我欲するゆえに我あり

黒幸

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30 インテンシティ再び!?

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「インテンシティさん!?」
「いいえ。私はストレングスです。インテンシティは私のいとこのはとこのまたいとこの子です」
「ええ……マジか」

 ボルドーのプレイヤーギルドはブルゴスと違って、自前の事務所を持っていた。
 景観を損なわないように配慮したのか、レトロなデザインだ。
 それなりに権力と財力を握っているんだろうか。

 伯母さんがボルドーのギルドを頼りにしろと言ったのは、それも影響しているに違いない。
 まあ、ガワがそうなだけであって、中に入るとカウンターが並んでいて、職員が奥の方で事務をしている。
 お役所ぽいのに変わりはなかった。

 順番待ちの整理券を貰って、いざ! と気合を入れて、カウンターに臨んだ。
 そして、この既視感である。

 ブルゴスのギルドで受付の応対をしてくれたのがインテンシティ。
 ブルネットのおかっぱ頭で出るところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいるナイスバディな美人のお姉さんだ。
 ただ、会話をすると一から二に進み、三に行くかと思ったら、一に戻っている。
 そんなポンコツさんだった。

「いらっしゃいませ。こんにちは。スマイルは0円となっております」

 いやいや。
 あんた、本当はインテンシティなんだろ! とツッコむと底なし沼にハマって二度と抜け出せない気がする。
 オルガもそれに気付いたのか、目配せしてきた。
 さっさと用件だけを済ませて、とんずらしたいようだ。

「お二人に丁度いいお仕事があるのですが……聞きたいですか?」

 それ、あんたが言いたくて仕方がないんですよね? と言いたい。
 言いたいがやっぱり、沼にハマる姿しか思い浮かばないので我慢するしかない。

「えぇ、お願いします」

 オルガはさすがだな。
 感情を見事に抑えて、冷静に言い切ったぞ。
 心無し、声が震えていたから、下手するとオルガも暴発しかねないくらいに頭にかっかときているようだ。

「古城の観光をしながら、簡単なお仕事で稼げます」

 蠱惑的な笑みっていうんだろうか。
 インテンシティ……もといストレングスはそれはもうチャーミングな笑顔を浮かべて、案件を説明してくれる。

 あんた、そういえば、ブルゴスでも簡単に稼げるって言わなかったか?
 嫌な予感がしてならないが、断れる雰囲気ではない。
 なし崩し的に受けなければいけない。
 もう、これ強制的って言うんじゃないか。

 こうして、俺とオルガはボルドー近郊の南東に位置する古城ロケタイヤードへと向かうことになった。

「観光名所で有名なところみたい。整備されているし、大丈夫そうじゃない?」

 デバイスで件の城を調べたオルガはそう言いつつもまだ、確信が持てないのか怪訝な顔をしている。
 長らく観光地として、一般公開されていた城なら、ギルドが預かる仕事とは無縁そうなんだがなあ。
 何ともおかしな話だ。

 この時、俺達の感じた嫌な予感がまさか、的中してしまうとは……。
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