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第3章 戦火のオルレーヌ王国
第102話 それが原因ですわね
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六枚の翼を音も無く、羽ばたかせ、地上に戻るまでさして時間を必要としませんでした。
静粛性だけでなく、加速力も高い水準にあるようですわね。
アンとニールを安全な場所に下ろし、大穴の直上に出ると既に戦闘は終了しかけているように見えます。
全身から、白煙が上がる満身創痍のヤマトはムラクモを杖代わりに膝を付くのがやっとみたい。
対する紅の魔動騎士ク・ホリンは地下から、フリアエの放った雷火槍に胸部と頭部を貫かれ、動きが止まっているようです。
それにしてもこのフリアエ。
人の身ではまともに動かせなかったと開発日誌に記述のあった意味が分かりましたわ。
私の魔力は全盛期と同等……いえ、それ以上といってもいいかしら?
『氷姫』と呼ばれていたあの頃よりも上昇している理由は魂の連鎖のお陰ですわね。
身体的には人なのにほぼ人ではない。
複雑な状態にあるとも言えるのですが利点の方が大きいんですもの。
ですが、その魔力量にも拘わらず、かなりの負担を強いられているのです。
起動実験に立ち会った方は悲惨な最期を遂げたのではないかしら?
こうして、宙に浮いているだけでも無駄に魔力を消費している気がしますわ。
翼から、赤く輝く鱗粉のような物が常に放出されていているのですけど、これに何か、意味があるのかしら?
何らかの魔法の結界を張っている可能性も否定出来ませんけど、良く分かりませんわね。
「レオは大丈夫ですの?」
「一人ではちょっと無理そうかな。でも、リーナがいるから、平気だよ」
そう言って、レオはニカッと私に爽やかな笑顔を向けてくれます。
かなり耐性が付いたと思っていたのに胸の鼓動が激しく、苦しくなるほどに高鳴っていました。
でも、それが何だか、心地いいのですわ。
「さて、どうしよう?」
「そうですわね。アレから感じませんかしら?とても懐かしくて、愛おしくて、憎々しい魔力を」
「ああ……アレって、もしかしてベリアル?」
彼の問いに無言で頷くとそれだけで察してくれるんですもの。
もう目を合わせるだけで愛を語れる気がしてくるのですけど……ええ?
また、思考回路が外れかけましたわね。
「ねぇ、レオ。あの魔力だけを狙うこと……出来ますかしら?」
「いけるよ。ただ、動けないように止められるかい?」
「ふふっ、いけますわよ」
フリアエの武装を管制しているのは私ですから、何が出来るのかも何となく、頭の中で理解しています。
両腕の篭手にそういった用途に適した武装が内臓されてますわ。
「レオ、両手を前に出してくださいません?」
「こうかな」
胸の位置に上げられた両腕の篭手の先から、赤い光の帯が鞭のようにしなりながら、ク・ホリンの両腕を縛り上げていきます。
これは私の愛剣オートクレールと同じように魔力を流し、地涌自在に操れる魔法の鞭のような武装のようです。
相手を拘束するだけでなく、そのまま攻撃にも使えますから、便利ですわ。
「リーナ……変な趣味とか、覚えないでね」
変な趣味って、何ですの?
レオを縛って、性的興奮を覚える趣味はないですわ。
どちらかと言えば、『それはあなたではなくって?』と問い詰めたいところですが眠れる獅子を起こしかねないのでやめておきましょう。
「レーオー、変なことを考えなくてもよくってよ」
レオはそれに何も答えず、フリアエを動かします。
照れ隠し……それともかっこいいところを見せたいのかしら?
そんなことをしなくてもあなたしか、見えませんし、見ませんわ。
コホン……また、ちょっと頭が散歩しかけましたわね。
その間にフリアエは一気に間合いを詰めているのですから、恐るべき性能ですわ。
瞬間移動でもしたように一瞬の出来事でしたから、全く目で捉えられませんでした。
ただ、今の動きだけでもかなりの魔力を使っているのですから、馬鹿になりませんわね。
「リーナ、これでいいかな?」
「はい、それが原因ですわね」
フリアエの右人差し指がク・ホリンの胸部を刺し貫き、引き抜かれた爪の先には真紅の光を放ちながら、脈動する魔力の塊がありました。
次の瞬間には青白い炎を上げて、消え去りましたけど。
ええ、あれを取り去ったから、大丈夫ですわね。
あなたの子の命を奪ったりはしないわ。
だから、安心して眠りなさい、ライラ。
そして、フリアエを介して、広範囲回復魔法を使ったのですけど……
その結果、どうなったのかはまた、レオにお姫様抱っこされていることでお察しくださいな。
静粛性だけでなく、加速力も高い水準にあるようですわね。
アンとニールを安全な場所に下ろし、大穴の直上に出ると既に戦闘は終了しかけているように見えます。
全身から、白煙が上がる満身創痍のヤマトはムラクモを杖代わりに膝を付くのがやっとみたい。
対する紅の魔動騎士ク・ホリンは地下から、フリアエの放った雷火槍に胸部と頭部を貫かれ、動きが止まっているようです。
それにしてもこのフリアエ。
人の身ではまともに動かせなかったと開発日誌に記述のあった意味が分かりましたわ。
私の魔力は全盛期と同等……いえ、それ以上といってもいいかしら?
