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「待ち合わせ時間より前に着かないと不安なのよね」
『ミレイユ、あなた、本当に面倒な女ですね』
「本当、口が悪いね。相変わらず」
ポイントをちょっと使った。
アップデートしてやった途端に口が悪くなった。
だけど、それも何だか、心地良い。
そうそう。
バルディエルは元々、こんな子だった。
それで見た目はチキン・ナゲットみたいな色をした垂れ耳ウサギのホーランドロップでいつも、わたしの肩に乗って。
的確なアドバイスと適度な嫌味を絶妙に出してくる子だったのだ。
残念ながら、現在のバルディエルはデバイスの中に閉じ込められた状態で、自由に動けない。
『リトリー・オンライン』ではサポートAIと呼ばれていた彼らは、現実では監視霊(グリゴリ)という人工的に作られた精霊と言うべき存在だそうだ。
正直、人工だろうが天然だろうが、精霊って何? としか思えないけど。
「もうちょっと……今日のレイドがうまくいったら、元に戻してあげるからね」
『問題が発生しました。もう一度お願いします』
「あ、うん。そうだね」
都合が悪くなるとAIみたいな言い方をして、逃げるのも確かにバルディエル。
相棒で間違いないのだ。
わたしの知っている世界が完全に変わってしまったんだと実感できる瞬間とも言える。
「ごめん。待った……あれ? 時間通りだよね?」
「うん? 五分前だから、時間通りよ。わたしが早く来すぎているだけだから、気にしないで」
「そうなんだ?」
「うん。そうよ」
まるでデート感覚で「待った」と声をかけてきたのは今日のレイドを一緒にやる相手であり、『リトリー・オンライン』でも仲良くしていたユーくんことユーリス・カエルだ。
見た目も互いに『リトリー・オンライン』の時と同じなので見間違いようがない。
彼は白いけろけろっとしたけろっなマスコットもどきみたいで相変わらず、可愛いようで何より。
「今日はスライム退治だよね?」
「そうね。スライム退治……だけど、気を付けないと危ないって話よ」
「へえ?」
『説明しましょうか?』
『説明しよう。よろしいかな?』
グリゴリが二人(?)して、始めようとしてくるので軽く、頭痛を覚える。
何なの?
グリゴリっていうのはどいつもこいつも同じような性格をしているとでも言うの……。
バルディエルだけでなく、ユーくんのグリゴリ・メルキセデクも同じ反応をしてくるとは思わなかった。
面倒なのでそのまま、説明はしてもらったけど!
「スライム、やばいわね」
「うん。やばいね」
結局、メルキセデクに押し切られる形で長々と講義のような講釈が始まって、ようやく終わった時に時計の針がかなり、進んでいる有様だった。
でも、無意味な時間だとは思わない。
結構、有意義な講釈だったと思う。
青くて、ぷるぷるしていて、「ぼくはわるくないスライムだよ」みたいなスライムは、どうやら実在しないらしい。
実際に存在しているスライムとも呼ばれる魔物は数種類いることが分かった。
そして、いずれも不定形の体が特徴だけど、迂闊に近寄ると危ないことも学んだ。
特に独特の鳴き声を上げる種はもっとも危険なので、それは関与することすら避けるべきと注意された。
「それじゃ、行こうか」
「うん。忘れ物はない?」
「ないと思う」
ユーくんはわたしと違って、運動神経がいい。
スポーツ万能でたいがいの動きはできる。
武術を習っていたから、腕っぷしも強い。
十歳年下とは思えない頼りがいのある子なのだ。
唯一の弱点はちょっと抜けているところ。
しっかりしているのかと思ったら、うっかり忘れたり、やらかすことがある。
まだ、十五歳の少年なんだから、それも可愛いで済まされるし、サポートしてあげればいいだけの話なのだ。
『ミレイユ、あなた、本当に面倒な女ですね』
「本当、口が悪いね。相変わらず」
ポイントをちょっと使った。
アップデートしてやった途端に口が悪くなった。
だけど、それも何だか、心地良い。
そうそう。
バルディエルは元々、こんな子だった。
それで見た目はチキン・ナゲットみたいな色をした垂れ耳ウサギのホーランドロップでいつも、わたしの肩に乗って。
的確なアドバイスと適度な嫌味を絶妙に出してくる子だったのだ。
残念ながら、現在のバルディエルはデバイスの中に閉じ込められた状態で、自由に動けない。
『リトリー・オンライン』ではサポートAIと呼ばれていた彼らは、現実では監視霊(グリゴリ)という人工的に作られた精霊と言うべき存在だそうだ。
正直、人工だろうが天然だろうが、精霊って何? としか思えないけど。
「もうちょっと……今日のレイドがうまくいったら、元に戻してあげるからね」
『問題が発生しました。もう一度お願いします』
「あ、うん。そうだね」
都合が悪くなるとAIみたいな言い方をして、逃げるのも確かにバルディエル。
相棒で間違いないのだ。
わたしの知っている世界が完全に変わってしまったんだと実感できる瞬間とも言える。
「ごめん。待った……あれ? 時間通りだよね?」
「うん? 五分前だから、時間通りよ。わたしが早く来すぎているだけだから、気にしないで」
「そうなんだ?」
「うん。そうよ」
まるでデート感覚で「待った」と声をかけてきたのは今日のレイドを一緒にやる相手であり、『リトリー・オンライン』でも仲良くしていたユーくんことユーリス・カエルだ。
見た目も互いに『リトリー・オンライン』の時と同じなので見間違いようがない。
彼は白いけろけろっとしたけろっなマスコットもどきみたいで相変わらず、可愛いようで何より。
「今日はスライム退治だよね?」
「そうね。スライム退治……だけど、気を付けないと危ないって話よ」
「へえ?」
『説明しましょうか?』
『説明しよう。よろしいかな?』
グリゴリが二人(?)して、始めようとしてくるので軽く、頭痛を覚える。
何なの?
グリゴリっていうのはどいつもこいつも同じような性格をしているとでも言うの……。
バルディエルだけでなく、ユーくんのグリゴリ・メルキセデクも同じ反応をしてくるとは思わなかった。
面倒なのでそのまま、説明はしてもらったけど!
「スライム、やばいわね」
「うん。やばいね」
結局、メルキセデクに押し切られる形で長々と講義のような講釈が始まって、ようやく終わった時に時計の針がかなり、進んでいる有様だった。
でも、無意味な時間だとは思わない。
結構、有意義な講釈だったと思う。
青くて、ぷるぷるしていて、「ぼくはわるくないスライムだよ」みたいなスライムは、どうやら実在しないらしい。
実際に存在しているスライムとも呼ばれる魔物は数種類いることが分かった。
そして、いずれも不定形の体が特徴だけど、迂闊に近寄ると危ないことも学んだ。
特に独特の鳴き声を上げる種はもっとも危険なので、それは関与することすら避けるべきと注意された。
「それじゃ、行こうか」
「うん。忘れ物はない?」
「ないと思う」
ユーくんはわたしと違って、運動神経がいい。
スポーツ万能でたいがいの動きはできる。
武術を習っていたから、腕っぷしも強い。
十歳年下とは思えない頼りがいのある子なのだ。
唯一の弱点はちょっと抜けているところ。
しっかりしているのかと思ったら、うっかり忘れたり、やらかすことがある。
まだ、十五歳の少年なんだから、それも可愛いで済まされるし、サポートしてあげればいいだけの話なのだ。
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