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14 年下の彼?
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リトリー・オンラインにはプレイヤー専用のSNSコミュニティも充実している。
コミュニティがしっかりとしているのでプレイヤー間の交流も盛んで運営による公式のイベントだけでなく、コミュニティで有志の組んだコミュニティイベントなんてものまであるくらいだ。
そして、このコミュニティはゲーム内のことだけを話す場ではなかったりする。
同じような趣味や主義を持つ人が、そんな話題で盛り上がる。
そういうコミュニティの使い方もされていた。
あの頃、丁度、ハマっていたものがある。
それが当時、ブームになっていたアニメ。
アニメにはあまり興味がなかったこともあり、まともに見たことのないわたしがなぜ、よりにもよってロボットアニメを見るようになったのか、切っ掛けははっきりと覚えていない。
人間と遺伝子操作で生み出された人為的に進化した新人類が争う。
そこに愛憎のドラマと政治バランスや人種間の差別といった社会的な風刺までもが盛り込まれた中々、チャレンジングなアニメだ。
コミュニティに件のアニメの同好の士の集う場があった。
人気があったからだろうか。
それも一つじゃなくて。
いわゆる乱立している状態になっていて、一部からは迷惑な者が多いなんて言われようだった。
そのアニメをかなり気に入っていたこともあるし、一方的にレッテルを貼られる行為への反発もあって、わたしもいつしか参加するようになっていた。
もちろん、アニメのファンを擁護する立場として!
普段のわたし……現実のわたしは出来るだけ、大人しく目立たないように生きてきた。
その方が面倒事も少ないし、平和に過ごせると思ったから。
それを考えるとわたしが積極的な行動を取るなんて、天気が変わるような珍しい現象でもあった。
思った以上にのめり込んでいたからだと今、冷静になって考えると分かる。
リトリー・オンラインのプレイヤーとしてはほぼ無名だったけど、不思議なことに件のアニメ界隈ではそこそこ、名が知られるようになっていた。
いささか短慮だったとしか思えない。
正直、そのアニメのファン層は十代。
いわゆるティーンエージャーが大多数だった。
わたしはアラサーである。
ちょっとどころではなく、かなりきつい。
のめり込んでいるとそんなことすら、自覚のないままに突き進むから、怖いんだけどね。
そして、出会ったのが真っ白なカエルさんのアバターを使う彼。
コミュニティで不思議と意気投合した。
ずっと前からの知り合いのようで。
そんな嘘みたいでおとぎ話のような話が起きた。
ついには個人的なメッセージのやり取りまで交わすようになるとはその時、思ってもいなかった訳だけど。
彼はユーリス・カエルという名のプレイヤーだった。
年下も年下。
何と十歳も年下の学生さん。
当時の彼は進路を不安に思う中学生の男の子だった。
「変わった名前だよね?」
「ああ、これ? 間違えちゃったんだ」
「そうなの?」
「ユリウス・カエサルってやりたかったんだけどさ。焦ってやったら、これになっちゃったんだ」
そして、「にしししし」と豪快で愉快な笑い声を上げる。
親戚にも年下の男の子はいなかったので実に新鮮な体験だった。
「そういうミレイユさんのはいい名前だね」
「そう? ありがと」
「何か、意味あるの?」
「あるって、言ったら聞きたい?」
「うん」
「これは……フランスのミストラルって詩人さんの書いた『プロヴァンスの少女:ミレイユ』から取ったのよ。薄幸のヒロインって感じでしょ?」
「何か……スゴイね!」
「あっ……うん。嘘だけどね」
「嘘なんだ!?」
『プロヴァンスの少女:ミレイユ』からインスピレーションを受けて、自分の名前と掛けて名付けたのはハッタリであって。
そんな大層な名付け方はしてない。
でも、全く関係ないという訳でもなく……。
カミーユ・クローデルを知っていて、カミーユ?
それなら、ミレーユでミレイユでいいじゃない?