『氷姫』と呼ばれていたあの頃よりも上昇している理由は魂の連鎖のお陰ですわね。
身体的には人なのにほぼ人ではない。
複雑な状態にあるとも言えるのですが利点の方が大きいんですもの。
ですが、その魔力量にも拘わらず、かなりの負担を強いられているのです。
起動実験に立ち会った方は悲惨な最期を遂げたのではないかしら?
こうして、宙に浮いているだけでも無駄に魔力を消費している気がしますわ。
翼から、赤く輝く鱗粉のような物が常に放出されていているのですけど、これに何か、意味があるのかしら?
何らかの魔法の結界を張っている可能性も否定出来ませんけど、良く分かりませんわね。
「レオは大丈夫ですの?」
「一人ではちょっと無理そうかな。でも、リーナがいるから、平気だよ」
そう言って、レオはニカッと私に爽やかな笑顔を向けてくれます。
かなり耐性が付いたと思っていたのに胸の鼓動が激しく、苦しくなるほどに高鳴っていました。
でも、それが何だか、心地いいのですわ。
「さて、どうしよう?」
「そうですわね。アレから感じませんかしら?とても懐かしくて、愛おしくて、憎々しい魔力を」
「ああ……アレって、もしかしてベリアル?」
彼の問いに無言で頷くとそれだけで察してくれるんですもの。
もう目を合わせるだけで愛を語れる気がしてくるのですけど……ええ?
また、思考回路が外れかけましたわね。
「ねぇ、レオ。あの魔力だけを狙うこと……出来ますかしら?」
「いけるよ。ただ、動けないように止められるかい?」
「ふふっ、いけますわよ」
フリアエの武装を管制しているのは私ですから、何が出来るのかも何となく、頭の中で理解しています。
両腕の篭手にそういった用途に適した武装が内臓されてますわ。
「レオ、両手を前に出してくださいません?」
「こうかな」
胸の位置に上げられた両腕の篭手の先から、赤い光の帯が鞭のようにしなりながら、ク・ホリンの両腕を縛り上げていきます。
これは私の愛剣オートクレールと同じように魔力を流し、地涌自在に操れる魔法の鞭のような武装のようです。
相手を拘束するだけでなく、そのまま攻撃にも使えますから、便利ですわ。
「リーナ……変な趣味とか、覚えないでね」
変な趣味って、何ですの?
レオを縛って、性的興奮を覚える趣味はないですわ。
どちらかと言えば、『それはあなたではなくって?』と問い詰めたいところですが眠れる獅子を起こしかねないのでやめておきましょう。
「レーオー、変なことを考えなくてもよくってよ」
レオはそれに何も答えず、フリアエを動かします。
照れ隠し……それともかっこいいところを見せたいのかしら?
そんなことをしなくてもあなたしか、見えませんし、見ませんわ。
コホン……また、ちょっと頭が散歩しかけましたわね。
その間にフリアエは一気に間合いを詰めているのですから、恐るべき性能ですわ。
瞬間移動でもしたように一瞬の出来事でしたから、全く目で捉えられませんでした。
ただ、今の動きだけでもかなりの魔力を使っているのですから、馬鹿になりませんわね。
「リーナ、これでいいかな?」
「はい、それが原因ですわね」
フリアエの右人差し指がク・ホリンの胸部を刺し貫き、引き抜かれた爪の先には真紅の光を放ちながら、脈動する魔力の塊がありました。
次の瞬間には青白い炎を上げて、消え去りましたけど。
ええ、あれを取り去ったから、大丈夫ですわね。
あなたの子の命を奪ったりはしないわ。
だから、安心して眠りなさい、ライラ。
そして、フリアエを介して、広範囲回復魔法を使ったのですけど……
その結果、どうなったのかはまた、レオにお姫様抱っこされていることでお察しくださいな。
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