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34 いざ、鎌倉デート①
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低血圧なのに朝っぱらから、叩き起こされて。
わたし、ちょっと不機嫌だわ!
……とはなっていないわたしである。
あの衝撃的なニュースですっかり目が覚めたのもあるし、ユーくんとの鎌倉ぶら散歩が楽しみなのでそれどころじゃないのだ。
待ち合わせ時間よりも早く行くのはいつも通り。
でも、出るが出るまで忙しなかった。
「髪型、これで変じゃない?」と何度も母に聞いたり、慣れないメイクをしたり。
これまでにやったことがないことをしていた。
思い返せば、異性と二人きりでどこかにお出かけするのは初めてだった。
あぁ、でも、ユーくんは年下だし。
それにカエルだ。
そんなに意識するのって、おかしいことなのかな?
まぁ、つらつらと考えているうちにいつの間に、待ち合わせ場所に着いていた。
うっかりで済ませてはいけないやらかしである。
家からZ駅まではゆったりと歩くとおよそ、一時間かかる。
交通機関を使えば、ニ十分もかからないけど、エルフになってから必要性を感じない。
「早く、着きすぎたかな」
『ミレイユ、スピード違反だよ』
わたしはエルフの中でもシルフィード。
風の加護を受ける一族らしい。
それがどう影響してくるのかと言えば、割とダイレクトアタックでやってくれるのだ。
運動神経が切れていて、足がめっちゃ遅いわたし。
それなのに気付いたら、車を追い越しちゃった!?
そう。
うっかりしていて、やらかしてしまう訳。
さらに物理的に引き起こされる二次災害を忘れてはならない。
つまり、スカートを穿いていたら、どうなるか。
そういうことなのよ。
「まぁ、大丈夫よ。今日はパンツルックだし」
『アバウトだよね』
「あぁ、でも、ほら。ユーくんはこの辺り、知らないんだから。もしかしたら、早く来ちゃうかもよ。それよりも早く! がモットーだからね」
『人、それをせっかちと言うのでは?』
「せっかちではないと思うんだけど」
正直、待ち合わせよりも早く着いてもうさちゃんなバルディエルとこうして、お喋りしていればいい。
あっという間に時間なんて過ぎていく。
天気は晴天なり。
雲もあまり出ていないきれいな青空だから、デート日和よね。
うん。
デートではないんだけどね。
「ごめん。待った?」
「ううん、全然」
ユーくんは予想通り、時間よりも早くやって来た。
十五分前に到着だ。
知らない場所とはいえ、かなり気を遣ったんだと思う。
だから、待っていないと答えるのが大人の対応ってものだよね。
本当は一時間近く待っているんだけど、好きで早く来ている。
だから、そこに問題はない。
「リクルートスーツぽいね?」
「え? あぁ、そう言われてみるとそうかも」
学校を出てから、ブラック企業勤め。
とんとお洒落に無頓着できてしまった。
パンツルックは何とリクルートスーツの典型である紺色のしかなかったんだから。
今度、ちゃんとしたの買おうかなぁ……。
「ユーくんのは……スゴイね。似合ってるよ」
「いやあ。それほどでもないでござるよ。にっしししし」
何で忍者ぽい喋り方したの? という疑問は吹き飛ばされている。
彼の服装があまりにも鮮烈だったから。
簡単に言うとオールホワイトコーデだ。
ユーくん自身が白いけろけろけろっなのに上下びしっとホワイトスーツ。
さらに靴までピカピカの白い革靴ときている。
お洒落はお洒落だけど、上級者すぎて、わたしには訳が分からない。
とりあえず、似合っているとお茶を濁して、逃げるしかなかったとしても誰がわたしを責めようか。
いいや、責めることはないよね?
だって、いつもの彼はプレイヤーとして、ガチな装備で固める。
身を守るきっちりとした金属製のアーマーを服の上に付けているから、当然お洒落とは無縁の存在。
歩く! 動く! 鋼鉄カエルなんだし。
「ここから、どうやって鎌倉に行くのかな。電車だよね?」
「それがね。バスなんだよね。ルートも限られちゃうの。理由知りたい?」
大きなお目目を輝かせているから、好奇心を刺激されたんだと思う。
二つ返事の代わりに何度も頷いていて、可愛い。
「ニュースでもやっていたと思うんだけど、知らない? Kトンネルがダンジョンになったのよ。ちょっと前の話なんだけど」
「ああ。あのトンネル! お化けが出るって幽霊トンネルだっけ?」
「よく知ってるわね。それで小坪ルートは通れなくなったし、JRも鎌倉・逗子間が通行禁止になっちゃったって訳。だから、バスでハイランドを抜ける山ルートか、ぐるっと回って、海岸線から行く海ルートしか、ないのよ」
「へえ。さすが地元の人だね」
「うん。まぁ、地元だし?」
ユーくんが言った幽霊トンネルは芸能人が怪奇現象に遭遇したと実しやかな怪談がテレビを賑わせて、有名になった。
いわゆる怪奇スポットであって、実際、火葬場があるし、何となく気味が悪いのは事実だ。
でも、子供の頃から、普通に通っていて、何かを見たことは一度もない。
確かに夜は照明が暗めなのもあって、不気味ではあるけど、そんなのはトンネルあるあるだと思う。
ところが世界が変わってしまったからか、トンネルの怪異が本物になっちゃったんだろう。
相当に強力な異界らしく、未解決のままなのだ。
わたし、ちょっと不機嫌だわ!
……とはなっていないわたしである。
あの衝撃的なニュースですっかり目が覚めたのもあるし、ユーくんとの鎌倉ぶら散歩が楽しみなのでそれどころじゃないのだ。
待ち合わせ時間よりも早く行くのはいつも通り。
でも、出るが出るまで忙しなかった。
「髪型、これで変じゃない?」と何度も母に聞いたり、慣れないメイクをしたり。
これまでにやったことがないことをしていた。
思い返せば、異性と二人きりでどこかにお出かけするのは初めてだった。
あぁ、でも、ユーくんは年下だし。
それにカエルだ。
そんなに意識するのって、おかしいことなのかな?
まぁ、つらつらと考えているうちにいつの間に、待ち合わせ場所に着いていた。
うっかりで済ませてはいけないやらかしである。
家からZ駅まではゆったりと歩くとおよそ、一時間かかる。
交通機関を使えば、ニ十分もかからないけど、エルフになってから必要性を感じない。
「早く、着きすぎたかな」
『ミレイユ、スピード違反だよ』
わたしはエルフの中でもシルフィード。
風の加護を受ける一族らしい。
それがどう影響してくるのかと言えば、割とダイレクトアタックでやってくれるのだ。
運動神経が切れていて、足がめっちゃ遅いわたし。
それなのに気付いたら、車を追い越しちゃった!?
そう。
うっかりしていて、やらかしてしまう訳。
さらに物理的に引き起こされる二次災害を忘れてはならない。
つまり、スカートを穿いていたら、どうなるか。
そういうことなのよ。
「まぁ、大丈夫よ。今日はパンツルックだし」
『アバウトだよね』
「あぁ、でも、ほら。ユーくんはこの辺り、知らないんだから。もしかしたら、早く来ちゃうかもよ。それよりも早く! がモットーだからね」
『人、それをせっかちと言うのでは?』
「せっかちではないと思うんだけど」
正直、待ち合わせよりも早く着いてもうさちゃんなバルディエルとこうして、お喋りしていればいい。
あっという間に時間なんて過ぎていく。
天気は晴天なり。
雲もあまり出ていないきれいな青空だから、デート日和よね。
うん。
デートではないんだけどね。
「ごめん。待った?」
「ううん、全然」
ユーくんは予想通り、時間よりも早くやって来た。
十五分前に到着だ。
知らない場所とはいえ、かなり気を遣ったんだと思う。
だから、待っていないと答えるのが大人の対応ってものだよね。
本当は一時間近く待っているんだけど、好きで早く来ている。
だから、そこに問題はない。
「リクルートスーツぽいね?」
「え? あぁ、そう言われてみるとそうかも」
学校を出てから、ブラック企業勤め。
とんとお洒落に無頓着できてしまった。
パンツルックは何とリクルートスーツの典型である紺色のしかなかったんだから。
今度、ちゃんとしたの買おうかなぁ……。
「ユーくんのは……スゴイね。似合ってるよ」
「いやあ。それほどでもないでござるよ。にっしししし」
何で忍者ぽい喋り方したの? という疑問は吹き飛ばされている。
彼の服装があまりにも鮮烈だったから。
簡単に言うとオールホワイトコーデだ。
ユーくん自身が白いけろけろけろっなのに上下びしっとホワイトスーツ。
さらに靴までピカピカの白い革靴ときている。
お洒落はお洒落だけど、上級者すぎて、わたしには訳が分からない。
とりあえず、似合っているとお茶を濁して、逃げるしかなかったとしても誰がわたしを責めようか。
いいや、責めることはないよね?
だって、いつもの彼はプレイヤーとして、ガチな装備で固める。
身を守るきっちりとした金属製のアーマーを服の上に付けているから、当然お洒落とは無縁の存在。
歩く! 動く! 鋼鉄カエルなんだし。
「ここから、どうやって鎌倉に行くのかな。電車だよね?」
「それがね。バスなんだよね。ルートも限られちゃうの。理由知りたい?」
大きなお目目を輝かせているから、好奇心を刺激されたんだと思う。
二つ返事の代わりに何度も頷いていて、可愛い。
「ニュースでもやっていたと思うんだけど、知らない? Kトンネルがダンジョンになったのよ。ちょっと前の話なんだけど」
「ああ。あのトンネル! お化けが出るって幽霊トンネルだっけ?」
「よく知ってるわね。それで小坪ルートは通れなくなったし、JRも鎌倉・逗子間が通行禁止になっちゃったって訳。だから、バスでハイランドを抜ける山ルートか、ぐるっと回って、海岸線から行く海ルートしか、ないのよ」
「へえ。さすが地元の人だね」
「うん。まぁ、地元だし?」
ユーくんが言った幽霊トンネルは芸能人が怪奇現象に遭遇したと実しやかな怪談がテレビを賑わせて、有名になった。
いわゆる怪奇スポットであって、実際、火葬場があるし、何となく気味が悪いのは事実だ。
でも、子供の頃から、普通に通っていて、何かを見たことは一度もない。
確かに夜は照明が暗めなのもあって、不気味ではあるけど、そんなのはトンネルあるあるだと思う。
ところが世界が変わってしまったからか、トンネルの怪異が本物になっちゃったんだろう。
相当に強力な異界らしく、未解決のままなのだ。
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