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16 変わる日常
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どれくらいの間、意識を失っていたのかは分からない。
なぜって?
気が付いたら、わたしは自分の部屋にいて。
そして、ベッドで横になっていた。
じゃあ、あれは全て、夢だったとか?
オーロラが見えたのも夢で太陽と月が分身していたのも夢だった?
まさかね。
寝ぼけ眼を擦りながら、部屋を出るといつものように母がりびんぐにいて……。
「あ……おはよう、ママ」
「おはよう」
「あ、あれ?」
「どうしたの?」
「ううん。何でもない」
おかしい。
だって、おかしいじゃない。
リビングに飾られていたのはリボンフラワーであって、作り物の花で……。
それなのにその全てが生きていて、母の髪が微かに緑がかって見える。
おかしい。
目を擦ってもそう見える。
そして、ふと気づいた。
窓に映った自分自身の違和感だ。
「え?」
わたしの髪と目の色がおかしい。
これじゃ、まるでミレイユじゃない。
そ、そ、そんな馬鹿な……。
『日本政府は環太平洋機構の方針に従い、世界覚醒者管理協会と世界資格者機構の受け入れを各国に先駆け……』
朝、いつも付けているテレビから流れてきたニュースが、さらにわたしを混乱させた。
は? え?
何の話?
どうなっているのよ、一体。
窓から、空を見上げるとそこには見慣れた太陽と……。
あれ、何?
見慣れない夜の闇のような色をした不気味なそれは太陽と同じ大きさに見えて。
それでいて、すぐ隣に当然のようにいるアレは一体、何なの。
でも、それは優しい隣人には見えない。
まるで命を狙う殺し屋みたいで……。
見ているだけで不安になる。
黒い太陽……。
不思議なのは驚くほど、世の中が静かだったことだ。
もっと騒然とするかと思っていたのにあっさりと変化を受け入れていく。
あまりにも自然で、さもこうなるのが世の摂理とでも言うかのように……。
「まさかね。そんな訳ないか」
『また、独り言ですか、ミレイユ。あなたは独り言が多すぎます』
かくいう、わたしも案外、この大きな変化をしれっと受け付けた一人なのかもしれない。
もっとも顔は変わっていない。
純日本人の割とどこにでもいる普通の顔立ちのままだ。
大きく、変わったのは髪と瞳の色だけ。
それよりも目に見える目の前の世界……現実が『リトリー・オンライン』と同じになった事実の方が余程、衝撃的な出来事だった。
エルフのミレイユとして活動していた実績がそのまま、現実にも適用されている。
そう言った方が分かりやすいだろう。
ミレイユで使っていた小型のクロスボウみたいな武器『アーバレスト』もこの手にある。
『リトリー・オンライン』でストレージと呼ばれていた一定量の物を放り込める亜空間の倉庫。
これが普通に現実でも使えるようになった。
便利だ。
だけど、原理が分からないのでやや気味が悪い……。
さらに『リトリー・オンライン』でプレイのサポートをしてくれるAIも健在だった。
『デバイス』と呼ばれるようになっていて、わたしのスマホに見た目が変わっちゃったけど。
それでも相棒だったバルディエルであるのは間違いない。
言葉遣いが杓子定規になったのは少しばかり、初期化されたからと意味深なことを言っていた。
『ポイントを消費することでボクの機能はアップデートされます』
「そういうシステムなんだ?」
『そういうことです』
あの日、地球人と呼ぶべき地球で生きている人々のほとんどが覚醒者(アウェイカー)と呼ばれる存在に進化? 成長?
何か、変わってしまったのは事実だ。
そのアウェイカーの中でも少数の人間が資格者(プレイヤー)に変化した。
変な例えになるけど、アウェイカーは視えるくらいの力。
プレイヤーは視えて、祓うことができる霊能者ってところらしい。
だから、その権利と義務について公的な機関が設置された訳で。
『リトリー・オンライン』で遊んでいたプレイヤーがプレイヤーに多く含まれているって、もっぱらの噂になっている。
わたしもその一人だった。
世界資格者機構はプレイヤーを六段階の等級に分類して、級に応じた恩恵を与えてくれるという寸法だ。
わたしはそのうちの下級ランク。
下から二つ目なので決して、高くない。
むしろ低い部類だと思う。
高ければ高いで恩恵も多いけど、その代わりに果たすべき義務も多大らしいから、特に不満はない。
『リトリー・オンライン』でやっていたように現実でもやればいいだけと考えれば、楽ではあるんだけど……。
VRではなく、現実だけにリアルすぎてやばい。
何がやばいって、もろに残酷な映像が目の前で描写される。
無修正のグロだから!
モザイクをかけてくれるのなら、問題ないんだけど、そんなことはできない。
狙撃するのが専門だったら、グロとは無縁?
そんなことないから、問題なんだよね。
わたしがエルフでしかもシルフィードだからなのか、厄介な能力が備わっているのだ。
それが鷹の目とでも言うような不思議な力。
遠距離の風景をまるで目の前であるかのように見ることができる。
カメラのズームアップみたいなことが出来るのよ。
便利だけど、この便利さがグロに繋がってしまう訳!
何しろ、獲物がバァーンとなる瞬間をもろに目撃しちゃうから……。
『ミレイユ。慣れが重要です』
「こういうのって、慣れるとかえってやばいんじゃないの?」
バルディエルは都合が悪くなると急にだんまりを決め込む。
時には『回線の調子が悪いようです』なんて、嘘までつく。
回線を使ってないのはバレバレだからね!
