33 / 46
第31話 烏令嬢、因縁の地へ
しおりを挟む
悩んだけども、ルテティアのバール邸はアロイス殿下に貸すことにした。
住居は人が住まなくなると途端に傷むと聞いたからだ。
管理も兼ねて誰かに委ねるのが一番だとは思っていた。
どうせ任せるのなら、気心が知れたとまではいかなくても知り合いの方がまし。
アロイス殿下のいいところは友人がいないところだ。
魔法の探求をしていれば、それで満足な人である。
家を荒らされる心配はそれほど高くないだろうと踏んでのことなのだけど。
フラヴィさんがいれば、最悪の事態は免れると信じている。
信じる者は救われる。
……とは思わない。
そんなので救われているのなら、あたしが前世であんな死に方をしてないと思うのだ。
これは希望。
そうであって欲しいと願うだけのもの。
荷造りというほどに特に用意する物はなく、ちょっとした旅をする程度の荷物しかなかった。
ジェシーとベラもあたしと同じくらいの軽い手荷物で済んでいる。
「お兄ちゃんはまた、それを持っていくのね?」
「ああ。これが無いと寝られないんだ」
お兄ちゃんも荷物自体はあたし達と同じで少ない。
後生大事に持っている枕を除けば!
愛用の枕が無いと寝られないとギルドの依頼で旅をしていても持ち歩くお兄ちゃんの繊細さは、どうにかならないものだろうか。
令嬢として生きた前世のあたしよりもナイーブでメンタルが弱い気がしてならない。
そのナイーブなところを少しばかり、お財布の方に向けてくれないものかと思うのだけど。
枕に頬ずりをして、まだ夢の世界に半分、足を踏み入れたままじゃないの?
「はいはい。枕が一つ増えたくらいでは問題ないから、さっさと乗ってくださいね」
まだ、夢現でふらふらしているお兄ちゃんのお尻を蹴飛ばして、馬車に放り込み、出発することにした。
ルアンの町への定期馬車は就航していないし、乗合馬車もない。
だから、馬車は自前で用意した。
豪華である必要はないのでそれなりに見栄えがして、雨露が凌げれば十分なのだ。
一頭立てで考えたら、ほぼ荷馬車のような物を勧められたが、問題はないと判断した。
トラディシオンとして、行動している時、荷馬車での移動なんてざらにあった。
これくらいで音を上げているようでは冒険者稼業など出来やしない。
お兄ちゃんも枕があれば、どこでも寝られるのだから案外、肝が据わっているのだ。
ルアンまでの旅程は多く見積もっても二日程度。
無理をすれば、一日でも行ける距離だが馬に無理をさせたくない。
それに夕方、目的地に到着するというのはあまり、よろしくないと判断した。
何より、ルアンの町は十五年前に起きたガルグイユの襲撃で甚大な被害を受けて、離れる人が多かったと聞いている。
町と言っても住んでいる人がいるのかが分からない。
過疎で寂れたゴーストタウンのような状況なら、まだいいと思う。
一番、最悪な想定をするとならず者が、根城にしていることだろうか。
負ける気はしない。
オートクレールとデュランダルがあって、ジェシーも実力はそこそこに高いのだ。
ベラも調理器具や掃除用具を使って、身を護る技術に長けている。
ちょっと山賊をかじった程度のならず者に後れを取ることはないだろう。
だからといって、わざわざ危険にさらされる行動を取る必要はないので旅程を二日にしたのだ。
住居は人が住まなくなると途端に傷むと聞いたからだ。
管理も兼ねて誰かに委ねるのが一番だとは思っていた。
どうせ任せるのなら、気心が知れたとまではいかなくても知り合いの方がまし。
アロイス殿下のいいところは友人がいないところだ。
魔法の探求をしていれば、それで満足な人である。
家を荒らされる心配はそれほど高くないだろうと踏んでのことなのだけど。
フラヴィさんがいれば、最悪の事態は免れると信じている。
信じる者は救われる。
……とは思わない。
そんなので救われているのなら、あたしが前世であんな死に方をしてないと思うのだ。
これは希望。
そうであって欲しいと願うだけのもの。
荷造りというほどに特に用意する物はなく、ちょっとした旅をする程度の荷物しかなかった。
ジェシーとベラもあたしと同じくらいの軽い手荷物で済んでいる。
「お兄ちゃんはまた、それを持っていくのね?」
「ああ。これが無いと寝られないんだ」
お兄ちゃんも荷物自体はあたし達と同じで少ない。
後生大事に持っている枕を除けば!
愛用の枕が無いと寝られないとギルドの依頼で旅をしていても持ち歩くお兄ちゃんの繊細さは、どうにかならないものだろうか。
令嬢として生きた前世のあたしよりもナイーブでメンタルが弱い気がしてならない。
そのナイーブなところを少しばかり、お財布の方に向けてくれないものかと思うのだけど。
枕に頬ずりをして、まだ夢の世界に半分、足を踏み入れたままじゃないの?
「はいはい。枕が一つ増えたくらいでは問題ないから、さっさと乗ってくださいね」
まだ、夢現でふらふらしているお兄ちゃんのお尻を蹴飛ばして、馬車に放り込み、出発することにした。
ルアンの町への定期馬車は就航していないし、乗合馬車もない。
だから、馬車は自前で用意した。
豪華である必要はないのでそれなりに見栄えがして、雨露が凌げれば十分なのだ。
一頭立てで考えたら、ほぼ荷馬車のような物を勧められたが、問題はないと判断した。
トラディシオンとして、行動している時、荷馬車での移動なんてざらにあった。
これくらいで音を上げているようでは冒険者稼業など出来やしない。
お兄ちゃんも枕があれば、どこでも寝られるのだから案外、肝が据わっているのだ。
ルアンまでの旅程は多く見積もっても二日程度。
無理をすれば、一日でも行ける距離だが馬に無理をさせたくない。
それに夕方、目的地に到着するというのはあまり、よろしくないと判断した。
何より、ルアンの町は十五年前に起きたガルグイユの襲撃で甚大な被害を受けて、離れる人が多かったと聞いている。
町と言っても住んでいる人がいるのかが分からない。
過疎で寂れたゴーストタウンのような状況なら、まだいいと思う。
一番、最悪な想定をするとならず者が、根城にしていることだろうか。
負ける気はしない。
オートクレールとデュランダルがあって、ジェシーも実力はそこそこに高いのだ。
ベラも調理器具や掃除用具を使って、身を護る技術に長けている。
ちょっと山賊をかじった程度のならず者に後れを取ることはないだろう。
だからといって、わざわざ危険にさらされる行動を取る必要はないので旅程を二日にしたのだ。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
待ち遠しかった卒業パーティー
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。
しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。
それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる