見えてしまう。
たどたどしい言葉遣いのせいもあるのだろう。
それに他人との接し方もおかしい。
礼儀作法を知らないのは仕方ないかもしれない。
彼女にそういうことを教えてくれる環境にあったとはとても思えないからだ。
だが、彼女の場合、それだけで説明出来ないくらいに酷い。
見ず知らずのカミーユに食べ物をたかったのなんて、生易しかった。
カトルはこの屋敷でもとにかく、食べ物が欲しいとねだる。
あまりにも切迫した様子なのでついつい、絆されるようにもてなしてしまった。
激しく、後悔した。
我が家の一日分の食糧を食い尽くされてしまったのだ。
それでいて、本人に悪びれたところは一切ないし、態度もいいとは言えない。
これはいけないと思って、直そうとすると「カミーユ。あのこわいおねえちゃんがいじめる」とお兄ちゃんに泣きつく。
お兄ちゃんはお兄ちゃんで事情を理解していないのに「ロザリー。カトルをいじめるのはよくないことなんだ! なぜ、分からない」としか、言わない。
阿呆である。
さすが、ボンクラ王子と言いたくなるけど、我慢する。
言ったところですぐにどうにか、なるのなら苦労しないのだ。
それでも暫くの間、一緒に過ごしていると分かってきた。
彼女は純粋無垢な存在なのだ、と……。
カトルに色はない。
白でもなければ、黒でもない。
強いて言うのなら、無色なのだろう。
だから、良くも悪くも何でも吸収する。
まるで乾いた大地が降った雨をすぐに吸ってしまうかのように……。
お兄ちゃんは悪影響とまでは言わないけど、カトルと近付けるとあまりよくないと思った。
あの人には過保護なところがある。
前世でおかしな言動が多かったのはそれだったのかと今更、理由が判明して、何とも居心地が悪い。
お兄ちゃんはあたしのことを大切にしようとした結果、アレだったのだ。
阿呆なのではないかと思った。
それなら、他に方法もあったし、あたしに一言でも伝えてくれれば、よかったのだ。
報告と連絡と相談は重要ではないの?
でも、残念なことにお兄ちゃんの頭の中の辞書にそういう単語は載っていなかったらしい。
前世でも今世でもそこは変わっていない。
不器用な優しさで許してはいけないと思うのだ。
そして、カトルにとって、何も教えずにただ甘やかすのは悪手でしかない。
彼女は純真で無垢な存在だからこそ、教え導かなければいけないのではないだろうか。
幸運なことにあたしにはベラがいる。
ベラがいるから、女の子として身に付けるべきことを教えやすい。
男どもは本当に駄目な大人のいい例でしかない。
事あるごとにさぼろうとするし、食べ物で釣って、カトルを甘やかすだけだから。
駄目な二人を時に蹴り飛ばし、修正しながらの教育は結構、骨が折れた……。
オートクレールの言うままにカトルを処断しなくて、本当に良かった。
カトルは確かに人として、色々と足りていない。
年齢は九歳だと言うけど、細くて小さいので見た目はもっと幼く見えてしまう。
たどたどしい言葉遣いのせいもあるのだろう。
それに他人との接し方もおかしい。
礼儀作法を知らないのは仕方ないかもしれない。
彼女にそういうことを教えてくれる環境にあったとはとても思えないからだ。
だが、彼女の場合、それだけで説明出来ないくらいに酷い。
見ず知らずのカミーユに食べ物をたかったのなんて、生易しかった。
カトルはこの屋敷でもとにかく、食べ物が欲しいとねだる。
あまりにも切迫した様子なのでついつい、絆されるようにもてなしてしまった。
激しく、後悔した。
我が家の一日分の食糧を食い尽くされてしまったのだ。
それでいて、本人に悪びれたところは一切ないし、態度もいいとは言えない。
これはいけないと思って、直そうとすると「カミーユ。あのこわいおねえちゃんがいじめる」とお兄ちゃんに泣きつく。
お兄ちゃんはお兄ちゃんで事情を理解していないのに「ロザリー。カトルをいじめるのはよくないことなんだ! なぜ、分からない」としか、言わない。
阿呆である。
さすが、ボンクラ王子と言いたくなるけど、我慢する。
言ったところですぐにどうにか、なるのなら苦労しないのだ。
それでも暫くの間、一緒に過ごしていると分かってきた。
彼女は純粋無垢な存在なのだ、と……。
カトルに色はない。
白でもなければ、黒でもない。
強いて言うのなら、無色なのだろう。
だから、良くも悪くも何でも吸収する。
まるで乾いた大地が降った雨をすぐに吸ってしまうかのように……。
お兄ちゃんは悪影響とまでは言わないけど、カトルと近付けるとあまりよくないと思った。
あの人には過保護なところがある。
前世でおかしな言動が多かったのはそれだったのかと今更、理由が判明して、何とも居心地が悪い。
お兄ちゃんはあたしのことを大切にしようとした結果、アレだったのだ。
阿呆なのではないかと思った。
それなら、他に方法もあったし、あたしに一言でも伝えてくれれば、よかったのだ。
報告と連絡と相談は重要ではないの?
でも、残念なことにお兄ちゃんの頭の中の辞書にそういう単語は載っていなかったらしい。
前世でも今世でもそこは変わっていない。
不器用な優しさで許してはいけないと思うのだ。
そして、カトルにとって、何も教えずにただ甘やかすのは悪手でしかない。
彼女は純真で無垢な存在だからこそ、教え導かなければいけないのではないだろうか。
幸運なことにあたしにはベラがいる。
ベラがいるから、女の子として身に付けるべきことを教えやすい。
男どもは本当に駄目な大人のいい例でしかない。
事あるごとにさぼろうとするし、食べ物で釣って、カトルを甘やかすだけだから。
駄目な二人を時に蹴り飛ばし、修正しながらの教育は結構、骨が折れた……。
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