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10 アルファと呼ばれるモノ
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「ここは一体、何なんだ?」
「あんたさ……」
「何だよ?」
「いや、バカだなって、思っただけど?」
「何だと!」
「事実を言ったまででぇ~す」
ぐぬぬぬぬと何かを反論したくなったが、やめておいた。
一を言えば、十とは言わないまでも三は確実に返って来る。
オルガは倍返し以上を仕掛けてくる女だとここまでの短い付き合いで理解した。
「そんなバカなあんたにも分かりやすいように説明してあげる。優しいあたしに感謝することね」
もはや、ぐぬぬぬぬともならない。
どうにでもなれ~。
もしくは好きに料理してくれるといいってところか。
ぐうの音も出ない。
「ここが何かって、それも授業でやったと思うのよ? 試練で使う古代の遺跡を模した建築物って、嫌というほど習ったと思うんだけど~? 本当に知らなかったんだぁ? ウケるぅ」
「んがんが」
言い方は感じ悪い。
悪意が込められているとしか思えないのに説明は丁寧だな、おい!
スリーパーも理解していたってことか。
マジですか、知らないのは俺だけですか、そうですか。
「試練の内容についても散々、やってきたと思うんだけど? 仕方ないわねぇ」
中々に鋭い視線だ。
おお、怖い。
氷の視線とでも例えると丁度いいだろう。
だが、どうということはない。
じっちゃんが怒った時の怖さに比べたら、どうってことない。
微妙にドヤ顔をしていて、俺とスリーパーよりも自分が優位にいると認識できるのが嬉しいんじゃないか?
微かに上がる口角を隠せていないから、微笑ましく思えてくるぜ!
それにオルガは口こそ悪いが、ちゃんと教えてくれているのは事実だ。
これは間違いない。
ほぼ本能で動いているとしか思えないスリーパーが、一定の理解を示しているのは説明が如何に適切なのかの証拠になっている。
つまり、こういうことか。
まず、試練に挑む資格を持つのはサント・フベルトゥス学院を卒業する十五の年になった者と限られている。
さらにその中でも試練に挑戦するのに十分な実力を備えていると教授陣が認め、学院長が承認した者でなければならない。
試練に挑むことを認められた選ばれし挑戦者は三人一組の編成で試練に臨むこと。
試練が行われるのは古代の遺跡を模した人口の巨大な地下神殿のような物である。
試練に挑んだ者は証として、女王の首を持ち帰らねばならない。
「ああ。それでさ。女王ってのは何だよ? さっきのがそうなのか?」
「あんたって、本当におバカねっ。あれは単なるブラックタイガーの個体に決まってるじゃない。どこに目付いてんのよ?」
「いや、目はここに付いているが……ぐるるるる」
「節穴なんじゃないの? がるるるる」
「んがー」
大男のスリーパーが睨み合う俺とオルガの間で申し訳ない顔をしているので、それ以上怒る気にもなれない。
これくらいで我を忘れるのは確かによろしくないことだと思う。
じっちゃんがいたら、頭に拳骨を喰らっていただろう。
「ブラックタイガーにはアルファって、呼ばれるのがいるのよ。それが女王種ね。何で女王種か、知りたい?」
知りたいと言わなくても教えたくて、うずうずしている顔だって、誰にでも分かる。
仕方ないから、「はいはい、教えてください。ちっ」と答えたら、キレ気味なのに「生意気だけど、教えてあげるわ!」とどこか嬉しそうだ。
新手の変態かもしれないな、オルガは……。
しかし、物知りなヤツがいることは地味に助かる。
スリーパーは相変わらず、「んが」が基本でそれ以外喋らない。
何となく、言いたいことやしたいことを察することが可能だが、はっきりとした意思疎通は困難だ。
まして知識を理路整然と述べるなんて、無理だろう。
「んがーんがががんがんが」と言われても、さつぱりだしな!