そんなところであって……。
あまりに考えがなさすぎて、ちょっと恥ずかしいので件のハッタリを考えたのだ。
わたしの種族はエルフのシルフィードでこれはそんなに珍しい種族ではない。
割と見かけるは言い過ぎだけど、プレイヤーにもNPCと呼ばれる運営の用意したキャラクターにもそれとなくいる。
でも、ユーくんと呼ぶことになったユーリス・カエルの種族はかなりのレア。
蛙人族(グルヌイユ)と呼ばれている二足歩行のカエルみたいな見た目の獣人族でコミュニティでも超レア扱いされている種族だ。
たいていのグルヌイユはリアルでぬめっとした如何にもカエルって、見た目をしているらしい。
でも、ユーくんはそれこそ、けろけろのけろっであって。
ちょっとしたマスコットキャラクターみたいに可愛いのだ。
小柄なのもあって、余計に可愛く見えるんだと思う。
ただし、可愛いとか、小っちゃい♪ なんていうのは禁句。
何しろ、難しい年頃の思春期なんだし。
家庭の事情なども打ち明けられて、互いに色々と話すようになってから、急速に仲が良くなった。
もっともそこに恋愛感情なんて、あるはずもなくて。
純粋に友人だと思っていたんだけど……。
コミュニティがしっかりとしているのでプレイヤー間の交流も盛んで運営による公式のイベントだけでなく、コミュニティで有志の組んだコミュニティイベントなんてものまであるくらいだ。
そして、このコミュニティはゲーム内のことだけを話す場ではなかったりする。
同じような趣味や主義を持つ人が、そんな話題で盛り上がる。
そういうコミュニティの使い方もされていた。
あの頃、丁度、ハマっていたものがある。
それが当時、ブームになっていたアニメ。
アニメにはあまり興味がなかったこともあり、まともに見たことのないわたしがなぜ、よりにもよってロボットアニメを見るようになったのか、切っ掛けははっきりと覚えていない。
人間と遺伝子操作で生み出された人為的に進化した新人類が争う。
そこに愛憎のドラマと政治バランスや人種間の差別といった社会的な風刺までもが盛り込まれた中々、チャレンジングなアニメだ。
コミュニティに件のアニメの同好の士の集う場があった。
人気があったからだろうか。
それも一つじゃなくて。
いわゆる乱立している状態になっていて、一部からは迷惑な者が多いなんて言われようだった。
そのアニメをかなり気に入っていたこともあるし、一方的にレッテルを貼られる行為への反発もあって、わたしもいつしか参加するようになっていた。
もちろん、アニメのファンを擁護する立場として!
普段のわたし……現実のわたしは出来るだけ、大人しく目立たないように生きてきた。
その方が面倒事も少ないし、平和に過ごせると思ったから。
それを考えるとわたしが積極的な行動を取るなんて、天気が変わるような珍しい現象でもあった。
思った以上にのめり込んでいたからだと今、冷静になって考えると分かる。
リトリー・オンラインのプレイヤーとしてはほぼ無名だったけど、不思議なことに件のアニメ界隈ではそこそこ、名が知られるようになっていた。
いささか短慮だったとしか思えない。
正直、そのアニメのファン層は十代。
いわゆるティーンエージャーが大多数だった。
わたしはアラサーである。
ちょっとどころではなく、かなりきつい。
のめり込んでいるとそんなことすら、自覚のないままに突き進むから、怖いんだけどね。
そして、出会ったのが真っ白なカエルさんのアバターを使う彼。
コミュニティで不思議と意気投合した。
ずっと前からの知り合いのようで。
そんな嘘みたいでおとぎ話のような話が起きた。
ついには個人的なメッセージのやり取りまで交わすようになるとはその時、思ってもいなかった訳だけど。
彼はユーリス・カエルという名のプレイヤーだった。
年下も年下。
何と十歳も年下の学生さん。
当時の彼は進路を不安に思う中学生の男の子だった。
「変わった名前だよね?」
「ああ、これ? 間違えちゃったんだ」
「そうなの?」
「ユリウス・カエサルってやりたかったんだけどさ。焦ってやったら、これになっちゃったんだ」
そして、「にしししし」と豪快で愉快な笑い声を上げる。
親戚にも年下の男の子はいなかったので実に新鮮な体験だった。
「そういうミレイユさんのはいい名前だね」
「そう? ありがと」
「何か、意味あるの?」
「あるって、言ったら聞きたい?」
「うん」
「これは……フランスのミストラルって詩人さんの書いた『プロヴァンスの少女:ミレイユ』から取ったのよ。薄幸のヒロインって感じでしょ?」
「何か……スゴイね!」
「あっ……うん。嘘だけどね」
「嘘なんだ!?」
『プロヴァンスの少女:ミレイユ』からインスピレーションを受けて、自分の名前と掛けて名付けたのはハッタリであって。
そんな大層な名付け方はしてない。
でも、全く関係ないという訳でもなく……。
カミーユ・クローデルを知っていて、カミーユ?
それなら、ミレーユでミレイユでいいじゃない?
そんなところであって……。
あまりに考えがなさすぎて、ちょっと恥ずかしいので件のハッタリを考えたのだ。
わたしの種族はエルフのシルフィードでこれはそんなに珍しい種族ではない。
割と見かけるは言い過ぎだけど、プレイヤーにもNPCと呼ばれる運営の用意したキャラクターにもそれとなくいる。
でも、ユーくんと呼ぶことになったユーリス・カエルの種族はかなりのレア。
蛙人族(グルヌイユ)と呼ばれている二足歩行のカエルみたいな見た目の獣人族でコミュニティでも超レア扱いされている種族だ。
たいていのグルヌイユはリアルでぬめっとした如何にもカエルって、見た目をしているらしい。
でも、ユーくんはそれこそ、けろけろのけろっであって。
ちょっとしたマスコットキャラクターみたいに可愛いのだ。
小柄なのもあって、余計に可愛く見えるんだと思う。
ただし、可愛いとか、小っちゃい♪ なんていうのは禁句。
何しろ、難しい年頃の思春期なんだし。
家庭の事情なども打ち明けられて、互いに色々と話すようになってから、急速に仲が良くなった。
もっともそこに恋愛感情なんて、あるはずもなくて。
純粋に友人だと思っていたんだけど……。
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