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第4章 麗しのアルフィン
第180話 新たな大鎌・永遠なる心
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二ヶ月後――
誰も何も言いません。
むしろ微笑ましいものを見るような目で見られるから、恥ずかしいですわ。
そんなことを思いながら、レオに食べさせてあげるのは好きですし、嬉しくて仕方ないのですけど。
逆に食べさせられる方が未だに恥ずかしいです。
膝に乗せられて、食べさせられているとどちらが年上なのか、忘れてしまいそうになりますもの。
「今日、例の物の件で工房に行きたいのですけど……」
アンと一緒に町でお買い物を楽しむ。
そのついでにライさまの工房に寄ろうと思っていたのですけど、体力的に難しいのですわ。
正確には体力ではありません。
足腰が少々……。
ええ、誰のせいとは言いませんけども。
日中、ずっと一緒にいられるように夜、わざと激しくしているのではないかしら?
考えすぎかしら?
ずっと一緒にいたいと思っているのは同じ……。
だから、嫌ではありません。
日常生活に困難を来そうとも嫌ではないのです。
「うん。じゃあ、まず着替えないとダメじゃないかな。もうちょっと脱がせやす……じゃなくて、動きやすい方がいいと思うな」
「ん? そ、そうですわね」
何か、不穏な単語が聞こえた気がするのですけども、気のせいかしら?
受け取る物が物ですから、身体に馴染むのかを試しておきたいですし……。
だから、回復魔法は直前まで我慢ですわね。
我慢するとは言いましたけど。
なるべく、顔が見えないようにレオにぴったりとくっついていたのですが、視線が集まっているみたい。
落ち着きません……。
お姫様抱っこは抱えているレオよりもされている私の方が恥ずかしいのです。
こうなることは分かっていたのですから、予めフードを被っておくべきだったかしら?
今更、考えても遅いですし、レオがしたいようですから……。
ん? 違いますわよ。
あちらのしたいではないですからね?
「よう。あんたらも相変わらず、アレだな」
呆れているような、揶揄うような何とも言えない視線を向けてくるのは工房の主であるライモンド師。
レオの剣レーヴァティンや私の大鎌レライエは彼の手によるもの。
とても気まぐれな方で身分の高い者からの依頼であっても気に入らなければ、一切仕事の依頼を受け付けないことで知られてますわね。
「例の物なら、出来てるぜ。ああ、あっちのはまだ、だけどな」
彼が指で指し示した先には小柄な男性が炉の前で必死に鎚を振るっていました。
ライさまに弟子と認められたリックソンさまです。
彼が任せられているのはとある魔装具の製作で依頼者は私とレオ。
二人で相談して、決めたレーゲンへの贈り物。
魔法に関する素養がないレーゲンの身を守り、相棒として、ともに戦える。
この条件が中々に困難らしく、難航しているようなのです。
「あら? スタッフですのね」
「いんや、違うぜ? こいつはな。永遠なる心って、名付けたぜ」
ライさまが例の物として、渡してくれたのは希少金属であるミスリルを使った両手持ちの大型の杖でした。
表面は磨かれた鏡のように美しいですし、一流の芸術品にも劣らない意匠まで施されているので装飾品としての価値もありそうです。
人でいうところの頭に相当する部分には無色透明の魔水晶が嵌め込まれてますから、魔法を使いやすくする効果があるのでしょうね。
「こいつはな、こう使うんだぜ」
魔水晶が青く色付いたかと思うと南海の海のように澄んだ青い光を宿す湾曲した刃が永遠なる心から、発生してます。
え? 何ですの、これ。
「こいつは魔力を流すことで魔力の刃を発振可能でな。お嬢ちゃんなら、うまく使えるだろうよ」
「ありが「ありがとう、ライさん」
「お、おう」
んんん?
レオに言葉をかぶせられて遮られましたし、受け取ったのも彼です。
回復魔法でもう治したから、自分で受け取れますし、歩けるのですけど。
「よし、帰ろうか」
「は、はい」
永遠なる心を背中に括りつけて、『さあ、おいで』と言わんばかりに手を広げて、待っているので行かない訳には参りませんでしょう?
