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本編
第5話 先にお風呂入ってね
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それから、あたしはどうやって家に戻ったのだろう。
全く、記憶が無い。
気が付いたら、自分の部屋でベッドにうつ伏せになったまま、意識を失っていた。
ほっぺたがカビカビするのはきっと泣いちゃって、涙をそのままで寝てたせいね。
うつ伏せで寝るとか、スタイル崩れるから、怒られるかな?
でも、ちょっと寝ただけだし……。
「今、何時だろう?」
ベッドに腰掛けて、放心状態のまま、ボッーとする。
だって、何もする気が起きないんだもん。
突然、コンコンとノックする音がして、ビクッとしちゃう。
自分でも驚くくらいの過剰反応だよね。
小動物みたいな性格じゃないのに。
「アリス、起きてる? 大丈夫かい?」
ドアの向こうから、タケルのいつものように優しい声が聞こえてくるのに安心して。
でも、あの時、聞こえた話の内容は二人がお互いに好きって言ってたよね?
「部活から教室に戻ったら、アリスの鞄がまだ教室にあったから、校内を探したんだ。連絡しても反応がないし……。でも、アリスって、おっちょこちょいな所があるから、もしかしたら鞄を忘れて帰っちゃったのかなと思って、急いで帰って来てみたら、家に戻っていたんだね。寝てたのかな? 無事だって、分かったから安心したよ」
「ごめん。ちょっと調子が悪くなって、帰っちゃっただけなの」
「だ、大丈夫? 夕食はすき焼きだよね? 材料買ってきたんだけど僕がやっておくよ。アリスは休んでいてね」
トタトタという足音が離れていったから、タケルは一階のキッチンに向かったのだろう。
タケルはあたしの王子様なのにあれやこれやと尽くしてくれて、守ってくれる。
彼の姿はまるでナイトみたい。
ナイトだから、守ってくれて、優しくしてくれるだけであって。
あたしのことを好きだから、してくれるんじゃないのかな?
どっちなの、タケル?
「だからって、甘えてるだけな自分は許せないもん」
バシバシと頬を数度叩いて、気合を入れてみる。
それくらいで元気が出るなら、苦労しないよね。
頭は未だ、ボッーとするけど着替えて、夕食の支度をすることに決めた。
「本当に大丈夫? 無理しないでいいんだよ」
クリーム色のワンピースに着替えて、顔を洗って薄っすらとメイクして誤魔化した。
キッチンに現れたあたしの姿を見て、タケルがちょっとギョッとした表情になってる。
顔洗ったくらいじゃ、目が腫れてるのは誤魔化せないもんね。
「大丈夫だって、言ってるでしょ。タケルこそ、疲れてるんだから、休みなさいよ」
あぁ、言い方悪いって、自分でも分かってる。
心配してるから、休んでて欲しいって言えば、いいのに。
朝起こした時なんて目の下にクマがあったのでびっくりしたもん。
夜寝てないんじゃないの?
何やってるのかしら?
テスト近いのに!
って、まさか徹夜で勉強!?
「勉強分からないところあるなら、一緒にやる?」
「え? あっ、ち、違う。ちょっとね、ゲームにはまったんだよね」
「はぁ!? テスト前にゲームにはまるって、一番やっちゃ駄目じゃない」
「そうだね。僕もそう思うよ」
「テスト終わるまでは我慢したら?」
「うん……そうだね。そうするよ」
タケルはなぜか、部屋に戻らないで食卓に座って、テスト勉強をしてる。
あたしはひたすら、すき焼きの具材を切って、鍋を用意してと夕食の準備に忙しい。
そして、気まずいのよ。
会話がないんだもん。
「ねぇ、タケル。そのゲームって、そんなに面白いの?」
「面白いよ、あれ? ……嫌いだったよね、ゲーム」
「嫌いじゃないわ。そうじゃないの」
そうなのよ。
ゲームが嫌いなんじゃないんだって。
ゲームに夢中であたしを構ってくれないから、ゲームに八つ当たりしただけなの。
そのせいでゲームが嫌いって思われてるみたい。
違うんだけどなぁ。
ゲームを楽しそうにしてるあなたの姿は好きだけど、ちょっとくらいは構ってよねってことなの。
分かってるのかな?
