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13 幸福はカエルの顔をしていない
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リトリー・オンラインで冒険する世界オブリビオンは、剣と魔法とモンスターが存在するファンタジーだ。
いわゆる幻想世界なんだけど、奇妙なこともある。
世界地図がわたし達の住んでいる現実世界とよく似ているのだ。
似ているというよりもそっくり、そのままと言ってもいい。
まず、わたしが本拠地にしているところがどこかと言ったら、現実の地図上でH町のある場所になる。
ただ、見える景色が現実世界そのままではない。
違いは歴然としている。
あまりにも異なる風景はここが確かに異世界なのだと教えてくれる。
それに尽きると思う。
現実ではコンクリートジャングルと呼ばれる物質的な街並みが見える大都市ですら、オブリビオンでは単なる草原だったりするのだ。
この違いが何なのかは分からない。
だけど、現実世界と同じ感覚で世界を回れるのは大きい。
まるで世界旅行をしているような感覚を味わえる。
気軽に旅ができるのだ。
現実世界ではこうはいかない。
異常気象や天変地異が続いている。
不穏な噂が噂ですらなくなって、世の中は騒然としていた。
そして、人類が長年、夢見ながらも未だに空は飛べないまま。
神様がもしいるのであれば、怒っているのかもしれない。
太陽に近づこうとする傲慢な人間を……そんな宗教じみた考えをまくし立てる人までいるくらいだ。
でも、これはVRゲームであって。
人が夢見た仮想空間だから、ありえないことを実現しているのだ。
現実では不可能だった手軽な旅を可能にするのが、ポータルと呼ばれる不思議な施設。
簡単に言えば、テレポーテーションみたいなものと考えれば、分かりやすい。
あっという間に遠いところまで運んでくれる。
ただし、副作用があって、三半規管が弱い人は酔う可能性がある。
ある程度の慣れが必要だから、慣れてしまえばどうにかなるとは経験者かく語りきってところ。
かくいうわたしも酷い目に遭った。
初めてポータルに乗った時、それはそれは酷い目に遭ったのだ。
乙女の尊厳に関わるので割愛しておこうと思う……。
そして、注意すべき点がある。
ポータルの利用は決して、無料ではないってこと。
移動距離に応じて、それ相応の料金が必要だ。
そうは言っても実際に海外旅行をするとなれば、船旅しかない現実と比べるまでもない。
比較的、良心的な価格設定がされていると思う。
だから、世界各地にいる友人と出会えた。
偶にハイキング気分で冒険旅行にも出かけられるのだから、言うことはない。
海外在住の友人達は元々、日本びいきのところがあったのか、どうも日本のあちこちが気になるらしい。
そのせいか、彼らがわたしのいるエリアへと遊びに来る方が圧倒的に多い。
一度、フランスにある世界遺産の修道院を見に行った時、怖い思いをしたので思い付きや下調べもせずに旅をするのも考え物なのだ。
それは現実ではなく、オブリビオンでも同じ。
「お待たせ」
「ううん。待ってないけど?」
「それなら、いいけどさ」
現実のわたしにこんなやり取りをする相手はいない。
仲の良い友人はいてもどこか壁を作ってしまうのか、そこまで親しい関係にならないのだ。
オブリビオンでもわたしはわたしであって。
鏡を見れば、そこにはよく知る自分の顔があって、わたしが見ているようにあちらもわたしを見ている。
つまり、わたしであることは変わらないはず。
それなのになぜか、普段とは違う自分でいられるから、不思議だ。
「どこ行くんだっけ?」
「A湖でしょ?」
「そうだっけ?」
「そうよ。何か、面白そうだからって、ユーくんが言ったんじゃない?」
「ええ? そうだった?」
「うん。そう……だと思う」
わたしがユーくんと親し気に呼んでいる年下の彼。