なぜって?
気が付いたら、わたしは自分の部屋にいて。
そして、ベッドで横になっていた。
じゃあ、あれは全て、夢だったとか?
オーロラが見えたのも夢で太陽と月が分身していたのも夢だった?
まさかね。
寝ぼけ眼を擦りながら、部屋を出るといつものように母がりびんぐにいて……。
「あ……おはよう、ママ」
「おはよう」
「あ、あれ?」
「どうしたの?」
「ううん。何でもない」
おかしい。
だって、おかしいじゃない。
リビングに飾られていたのはリボンフラワーであって、作り物の花で……。
それなのにその全てが生きていて、母の髪が微かに緑がかって見える。
おかしい。
目を擦ってもそう見える。
そして、ふと気づいた。
窓に映った自分自身の違和感だ。
「え?」
わたしの髪と目の色がおかしい。
これじゃ、まるでミレイユじゃない。
そ、そ、そんな馬鹿な……。
『日本政府は環太平洋機構の方針に従い、世界覚醒者管理協会と世界資格者機構の受け入れを各国に先駆け……』
朝、いつも付けているテレビから流れてきたニュースが、さらにわたしを混乱させた。
は? え?
何の話?
どうなっているのよ、一体。
窓から、空を見上げるとそこには見慣れた太陽と……。
あれ、何?
見慣れない夜の闇のような色をした不気味なそれは太陽と同じ大きさに見えて。
それでいて、すぐ隣に当然のようにいるアレは一体、何なの。
でも、それは優しい隣人には見えない。
まるで命を狙う殺し屋みたいで……。
見ているだけで不安になる。
黒い太陽……。
不思議なのは驚くほど、世の中が静かだったことだ。
もっと騒然とするかと思っていたのにあっさりと変化を受け入れていく。
あまりにも自然で、さもこうなるのが世の摂理とでも言うかのように……。
「まさかね。そんな訳ないか」
『また、独り言ですか、ミレイユ。あなたは独り言が多すぎます』
かくいう、わたしも案外、この大きな変化をしれっと受け付けた一人なのかもしれない。
もっとも顔は変わっていない。
純日本人の割とどこにでもいる普通の顔立ちのままだ。
大きく、変わったのは髪と瞳の色だけ。
それよりも目に見える目の前の世界……現実が『リトリー・オンライン』と同じになった事実の方が余程、衝撃的な出来事だった。
エルフのミレイユとして活動していた実績がそのまま、現実にも適用されている。
そう言った方が分かりやすいだろう。
ミレイユで使っていた小型のクロスボウみたいな武器『アーバレスト』もこの手にある。
『リトリー・オンライン』でストレージと呼ばれていた一定量の物を放り込める亜空間の倉庫。
これが普通に現実でも使えるようになった。
便利だ。
だけど、原理が分からないのでやや気味が悪い……。
さらに『リトリー・オンライン』でプレイのサポートをしてくれるAIも健在だった。
『デバイス』と呼ばれるようになっていて、わたしのスマホに見た目が変わっちゃったけど。
それでも相棒だったバルディエルであるのは間違いない。
言葉遣いが杓子定規になったのは少しばかり、初期化されたからと意味深なことを言っていた。
『ポイントを消費することでボクの機能はアップデートされます』
「そういうシステムなんだ?」
『そういうことです』
あの日、地球人と呼ぶべき地球で生きている人々のほとんどが覚醒者(アウェイカー)と呼ばれる存在に進化? 成長?
何か、変わってしまったのは事実だ。
そのアウェイカーの中でも少数の人間が資格者(プレイヤー)に変化した。
変な例えになるけど、アウェイカーは視えるくらいの力。
プレイヤーは視えて、祓うことができる霊能者ってところらしい。
だから、その権利と義務について公的な機関が設置された訳で。
『リトリー・オンライン』で遊んでいたプレイヤーがプレイヤーに多く含まれているって、もっぱらの噂になっている。
わたしもその一人だった。
世界資格者機構はプレイヤーを六段階の等級に分類して、級に応じた恩恵を与えてくれるという寸法だ。
わたしはそのうちの下級ランク。
下から二つ目なので決して、高くない。
むしろ低い部類だと思う。
高ければ高いで恩恵も多いけど、その代わりに果たすべき義務も多大らしいから、特に不満はない。
『リトリー・オンライン』でやっていたように現実でもやればいいだけと考えれば、楽ではあるんだけど……。
VRではなく、現実だけにリアルすぎてやばい。
何がやばいって、もろに残酷な映像が目の前で描写される。
無修正のグロだから!
モザイクをかけてくれるのなら、問題ないんだけど、そんなことはできない。
狙撃するのが専門だったら、グロとは無縁?
そんなことないから、問題なんだよね。
わたしがエルフでしかもシルフィードだからなのか、厄介な能力が備わっているのだ。
それが鷹の目とでも言うような不思議な力。
遠距離の風景をまるで目の前であるかのように見ることができる。
カメラのズームアップみたいなことが出来るのよ。
便利だけど、この便利さがグロに繋がってしまう訳!
何しろ、獲物がバァーンとなる瞬間をもろに目撃しちゃうから……。
『ミレイユ。慣れが重要です』
「こういうのって、慣れるとかえってやばいんじゃないの?」
バルディエルは都合が悪くなると急にだんまりを決め込む。
時には『回線の調子が悪いようです』なんて、嘘までつく。
回線を使ってないのはバレバレだからね!
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