その点、オルガは学院でも成績優秀な才女だ。
こと説明という意味では彼女ほどの適任者はいない。
それで分かったことは女王種――ブラックタイガー・アルファはこの地下神殿の下層で強固な鎖に縛られて、封じられているってこと。
アルファは誰の助けも借りず、単体で子孫を増やせる……。
単為生殖が可能な厄介なヤツ。
首を取って、二度と動かないようにしなければ、危ない存在が地下に鎮座ましているってことだ。
「あんたさ……」
「何だよ?」
「いや、バカだなって、思っただけど?」
「何だと!」
「事実を言ったまででぇ~す」
ぐぬぬぬぬと何かを反論したくなったが、やめておいた。
一を言えば、十とは言わないまでも三は確実に返って来る。
オルガは倍返し以上を仕掛けてくる女だとここまでの短い付き合いで理解した。
「そんなバカなあんたにも分かりやすいように説明してあげる。優しいあたしに感謝することね」
もはや、ぐぬぬぬぬともならない。
どうにでもなれ~。
もしくは好きに料理してくれるといいってところか。
ぐうの音も出ない。
「ここが何かって、それも授業でやったと思うのよ? 試練で使う古代の遺跡を模した建築物って、嫌というほど習ったと思うんだけど~? 本当に知らなかったんだぁ? ウケるぅ」
「んがんが」
言い方は感じ悪い。
悪意が込められているとしか思えないのに説明は丁寧だな、おい!
スリーパーも理解していたってことか。
マジですか、知らないのは俺だけですか、そうですか。
「試練の内容についても散々、やってきたと思うんだけど? 仕方ないわねぇ」
中々に鋭い視線だ。
おお、怖い。
氷の視線とでも例えると丁度いいだろう。
だが、どうということはない。
じっちゃんが怒った時の怖さに比べたら、どうってことない。
微妙にドヤ顔をしていて、俺とスリーパーよりも自分が優位にいると認識できるのが嬉しいんじゃないか?
微かに上がる口角を隠せていないから、微笑ましく思えてくるぜ!
それにオルガは口こそ悪いが、ちゃんと教えてくれているのは事実だ。
これは間違いない。
ほぼ本能で動いているとしか思えないスリーパーが、一定の理解を示しているのは説明が如何に適切なのかの証拠になっている。
つまり、こういうことか。
まず、試練に挑む資格を持つのはサント・フベルトゥス学院を卒業する十五の年になった者と限られている。
さらにその中でも試練に挑戦するのに十分な実力を備えていると教授陣が認め、学院長が承認した者でなければならない。
試練に挑むことを認められた選ばれし挑戦者は三人一組の編成で試練に臨むこと。
試練が行われるのは古代の遺跡を模した人口の巨大な地下神殿のような物である。
試練に挑んだ者は証として、女王の首を持ち帰らねばならない。
「ああ。それでさ。女王ってのは何だよ? さっきのがそうなのか?」
「あんたって、本当におバカねっ。あれは単なるブラックタイガーの個体に決まってるじゃない。どこに目付いてんのよ?」
「いや、目はここに付いているが……ぐるるるる」
「節穴なんじゃないの? がるるるる」
「んがー」
大男のスリーパーが睨み合う俺とオルガの間で申し訳ない顔をしているので、それ以上怒る気にもなれない。
これくらいで我を忘れるのは確かによろしくないことだと思う。
じっちゃんがいたら、頭に拳骨を喰らっていただろう。
「ブラックタイガーにはアルファって、呼ばれるのがいるのよ。それが女王種ね。何で女王種か、知りたい?」
知りたいと言わなくても教えたくて、うずうずしている顔だって、誰にでも分かる。
仕方ないから、「はいはい、教えてください。ちっ」と答えたら、キレ気味なのに「生意気だけど、教えてあげるわ!」とどこか嬉しそうだ。
新手の変態かもしれないな、オルガは……。
しかし、物知りなヤツがいることは地味に助かる。
スリーパーは相変わらず、「んが」が基本でそれ以外喋らない。
何となく、言いたいことやしたいことを察することが可能だが、はっきりとした意思疎通は困難だ。
まして知識を理路整然と述べるなんて、無理だろう。
「んがーんがががんがんが」と言われても、さつぱりだしな!
その点、オルガは学院でも成績優秀な才女だ。
こと説明という意味では彼女ほどの適任者はいない。
それで分かったことは女王種――ブラックタイガー・アルファはこの地下神殿の下層で強固な鎖に縛られて、封じられているってこと。
アルファは誰の助けも借りず、単体で子孫を増やせる……。
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