7 / 34
7 ブラックタイガー
しおりを挟む
そいつが発しているんだろう。
しゅうしゅうという耳障りな音は呼吸音とは思えなかった。
それまで一切、そんな音はしていなかったからだ。
わざと音をさせているんだ!
あいつにとって、俺達は獲物ってことか。
「何だよ、あれ?」
「あれはあれよ? あれを狩るのが試練って訳。理解した?」
「お、おう」
「んが!」
あれ。
俺達に向けて、威嚇するように耳障りな音を立てるそいつはありえない生き物に見えた。
魔物と呼ばれる生物は、確かに野生動物とは一線を画す存在だと思う。
野生動物ではありえない不思議な生態や見た目をしたものが多い。
そんな魔物と小さい頃から、追いかけっこをしていた俺だ。
だが、そいつはどう考えてもおかしいんだ。
ここは陸だろう?
何で水中にいるはずの生物――エビが普通に動いているんだ?
おまけに大きくないか。
俺と同じくらいでかいんだが!
エビはだいたい、直立して動く生き物だったか……。
「さすがにあんたでもあれは見たこと無いんだ? へぇ」
「だから、あれは何だよ!」
「ブラックタイガー」
「何だ、それ? 黒い虎? 何で北の言葉で呼ばれているんだ?」
「そんなこと知らないわよ。はい、はい。お喋りしていたら、死ぬわよ」
ああ、そういうことか。
黒い虎の意味も何となく、分かった。
灰色の体色をしていて、虎の黒い縦縞を思わせる黒っぽい模様があるからだろう。
それに虎というだけあって、エビとは思えない口をしていた。
ダラダラと涎を垂らす口にはびっしりと鋭い牙が生えている。
あれで俺達をムシャムシャと食べる気か?
しかもあの涎、おかしいだろ……。
地面に滴り落ちると白煙が出ているんだが。
「あれの体液って、もしかして、もしかするのか?」
「あんた、バカなの? 見れば分かるでしょ、見れば!」
「だよな」
何でオルガはこうもあからさまに敵意を隠そうともしないのか。
態度が悪いから、学院では猫を被っていただけでこれが地なんだろうが……。
それにしたって、口が悪いにも程があると思うんだ。
「試練はあれを倒すんだよな?」
「そうよ。同じことを何度も言わせないでくれる?」
「んーが」
でかいの……スリーパーからは何とも言えない同情に似た視線を送られた気がする。
こいつはこのマシンガン口撃してくる性悪と行動していたみたいだから、仲間意識ってやつか?
しかし、そうじゃない。
そこが問題じゃないぞ。
「どうやって、戦うんだよ。武器がないぞ」
「バ~カ! あるわよ。ない人は作るのよ。それも試練ってことね。現地調達が基本なのは三歳児でも知ってるわよ? あとは己の肉体を信じれば、いいんじゃない?」
なんてヤツだ。
悪魔だ。
魔女だ。
目の前のエビ野郎と後ろの魔女。
敵だらけじゃないか。
待て、冷静になるんだ。
スリーパーは大きなナップザックを背負っているだけで手ぶら。
ならば、オルガが手に持っているのが武器ってことか?
いや……。
それ、あのエビ野郎の腕だよな?
腕を先端部分にして、骨と組み合わせただけだな……。
マジか。
いや、マジなんだろうな。
少なくともエビ野郎は俺達を見逃してくれそうには見えない。
目の前のディナーを前に舌なめずりしているんだ、こいつは……。
しゅうしゅうという耳障りな音は呼吸音とは思えなかった。
それまで一切、そんな音はしていなかったからだ。
わざと音をさせているんだ!
あいつにとって、俺達は獲物ってことか。
「何だよ、あれ?」
「あれはあれよ? あれを狩るのが試練って訳。理解した?」
「お、おう」
「んが!」
あれ。
俺達に向けて、威嚇するように耳障りな音を立てるそいつはありえない生き物に見えた。
魔物と呼ばれる生物は、確かに野生動物とは一線を画す存在だと思う。
野生動物ではありえない不思議な生態や見た目をしたものが多い。
そんな魔物と小さい頃から、追いかけっこをしていた俺だ。
だが、そいつはどう考えてもおかしいんだ。
ここは陸だろう?
何で水中にいるはずの生物――エビが普通に動いているんだ?
おまけに大きくないか。
俺と同じくらいでかいんだが!
エビはだいたい、直立して動く生き物だったか……。
「さすがにあんたでもあれは見たこと無いんだ? へぇ」
「だから、あれは何だよ!」
「ブラックタイガー」
「何だ、それ? 黒い虎? 何で北の言葉で呼ばれているんだ?」
「そんなこと知らないわよ。はい、はい。お喋りしていたら、死ぬわよ」
ああ、そういうことか。
黒い虎の意味も何となく、分かった。
灰色の体色をしていて、虎の黒い縦縞を思わせる黒っぽい模様があるからだろう。
それに虎というだけあって、エビとは思えない口をしていた。
ダラダラと涎を垂らす口にはびっしりと鋭い牙が生えている。
あれで俺達をムシャムシャと食べる気か?
しかもあの涎、おかしいだろ……。
地面に滴り落ちると白煙が出ているんだが。
「あれの体液って、もしかして、もしかするのか?」
「あんた、バカなの? 見れば分かるでしょ、見れば!」
「だよな」
何でオルガはこうもあからさまに敵意を隠そうともしないのか。
態度が悪いから、学院では猫を被っていただけでこれが地なんだろうが……。
それにしたって、口が悪いにも程があると思うんだ。
「試練はあれを倒すんだよな?」
「そうよ。同じことを何度も言わせないでくれる?」
「んーが」
でかいの……スリーパーからは何とも言えない同情に似た視線を送られた気がする。
こいつはこのマシンガン口撃してくる性悪と行動していたみたいだから、仲間意識ってやつか?
しかし、そうじゃない。
そこが問題じゃないぞ。
「どうやって、戦うんだよ。武器がないぞ」
「バ~カ! あるわよ。ない人は作るのよ。それも試練ってことね。現地調達が基本なのは三歳児でも知ってるわよ? あとは己の肉体を信じれば、いいんじゃない?」
なんてヤツだ。
悪魔だ。
魔女だ。
目の前のエビ野郎と後ろの魔女。
敵だらけじゃないか。
待て、冷静になるんだ。
スリーパーは大きなナップザックを背負っているだけで手ぶら。
ならば、オルガが手に持っているのが武器ってことか?
いや……。
それ、あのエビ野郎の腕だよな?
腕を先端部分にして、骨と組み合わせただけだな……。
マジか。
いや、マジなんだろうな。
少なくともエビ野郎は俺達を見逃してくれそうには見えない。
目の前のディナーを前に舌なめずりしているんだ、こいつは……。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる