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本編
第11話 はまるって意味ちょっとだけ、分かったかも
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部長さんがうまく話を切り上げてくれなかったら、やばかった。
ログアウトして、ゲームをやめると窓から見える景色はもう夕焼けがきれいで……って、感傷に浸ってる場合じゃないよっ。
夕食の準備しなきゃ、間に合わないじゃない。
あたふたしながらもタケルが好きな若鳥の竜田揚げを間に合わせることが出来て、ほっとする。
そういえば、ゲームをログアウトした後、『アプリを入れると便利だよぉ』とスミカからメッセが来てたのでアプリを入れたんだっけ。
お風呂に入る前、気になったので見てみたら、アプリにメッセありだった。
慌てて、確認してみるとフレンド登録した人、ランスさんからだ。
内容は夜に時間があれば、全員集まって歓迎会を兼ねた冒険に行く予定だったのが三人は都合が合わないらしい。それでランスさんが新人教育という形であたしを連れていってくれる、ということみたい。二人でとか、デートかいっ!タケルともしたことないのに!
ううん、違った。ゲームだし、これはゲームだし。
デートじゃない。
そこ、理解しよう。
落ち着こう、あたし。
しかし、お風呂に入って湯船に浸かって、考えてもあまりにリアルなあのゲームの世界で知らない人と二人は『やっぱり、デートじゃん』、『いや違うよ』、『リアルじゃないよ!』と堂々巡りから抜けられない。
あまりに長く入っていたせいで頭がボッーとしてたから、タケルの入る時間になってることに気付かなかったあたしもどうかしてるけど、確認してから入って! と釘差して、差しまくったのに入ってきたタケルとどっちが悪いのかしら?
最近、わざとあたしの裸を見ようとしてるんじゃないかって、ちょっと疑ってもいるのよね。
まぁ、お礼としてほっぺに真っ赤な紅葉マークをプレゼントすることでチャラにしといたけどねっ。
「タケルがゲームにはまるって意味ちょっとだけ、分かったかも」
部屋に戻って、お肌のケアと髪をまとめておくのを忘れない。ゲームやりたいけどそこは我慢しなきゃね。
モデルのお仕事がきた時に失礼なことになるのは避けたいもん。
はい、そんなこと言ってて、手早くちゃっちゃっとやって、ゲーム!
ランスさんと待ち合わせをしてるんだから、待たせるのも失礼じゃない?
まだ、よく知らない人相手には猫かぶっておかないといけないわ。
ログインするとそこは夕方にログアウトしたギルドのサロンだった。
「そりゃ、そうよね。違うところだったら、どうしようかと思っちゃった」
「おうふっ!? リナリアさん、早いですね」
鎧の人が唐突にサロンに出現した。
ちょっとびっくりしたけどログアウトする時、一緒にした気がするから、不自然なことはないと思う。
不自然なのは鎧を着込んだのとフードを目深に被ったのが見つめ合っていることね。
「ごめんなさい。遅れたかと思っちゃって」
「あ、いえ、僕こそ、ごめんなさい。お風呂入ってたもんで間に合わなくなるかと焦っちゃいました」
偶然なの?
それともお風呂って、だいたい同じ時間帯に入るもの?
「えっと、それで僕がリナリアさんに冒険するにあたって色々と教えるようにって、言われたんです。それでまず、冒険するのには武器と防具なんです」
そして、ランスさんはあたしの見た目を値踏みするように上から下まで確認する。
「武器は持っていないですよね。それは僕が何とか、出来ると思うんです。防具が問題だなぁ、そのローブ、結構すごいもんじゃないかって思うんですよ。ステータスで確認出来るんですが」
「ステータスで分かるんですか? ふぅーん、えっと、どれどれ」
クラスがプリンセスでレベルは1と。
それでローブはこれかな?
回避力+とか、魔力+とか、色々書いてあるけど何これ?
