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第22話 烏令嬢の魔法剣

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 さすがゴブリン汚い。
 あたしの口上を無視して、いきなりファイアボールを撃ってくるなんて。
 中々、出来る真似ではない。
 人間だったら、外道の類しかやってこない手だと思う。
 さすが汚い。

 撃ってきたのはゴブリン・シャーマンだった。
 頭にサークレットのような飾り物をつけていて、人間の魔術師や神官が着ているローブに似た装束を着ているので実に分かりやすい。
 
 ゴブリンに礼節を求めてはいないけど、あたしには貴族の令嬢として生きた記憶があるせいか、妙なところに正々堂々や威風堂々といったことを求めてしまうのだ。
 あぁ、やだやだ。
 十二歳でこんなことを気にするなんて。

「まずは一つ」

 オートクレールを軽く、一閃してファイアボールを切り裂いた。
 そして、驚いているゴブリン・シャーマンその一の頭と胴体を永遠にさようならさせてあげるのだ。
 ね? 簡単でしょう?

 これにはちょっとしたコツがいる。
 単にオートクレールを振っただけなら、炎の玉は切り裂けない。
 オートクレールの切れ味は確かに凄まじい。
 だからって、力任せに振っても炎は揺らぐだけで切れない。

 でも、魔力をコントロールしながら、流すと話が変わる。
 黒き炎フラム・ノワールもそれを応用した技なのだ。
 オートクレールに炎の魔力を流すことで一種の魔法剣として、使う。
 実に簡単。
 今回は風の魔力を乗せることで斬ることに特化させただけ。

(お嬢ちゃんは色々な意味で歴代断トツに危ないな。間違いないぜえ)

 これは素直に褒め言葉と受け取っておこう。
 前にオートクレールから聞いたことがある。
 これまでの持ち主はお父様も含めて、頭までも鍛えすぎた人ばかりだったらしい。

 そのせいか、この剣に秘められた魔力に気が付かないまま、ただただ力任せに振る人ばかり。
 オートクレールとしてもフラストレーションが溜まっていたらしい。
 だけど、それは『抜けば、必ず敵を倒す』なんて物騒な噂を流した本人が悪い。
 そのせいで持ち主が頭まで鍛えた人ばかりになったのでは?

 そう冷静にツッコんだら、口笛(?)を吹きながら「抜けば、ぜつころ。かっこいいだろ?」などと喋る剣の相手は正直、疲れる。
 しかし、オートクレールとは切っても切れない縁が結ばれている以上、諦めが肝心……。

「面倒ね。ざーこ☆は一気にまとめて、片付けるわ」
(いいねえ。派手にいくとしようか)

 オートクレールもやる気に満ち溢れているし、お兄ちゃんとジェシーは早く、治療した方がいいと思う。
 相手をするのも面倒だし……。
 数がいるといっぺんにファイアボールのような攻撃魔法を唱えられたら、面倒を通り越して厄介だろう。

 そう考えていたら、一斉に唱え始めた。
 ゴブリンなのに結構、知恵が働くようで。
 でも、あたしの方が一足、早かったみたい。
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