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第一章 セラフィナ十二歳
第19話 悪妻、心配される
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独特の喋り方と見た目のインパクトに圧倒されたけど、内容は特にあってないようなものだ。
『はーい、いいですかー、人とは支え合って生きるものでーす』から、始まった挨拶は自己紹介というよりは道徳の授業に近いものがある。
周囲をそれとなく窺うと魂が抜けたような表情になっている子がちらほら、いるようだ。
精神力の削られ方が並じゃないのよ。
担任のオローチョ・ファスティ先生。
油断のならない人……。
私の記憶にあんな先生はいなかったものね。
その後、皆で自己紹介をする、という流れにはならなかった。
同級生は仲間というより、ライバルに近いせいだろうか。
蹴落としたり、嫌がらせをしたりといったあからさまに足を引っ張ることはないんだけど、必要以上に親しくなろうと動く子はそう、いないのだ。
私はもう一度、経験してる学園での生活になる。
お子様達のかわいらしい心理戦にはこれっぽちも興味がない。
モデストが入学する二年後までに心の通じ合う友人を作る。
これが私の目的だ。
その点でシルビアと知り合えた意味は非常に大きい。
ただ、彼女は必要以上に近付いてくる。
戸惑いの方が大きかったりするが……。
シルビアのは心の距離を近付けるというよりも物理的な距離が近すぎるのだ。
肉親とのスキンシップしか、なかった私には刺激が強い!
「……そんな感じなの」
学園で起こった出来事を掻い摘んで説明するとナル姉とマテオ兄が何だか、難しい顔をしている。
そんな顔になるほど、深刻な話だったかな。
確かにあのピンク頭の相手をするのだけは面倒そうではあるけど。
「それでセナ。シルビアという子は大丈夫そうなのか?」
「マテオは心配しすぎなのよ。セナが見た夢でも知っている子なんでしょ。平気じゃないの?」
「あ……うん、平気だと思うわ。話した感じでは悪い子じゃなかった」
ちょっとスキンシップが激しいけど、とは言わないことにしておく。
両親もだけど、この二人も私への過保護が過ぎるのだ。
スキンシップが情熱的なのと距離の近さ以外は普通にいい子だと思う。
それは間違いない。
「ふむ。ではその得体の知れない少女の方が問題ありそうか」
「その子は夢に出てきた?」
「夢でも見たことがない子だったわ。私のことを嫌いみたいだし、何か、敵対視されてるようなの」
「ふむ、なるほどな」
「五級クラスってことは……ヒントになりそうね」
二人には前世での出来事を未来を夢で見た予知夢みたいなものだと説明している。
それでも荒唐無稽の話だとは思うんだけど、信じてくれた。
ここまで心配してくれるなんて、思ってもいなかっただけに嬉しい。
「五級なのが不満だったみたい。一人で大騒ぎしていたわ」
「ますます、良く分からない子だな」
「そうね。分からない以上、下手に動かない方がいいと思う。セナ。学園ではくれぐれも一人になっちゃ、駄目。分かった?」
「は、はい。ナル姉。でもクラスが違うから、大丈夫じゃないの?」
成績順でクラス分けされて、クラスが違うと教室もそれぞれ、別区画になるのよね。
だから、違うクラスの子とはあまり、交流が出来ないのだ。
ピンク頭は五級だから、顔を合わせることはまず、ないはず。
「それでもなのよ。その子は絶対、危ない子だからね? 最近、多いらしいのよ。ロマンス小説の主人公と自分を重ね合わせて、現実と虚構の区別がつかなくなるっていう心の病。修道院もその手の子が増えてて、困っていたくらいだから」
「そうなの? 小説と……怖い話があるのね」
「つまり、気を付けるに越したことはないということだ」
「はい……気を付けますわ」
知らなかったわ。
そんな病気が増えていたなんて、初耳かも。
これもまさか、私が変えてしまったせいなのかしら?
『はーい、いいですかー、人とは支え合って生きるものでーす』から、始まった挨拶は自己紹介というよりは道徳の授業に近いものがある。
周囲をそれとなく窺うと魂が抜けたような表情になっている子がちらほら、いるようだ。
精神力の削られ方が並じゃないのよ。
担任のオローチョ・ファスティ先生。
油断のならない人……。
私の記憶にあんな先生はいなかったものね。
その後、皆で自己紹介をする、という流れにはならなかった。
同級生は仲間というより、ライバルに近いせいだろうか。
蹴落としたり、嫌がらせをしたりといったあからさまに足を引っ張ることはないんだけど、必要以上に親しくなろうと動く子はそう、いないのだ。
私はもう一度、経験してる学園での生活になる。
お子様達のかわいらしい心理戦にはこれっぽちも興味がない。
モデストが入学する二年後までに心の通じ合う友人を作る。
これが私の目的だ。
その点でシルビアと知り合えた意味は非常に大きい。
ただ、彼女は必要以上に近付いてくる。
戸惑いの方が大きかったりするが……。
シルビアのは心の距離を近付けるというよりも物理的な距離が近すぎるのだ。
肉親とのスキンシップしか、なかった私には刺激が強い!
「……そんな感じなの」
学園で起こった出来事を掻い摘んで説明するとナル姉とマテオ兄が何だか、難しい顔をしている。
そんな顔になるほど、深刻な話だったかな。
確かにあのピンク頭の相手をするのだけは面倒そうではあるけど。
「それでセナ。シルビアという子は大丈夫そうなのか?」
「マテオは心配しすぎなのよ。セナが見た夢でも知っている子なんでしょ。平気じゃないの?」
「あ……うん、平気だと思うわ。話した感じでは悪い子じゃなかった」
ちょっとスキンシップが激しいけど、とは言わないことにしておく。
両親もだけど、この二人も私への過保護が過ぎるのだ。
スキンシップが情熱的なのと距離の近さ以外は普通にいい子だと思う。
それは間違いない。
「ふむ。ではその得体の知れない少女の方が問題ありそうか」
「その子は夢に出てきた?」
「夢でも見たことがない子だったわ。私のことを嫌いみたいだし、何か、敵対視されてるようなの」
「ふむ、なるほどな」
「五級クラスってことは……ヒントになりそうね」
二人には前世での出来事を未来を夢で見た予知夢みたいなものだと説明している。
それでも荒唐無稽の話だとは思うんだけど、信じてくれた。
ここまで心配してくれるなんて、思ってもいなかっただけに嬉しい。
「五級なのが不満だったみたい。一人で大騒ぎしていたわ」
「ますます、良く分からない子だな」
「そうね。分からない以上、下手に動かない方がいいと思う。セナ。学園ではくれぐれも一人になっちゃ、駄目。分かった?」
「は、はい。ナル姉。でもクラスが違うから、大丈夫じゃないの?」
成績順でクラス分けされて、クラスが違うと教室もそれぞれ、別区画になるのよね。
だから、違うクラスの子とはあまり、交流が出来ないのだ。
ピンク頭は五級だから、顔を合わせることはまず、ないはず。
「それでもなのよ。その子は絶対、危ない子だからね? 最近、多いらしいのよ。ロマンス小説の主人公と自分を重ね合わせて、現実と虚構の区別がつかなくなるっていう心の病。修道院もその手の子が増えてて、困っていたくらいだから」
「そうなの? 小説と……怖い話があるのね」
「つまり、気を付けるに越したことはないということだ」
「はい……気を付けますわ」
知らなかったわ。
そんな病気が増えていたなんて、初耳かも。
これもまさか、私が変えてしまったせいなのかしら?
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