結局、横抱きに抱えられました。
レオは喜んでいますし、私も恥ずかしいのを我慢出来れば、嬉しいんですのよ?
この恥ずかしさが問題なだけですもの。
羞恥プレイに耐え、どうにかお城に戻ることが出来ました。
転移で帰れば、あっという間ですが羞恥にさえ、耐えられたら悪くはないのです。
デート気分を楽しめますもの。
そして、どことなく誇らしげで堂々としているレオについ見惚れていました。
周囲の視線が注がれているのに気付いて、顔が熱くなります。
本当に羞恥プレイですわね。
ともあれ、ようやく中庭にある練武場へとたどり着きました。
町中ではさすがに人目があるから、遠慮していたのかしら?
お城に入ってからは露骨に触ってくるので羞恥プラス別の何かで大変でしたわ。
「それでは試してみましょう」
「うん。僕がすることはある?」
「そこにレオがいるだけで十分ですわ。永遠なる心がどういう物か、分かればいいだけですもの。そうですわね。まずは氷の刃かしら?」
永遠なる心を両手で構え、氷の魔力を注ぎ込むと透明な魔水晶が白い輝きを帯び始めます。
やがて、純白の刃が凍気を伴いながら、氷の魔力で構成された刃が顕在化しました。
右手に持ち替え、静かに振ってみるとまるで雪が降るように白い結晶が空気中を舞います。
幻想的で美しいですわ。
「へえ、面白いね」
「凍気を発しているみたいですわ。ねぇ、レオ。炎の矢を撃ってくださいません?」
「炎の矢? 分かった」
「ん? んん?」
レオは左手を副えながら、右手を天に掲げ、指を真っ直ぐと伸ばし、その指先に炎の矢の火種を灯していきます。
その数、一、二……五!?
「これくらい、平気だよね? 燃えろおおお」
え? あの燃えろって、何ですの?
どう見ても炎の矢にしては高出力・高火力の炎の塊が螺旋を描きながら、向かってくるのを見て、私は心の中で静かに溜息を吐くのでした。
誰も何も言いません。
むしろ微笑ましいものを見るような目で見られるから、恥ずかしいですわ。
そんなことを思いながら、レオに食べさせてあげるのは好きですし、嬉しくて仕方ないのですけど。
逆に食べさせられる方が未だに恥ずかしいです。
膝に乗せられて、食べさせられているとどちらが年上なのか、忘れてしまいそうになりますもの。
「今日、例の物の件で工房に行きたいのですけど……」
アンと一緒に町でお買い物を楽しむ。
そのついでにライさまの工房に寄ろうと思っていたのですけど、体力的に難しいのですわ。
正確には体力ではありません。
足腰が少々……。
ええ、誰のせいとは言いませんけども。
日中、ずっと一緒にいられるように夜、わざと激しくしているのではないかしら?
考えすぎかしら?
ずっと一緒にいたいと思っているのは同じ……。
だから、嫌ではありません。
日常生活に困難を来そうとも嫌ではないのです。
「うん。じゃあ、まず着替えないとダメじゃないかな。もうちょっと脱がせやす……じゃなくて、動きやすい方がいいと思うな」
「ん? そ、そうですわね」
何か、不穏な単語が聞こえた気がするのですけども、気のせいかしら?
受け取る物が物ですから、身体に馴染むのかを試しておきたいですし……。
だから、回復魔法は直前まで我慢ですわね。
我慢するとは言いましたけど。
なるべく、顔が見えないようにレオにぴったりとくっついていたのですが、視線が集まっているみたい。
落ち着きません……。
お姫様抱っこは抱えているレオよりもされている私の方が恥ずかしいのです。
こうなることは分かっていたのですから、予めフードを被っておくべきだったかしら?
今更、考えても遅いですし、レオがしたいようですから……。
ん? 違いますわよ。
あちらのしたいではないですからね?