真っ白なカエルさんだけど、まるでどこかの可愛らしい人気キャラクターでけろっとしたのに似ていて、可愛らしい人に出会ったのはちょっとした偶然とひょんな必然によるものだった。
いわゆる幻想世界なんだけど、奇妙なこともある。
世界地図がわたし達の住んでいる現実世界とよく似ているのだ。
似ているというよりもそっくり、そのままと言ってもいい。
まず、わたしが本拠地にしているところがどこかと言ったら、現実の地図上でH町のある場所になる。
ただ、見える景色が現実世界そのままではない。
違いは歴然としている。
あまりにも異なる風景はここが確かに異世界なのだと教えてくれる。
それに尽きると思う。
現実ではコンクリートジャングルと呼ばれる物質的な街並みが見える大都市ですら、オブリビオンでは単なる草原だったりするのだ。
この違いが何なのかは分からない。
だけど、現実世界と同じ感覚で世界を回れるのは大きい。
まるで世界旅行をしているような感覚を味わえる。
気軽に旅ができるのだ。
現実世界ではこうはいかない。
異常気象や天変地異が続いている。
不穏な噂が噂ですらなくなって、世の中は騒然としていた。
そして、人類が長年、夢見ながらも未だに空は飛べないまま。
神様がもしいるのであれば、怒っているのかもしれない。
太陽に近づこうとする傲慢な人間を……そんな宗教じみた考えをまくし立てる人までいるくらいだ。
でも、これはVRゲームであって。
人が夢見た仮想空間だから、ありえないことを実現しているのだ。
現実では不可能だった手軽な旅を可能にするのが、ポータルと呼ばれる不思議な施設。
簡単に言えば、テレポーテーションみたいなものと考えれば、分かりやすい。
あっという間に遠いところまで運んでくれる。
ただし、副作用があって、三半規管が弱い人は酔う可能性がある。
ある程度の慣れが必要だから、慣れてしまえばどうにかなるとは経験者かく語りきってところ。
かくいうわたしも酷い目に遭った。
初めてポータルに乗った時、それはそれは酷い目に遭ったのだ。
乙女の尊厳に関わるので割愛しておこうと思う……。
そして、注意すべき点がある。
ポータルの利用は決して、無料ではないってこと。
移動距離に応じて、それ相応の料金が必要だ。
そうは言っても実際に海外旅行をするとなれば、船旅しかない現実と比べるまでもない。
比較的、良心的な価格設定がされていると思う。
だから、世界各地にいる友人と出会えた。
偶にハイキング気分で冒険旅行にも出かけられるのだから、言うことはない。
海外在住の友人達は元々、日本びいきのところがあったのか、どうも日本のあちこちが気になるらしい。
そのせいか、彼らがわたしのいるエリアへと遊びに来る方が圧倒的に多い。
一度、フランスにある世界遺産の修道院を見に行った時、怖い思いをしたので思い付きや下調べもせずに旅をするのも考え物なのだ。
それは現実ではなく、オブリビオンでも同じ。
「お待たせ」
「ううん。待ってないけど?」
「それなら、いいけどさ」
現実のわたしにこんなやり取りをする相手はいない。
仲の良い友人はいてもどこか壁を作ってしまうのか、そこまで親しい関係にならないのだ。
オブリビオンでもわたしはわたしであって。
鏡を見れば、そこにはよく知る自分の顔があって、わたしが見ているようにあちらもわたしを見ている。
つまり、わたしであることは変わらないはず。
それなのになぜか、普段とは違う自分でいられるから、不思議だ。
「どこ行くんだっけ?」
「A湖でしょ?」
「そうだっけ?」
「そうよ。何か、面白そうだからって、ユーくんが言ったんじゃない?」
「ええ? そうだった?」
「うん。そう……だと思う」
わたしがユーくんと親し気に呼んでいる年下の彼。
真っ白なカエルさんだけど、まるでどこかの可愛らしい人気キャラクターでけろっとしたのに似ていて、可愛らしい人に出会ったのはちょっとした偶然とひょんな必然によるものだった。
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