「そうなんだ。ゲームが嫌いなのかと思ってたから」
タケルはなんだか、ホッとしたようなふわっとした顔をするもんだから、手元が狂って、危うく指切りかけちゃった。
危ないじゃないの。
『あたしもテスト終わったら、ゲームやろうかなって』と言おうとして、すんでのところで止めた。
スミカに当分の間、『秘密にしておいてね』って言われてたんだっけ。
「だから、違うって言ってるでしょ。あたし、モデルの仕事でゲームのPRもしてるのよ? ゲーム嫌いなんて言うと仕事がなくなるかもしれないでしょ?」
「あ、確かに。そうだね」
そんなどうでもいいような話をしてるうちにすき焼きは出来上がってた。
タケルったら、結構高いすき焼き用肉買ってきてるし!
あたしがついてたら、もっとお買い得なのを買ったのに……って、買い物する余裕なかったんだ。
「ホントに一緒にテスト勉強しなくていいの?」
「大丈夫だよ。僕を信じて。テスト終わるまではゲームもしないし、ちゃんと勉強もするよ」
「うん……分かってるって。タケルのこと、信じてるから」
何だろう? 食べ物が絡んでると素直に喋れるのに。
普通に喋ろうとすると思ってもいないこと言っちゃうんだろう。
でも、夕食を二人きりで食べれて、いっぱいお喋り出来て、幸せな気分。
このまま、ずっと二人でいれたら、いいのにっていうのは我が儘だよね。
タケルはカオルのことが好きなんだし。
「先にお風呂入ってね」
「え? 僕が先なの? アリスが先に入った方がいいんじゃない?」
「いいからっ、先に入って」
「は、はい」
前にあたしが先に入ってたら、知らないでタケルが入ってきたことがあった。
そりゃ、小さい頃は一緒にお風呂入ってたわ。
それはまだ、子供だったからだし。
さすがにあの時はあたしもマジ切れしたから、それはもう血の雨が降ったのよね。
まさか、忘れたのかしら?
その後、タケルが出た後に入ったお風呂でのぼせるくらい浸かってしまうという失敗をやらかした。
あれでお風呂で倒れてたら、タケルが助けに来る→裸見られるのコンボじゃない。
死ねる。
死ねてしまう。
倒れなくて、良かった。
とりあえず、寝る前にスミカに教えてもらったVR機器とゲームソフトをネットでポチっておくのを忘れない。
全く、記憶が無い。
気が付いたら、自分の部屋でベッドにうつ伏せになったまま、意識を失っていた。
ほっぺたがカビカビするのはきっと泣いちゃって、涙をそのままで寝てたせいね。
うつ伏せで寝るとか、スタイル崩れるから、怒られるかな?
でも、ちょっと寝ただけだし……。
「今、何時だろう?」
ベッドに腰掛けて、放心状態のまま、ボッーとする。
だって、何もする気が起きないんだもん。
突然、コンコンとノックする音がして、ビクッとしちゃう。
自分でも驚くくらいの過剰反応だよね。
小動物みたいな性格じゃないのに。
「アリス、起きてる? 大丈夫かい?」
ドアの向こうから、タケルのいつものように優しい声が聞こえてくるのに安心して。
でも、あの時、聞こえた話の内容は二人がお互いに好きって言ってたよね?
「部活から教室に戻ったら、アリスの鞄がまだ教室にあったから、校内を探したんだ。連絡しても反応がないし……。でも、アリスって、おっちょこちょいな所があるから、もしかしたら鞄を忘れて帰っちゃったのかなと思って、急いで帰って来てみたら、家に戻っていたんだね。寝てたのかな? 無事だって、分かったから安心したよ」
「ごめん。ちょっと調子が悪くなって、帰っちゃっただけなの」
「だ、大丈夫? 夕食はすき焼きだよね? 材料買ってきたんだけど僕がやっておくよ。アリスは休んでいてね」
トタトタという足音が離れていったから、タケルは一階のキッチンに向かったのだろう。
タケルはあたしの王子様なのにあれやこれやと尽くしてくれて、守ってくれる。
彼の姿はまるでナイトみたい。
ナイトだから、守ってくれて、優しくしてくれるだけであって。
あたしのことを好きだから、してくれるんじゃないのかな?
どっちなの、タケル?