「よう。あんたらも相変わらず、アレだな」
呆れているような、揶揄うような何とも言えない視線を向けてくるのは工房の主であるライモンド師。
レオの剣レーヴァティンや私の大鎌レライエは彼の手によるもの。
とても気まぐれな方で身分の高い者からの依頼であっても気に入らなければ、一切仕事の依頼を受け付けないことで知られてますわね。
「例の物なら、出来てるぜ。ああ、あっちのはまだ、だけどな」
彼が指で指し示した先には小柄な男性が炉の前で必死に鎚を振るっていました。
ライさまに弟子と認められたリックソンさまです。
彼が任せられているのはとある魔装具の製作で依頼者は私とレオ。
二人で相談して、決めたレーゲンへの贈り物。
魔法に関する素養がないレーゲンの身を守り、相棒として、ともに戦える。
この条件が中々に困難らしく、難航しているようなのです。
「あら? スタッフですのね」
「いんや、違うぜ? こいつはな。永遠なる心って、名付けたぜ」
ライさまが例の物として、渡してくれたのは希少金属であるミスリルを使った両手持ちの大型の杖でした。
表面は磨かれた鏡のように美しいですし、一流の芸術品にも劣らない意匠まで施されているので装飾品としての価値もありそうです。
人でいうところの頭に相当する部分には無色透明の魔水晶が嵌め込まれてますから、魔法を使いやすくする効果があるのでしょうね。
「こいつはな、こう使うんだぜ」
魔水晶が青く色付いたかと思うと南海の海のように澄んだ青い光を宿す湾曲した刃が永遠なる心から、発生してます。
え? 何ですの、これ。
「こいつは魔力を流すことで魔力の刃を発振可能でな。お嬢ちゃんなら、うまく使えるだろうよ」
「ありが「ありがとう、ライさん」
「お、おう」
んんん?
レオに言葉をかぶせられて遮られましたし、受け取ったのも彼です。
回復魔法でもう治したから、自分で受け取れますし、歩けるのですけど。
「よし、帰ろうか」
「は、はい」
永遠なる心を背中に括りつけて、『さあ、おいで』と言わんばかりに手を広げて、待っているので行かない訳には参りませんでしょう?
結局、横抱きに抱えられました。
レオは喜んでいますし、私も恥ずかしいのを我慢出来れば、嬉しいんですのよ?
この恥ずかしさが問題なだけですもの。
羞恥プレイに耐え、どうにかお城に戻ることが出来ました。
転移で帰れば、あっという間ですが羞恥にさえ、耐えられたら悪くはないのです。
デート気分を楽しめますもの。
そして、どことなく誇らしげで堂々としているレオについ見惚れていました。
周囲の視線が注がれているのに気付いて、顔が熱くなります。
本当に羞恥プレイですわね。
ともあれ、ようやく中庭にある練武場へとたどり着きました。
町中ではさすがに人目があるから、遠慮していたのかしら?
お城に入ってからは露骨に触ってくるので羞恥プラス別の何かで大変でしたわ。
「それでは試してみましょう」
「うん。僕がすることはある?」
「そこにレオがいるだけで十分ですわ。永遠なる心がどういう物か、分かればいいだけですもの。そうですわね。まずは氷の刃かしら?」
永遠なる心を両手で構え、氷の魔力を注ぎ込むと透明な魔水晶が白い輝きを帯び始めます。
やがて、純白の刃が凍気を伴いながら、氷の魔力で構成された刃が顕在化しました。
右手に持ち替え、静かに振ってみるとまるで雪が降るように白い結晶が空気中を舞います。
幻想的で美しいですわ。
「へえ、面白いね」
「凍気を発しているみたいですわ。ねぇ、レオ。炎の矢を撃ってくださいません?」
「炎の矢? 分かった」
「ん? んん?」
レオは左手を副えながら、右手を天に掲げ、指を真っ直ぐと伸ばし、その指先に炎の矢の火種を灯していきます。
その数、一、二……五!?
「これくらい、平気だよね? 燃えろおおお」
え? あの燃えろって、何ですの?
どう見ても炎の矢にしては高出力・高火力の炎の塊が螺旋を描きながら、向かってくるのを見て、私は心の中で静かに溜息を吐くのでした。
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