「蒼き魔女の衣って、書いてあります」
「え? 蒼き魔女の衣ですか……うーん、それ、超レアな物ですよ。どうしてそんなすごいのを……」
ランスさん、ちょっとびっくりしてるのが兜で顔見えないのに分かっちゃう。
「貰ったんです。エラーって出て変な森に飛ばされちゃった時に出会った親切な女の子に」
「それはまた、その体験自体がレアですよ。リナリアさん持ってますね!」
「持ってないわよ? あたし、今、手ぶらよ」
「あっ、いや、そうじゃなくて……よし、じゃあ、防具はそれで充分すぎるので武器ですね。僕の持ってる物で使える物がないか、探してみましょう」
ランスさんはそう言うと猫型ロボットのポケットみたいに空中から、次々と武器を取り出しては机の上に並べていく。
「一個一個、試してみましょう。リナリアさんに合う武器があったら、使ってください」
「はい、分かりました」
そう言われて、まずは肩くらいまではありそうな大きな剣を試してみる。持ち上がらない。ないわね。
「大剣はやっぱり、駄目みたいですね。ロングソードはどうですか」
普通に剣って感じのを試してみる。
持てる。
持てるんだけど何か、これじゃない感がする。
「何か、違う気がします。よく分からないけどこれじゃない感?」
「ロングソードも違うか。プリンセスだもんなぁ。それじゃ、このレイピアはどうですか」
ランスさんが次に渡してくれたのは細身の剣だった。
フェンシングの選手が使ってるのに似てるけどもうちょっと刃がついてる感じがする。
「さっきのより、使いやすい気がします。軽いですし」
「リナリアさんはプリンセスですしね。レイピアのような優雅な武器なんだと思います。じゃあ、そのレイピアは僕からのギルド入会記念ということでプレゼントします」
「いいんですか? ありがとうございます。でも、貰うだけって、気持ち悪くって」
「そんなこと気にしなくてもいいんですよ。それじゃ、今から、フィールドに出て、実際に冒険をする。僕と一緒に冒険するのがお礼の代わりってことで駄目ですかね?」
「は、はい。そんなことでよろしければ」
よしっ、まだ、猫かぶりは剥がれてないわっ。今のところは多分、おとなしい女の子ってイメージで通ってるはずだし、バレるまではこのままの路線で猫かぶっとこっと。
そして、あたしの冒険者としての生活の第一歩が始まるのだった。
ログアウトして、ゲームをやめると窓から見える景色はもう夕焼けがきれいで……って、感傷に浸ってる場合じゃないよっ。
夕食の準備しなきゃ、間に合わないじゃない。
あたふたしながらもタケルが好きな若鳥の竜田揚げを間に合わせることが出来て、ほっとする。
そういえば、ゲームをログアウトした後、『アプリを入れると便利だよぉ』とスミカからメッセが来てたのでアプリを入れたんだっけ。
お風呂に入る前、気になったので見てみたら、アプリにメッセありだった。
慌てて、確認してみるとフレンド登録した人、ランスさんからだ。
内容は夜に時間があれば、全員集まって歓迎会を兼ねた冒険に行く予定だったのが三人は都合が合わないらしい。それでランスさんが新人教育という形であたしを連れていってくれる、ということみたい。二人でとか、デートかいっ!タケルともしたことないのに!
ううん、違った。ゲームだし、これはゲームだし。
デートじゃない。
そこ、理解しよう。
落ち着こう、あたし。
しかし、お風呂に入って湯船に浸かって、考えてもあまりにリアルなあのゲームの世界で知らない人と二人は『やっぱり、デートじゃん』、『いや違うよ』、『リアルじゃないよ!』と堂々巡りから抜けられない。
あまりに長く入っていたせいで頭がボッーとしてたから、タケルの入る時間になってることに気付かなかったあたしもどうかしてるけど、確認してから入って! と釘差して、差しまくったのに入ってきたタケルとどっちが悪いのかしら?
最近、わざとあたしの裸を見ようとしてるんじゃないかって、ちょっと疑ってもいるのよね。
まぁ、お礼としてほっぺに真っ赤な紅葉マークをプレゼントすることでチャラにしといたけどねっ。
「タケルがゲームにはまるって意味ちょっとだけ、分かったかも」
部屋に戻って、お肌のケアと髪をまとめておくのを忘れない。ゲームやりたいけどそこは我慢しなきゃね。
モデルのお仕事がきた時に失礼なことになるのは避けたいもん。
はい、そんなこと言ってて、手早くちゃっちゃっとやって、ゲーム!