「だからって、甘えてるだけな自分は許せないもん」
バシバシと頬を数度叩いて、気合を入れてみる。
それくらいで元気が出るなら、苦労しないよね。
頭は未だ、ボッーとするけど着替えて、夕食の支度をすることに決めた。
「本当に大丈夫? 無理しないでいいんだよ」
クリーム色のワンピースに着替えて、顔を洗って薄っすらとメイクして誤魔化した。
キッチンに現れたあたしの姿を見て、タケルがちょっとギョッとした表情になってる。
顔洗ったくらいじゃ、目が腫れてるのは誤魔化せないもんね。
「大丈夫だって、言ってるでしょ。タケルこそ、疲れてるんだから、休みなさいよ」
あぁ、言い方悪いって、自分でも分かってる。
心配してるから、休んでて欲しいって言えば、いいのに。
朝起こした時なんて目の下にクマがあったのでびっくりしたもん。
夜寝てないんじゃないの?
何やってるのかしら?
テスト近いのに!
って、まさか徹夜で勉強!?
「勉強分からないところあるなら、一緒にやる?」
「え? あっ、ち、違う。ちょっとね、ゲームにはまったんだよね」
「はぁ!? テスト前にゲームにはまるって、一番やっちゃ駄目じゃない」
「そうだね。僕もそう思うよ」
「テスト終わるまでは我慢したら?」
「うん……そうだね。そうするよ」
タケルはなぜか、部屋に戻らないで食卓に座って、テスト勉強をしてる。
あたしはひたすら、すき焼きの具材を切って、鍋を用意してと夕食の準備に忙しい。
そして、気まずいのよ。
会話がないんだもん。
「ねぇ、タケル。そのゲームって、そんなに面白いの?」
「面白いよ、あれ? ……嫌いだったよね、ゲーム」
「嫌いじゃないわ。そうじゃないの」
そうなのよ。
ゲームが嫌いなんじゃないんだって。
ゲームに夢中であたしを構ってくれないから、ゲームに八つ当たりしただけなの。
そのせいでゲームが嫌いって思われてるみたい。
違うんだけどなぁ。
ゲームを楽しそうにしてるあなたの姿は好きだけど、ちょっとくらいは構ってよねってことなの。
分かってるのかな?
「そうなんだ。ゲームが嫌いなのかと思ってたから」
タケルはなんだか、ホッとしたようなふわっとした顔をするもんだから、手元が狂って、危うく指切りかけちゃった。
危ないじゃないの。
『あたしもテスト終わったら、ゲームやろうかなって』と言おうとして、すんでのところで止めた。
スミカに当分の間、『秘密にしておいてね』って言われてたんだっけ。
「だから、違うって言ってるでしょ。あたし、モデルの仕事でゲームのPRもしてるのよ? ゲーム嫌いなんて言うと仕事がなくなるかもしれないでしょ?」
「あ、確かに。そうだね」
そんなどうでもいいような話をしてるうちにすき焼きは出来上がってた。
タケルったら、結構高いすき焼き用肉買ってきてるし!
あたしがついてたら、もっとお買い得なのを買ったのに……って、買い物する余裕なかったんだ。
「ホントに一緒にテスト勉強しなくていいの?」
「大丈夫だよ。僕を信じて。テスト終わるまではゲームもしないし、ちゃんと勉強もするよ」
「うん……分かってるって。タケルのこと、信じてるから」
何だろう? 食べ物が絡んでると素直に喋れるのに。
普通に喋ろうとすると思ってもいないこと言っちゃうんだろう。
でも、夕食を二人きりで食べれて、いっぱいお喋り出来て、幸せな気分。
このまま、ずっと二人でいれたら、いいのにっていうのは我が儘だよね。
タケルはカオルのことが好きなんだし。
「先にお風呂入ってね」
「え? 僕が先なの? アリスが先に入った方がいいんじゃない?」
「いいからっ、先に入って」
「は、はい」
前にあたしが先に入ってたら、知らないでタケルが入ってきたことがあった。
そりゃ、小さい頃は一緒にお風呂入ってたわ。
それはまだ、子供だったからだし。
さすがにあの時はあたしもマジ切れしたから、それはもう血の雨が降ったのよね。
まさか、忘れたのかしら?
その後、タケルが出た後に入ったお風呂でのぼせるくらい浸かってしまうという失敗をやらかした。
あれでお風呂で倒れてたら、タケルが助けに来る→裸見られるのコンボじゃない。
死ねる。
死ねてしまう。
倒れなくて、良かった。
とりあえず、寝る前にスミカに教えてもらったVR機器とゲームソフトをネットでポチっておくのを忘れない。
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