ランスさんと待ち合わせをしてるんだから、待たせるのも失礼じゃない?
まだ、よく知らない人相手には猫かぶっておかないといけないわ。
ログインするとそこは夕方にログアウトしたギルドのサロンだった。
「そりゃ、そうよね。違うところだったら、どうしようかと思っちゃった」
「おうふっ!? リナリアさん、早いですね」
鎧の人が唐突にサロンに出現した。
ちょっとびっくりしたけどログアウトする時、一緒にした気がするから、不自然なことはないと思う。
不自然なのは鎧を着込んだのとフードを目深に被ったのが見つめ合っていることね。
「ごめんなさい。遅れたかと思っちゃって」
「あ、いえ、僕こそ、ごめんなさい。お風呂入ってたもんで間に合わなくなるかと焦っちゃいました」
偶然なの?
それともお風呂って、だいたい同じ時間帯に入るもの?
「えっと、それで僕がリナリアさんに冒険するにあたって色々と教えるようにって、言われたんです。それでまず、冒険するのには武器と防具なんです」
そして、ランスさんはあたしの見た目を値踏みするように上から下まで確認する。
「武器は持っていないですよね。それは僕が何とか、出来ると思うんです。防具が問題だなぁ、そのローブ、結構すごいもんじゃないかって思うんですよ。ステータスで確認出来るんですが」
「ステータスで分かるんですか? ふぅーん、えっと、どれどれ」
クラスがプリンセスでレベルは1と。
それでローブはこれかな?
回避力+とか、魔力+とか、色々書いてあるけど何これ?
「蒼き魔女の衣って、書いてあります」
「え? 蒼き魔女の衣ですか……うーん、それ、超レアな物ですよ。どうしてそんなすごいのを……」
ランスさん、ちょっとびっくりしてるのが兜で顔見えないのに分かっちゃう。
「貰ったんです。エラーって出て変な森に飛ばされちゃった時に出会った親切な女の子に」
「それはまた、その体験自体がレアですよ。リナリアさん持ってますね!」
「持ってないわよ? あたし、今、手ぶらよ」
「あっ、いや、そうじゃなくて……よし、じゃあ、防具はそれで充分すぎるので武器ですね。僕の持ってる物で使える物がないか、探してみましょう」
ランスさんはそう言うと猫型ロボットのポケットみたいに空中から、次々と武器を取り出しては机の上に並べていく。
「一個一個、試してみましょう。リナリアさんに合う武器があったら、使ってください」
「はい、分かりました」
そう言われて、まずは肩くらいまではありそうな大きな剣を試してみる。持ち上がらない。ないわね。
「大剣はやっぱり、駄目みたいですね。ロングソードはどうですか」
普通に剣って感じのを試してみる。
持てる。
持てるんだけど何か、これじゃない感がする。
「何か、違う気がします。よく分からないけどこれじゃない感?」
「ロングソードも違うか。プリンセスだもんなぁ。それじゃ、このレイピアはどうですか」
ランスさんが次に渡してくれたのは細身の剣だった。
フェンシングの選手が使ってるのに似てるけどもうちょっと刃がついてる感じがする。
「さっきのより、使いやすい気がします。軽いですし」
「リナリアさんはプリンセスですしね。レイピアのような優雅な武器なんだと思います。じゃあ、そのレイピアは僕からのギルド入会記念ということでプレゼントします」
「いいんですか? ありがとうございます。でも、貰うだけって、気持ち悪くって」
「そんなこと気にしなくてもいいんですよ。それじゃ、今から、フィールドに出て、実際に冒険をする。僕と一緒に冒険するのがお礼の代わりってことで駄目ですかね?」
「は、はい。そんなことでよろしければ」
よしっ、まだ、猫かぶりは剥がれてないわっ。今のところは多分、おとなしい女の子ってイメージで通ってるはずだし、バレるまではこのままの路線で猫かぶっとこっと。
そして、あたしの冒険者としての生活の第一歩が始まるのだった。
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