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第一章 セラフィナ十二歳
第17話 悪妻、誼を通じる
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「え、ええ。だから、シルビアと呼んでもいいかしら? 私のこともセラフィナ……は長いから、セナと呼んでかまわないですわ」
私がそう言うとシルビアは大きな目をさらに見開くもんだから、きれいなアメジストの瞳が落ちちゃいそう。
何もそんなに驚かなくてもいいと思うんだけど。
「はい、喜んで。セナ様」
「様はいらなくてよ?」
そして、握られた手が痛い。
シルビアって、力加減を知らない可能性があるわね。
魔法の使い手の中には無意識で身体強化使っちゃう場合があるから。
「は、はい。セナ」
「何、シルビア?」
あれ? どうして、見つめ合ってる訳?
しかも頬を桜色に染める必要性がないよね。
顔も近すぎでは?
「あのシルビア。手が痛いんですけど」
「あっ、す、すみません。わたしとしたことが」
慌てて、手を放してくれたシルビアはあわあわとしていて、かわいらしい。
見た目がとても、しっかりしていて凛とした感じの女の子だから、こういう表情の意外性とのギャップで愛らしさが増すのだろう。
しかし、まさか、将来の縁戚と学園でお友達になるとは予想していなかったわ。
ふと思い返してみる。
学園時代から、私にはまともな友人がいなかったと思う。
いや、友人ではなかったのだ。
私と誼を通じることで恩恵を得られると近づいてきただけの打算的な関係に過ぎなかったんだろう。
その証拠に私が追い詰められた時、手を差し伸べてくれた者は誰一人いなかった。
そうね。
折角、神様がくれた機会だ。
シルビアとは打算的なものではなく、互いに尊重し合えるいい関係を築けたら、嬉しい。
「シルビアのお陰で痛くなくなったし、クラス分けを確認しに行きましょうか?」
「え? あっ、はい。行きましょう、セナ」
言い出したのは私なのに手首を掴まれ、ぐいぐい引っ張られている。
まぁ、いいわ。
これくらい強引でも何となく、許せる気がしてきたわ。
友人関係って、これくらい許してあげるものよね。
「えっと、私は一級クラスみたい。シルビアは?」
「わたしも一級ですわ。嬉しいですわ。セナと同じクラスで!」
シルビアは私の手をまた、握るとぶんぶんと上下に勢いよく振る。
喜怒哀楽が激しい。
そして、見た目以上にリアクションの動作が大きいのだ。
分かりやすい子なのかもしれない。
嫌いじゃない。
むしろ、ここまではっきりと感情を出してくれるのが嬉しいわ。
前世では常に相手の心の読み合いで表面上の付き合いだけ。
私の心が荒んでいったのはモデストのせいだけじゃなかったんだわ。
こういう心のバランスが大事だったのよ……。
「きっー、あたしが五級って、おかしいわっ! 不正があったんじゃないっ」
このキンキンするような声はもしかして、あのピンク頭では!?
「何か、騒いでらっしゃる方がおられるようですね」
「そ、そうみたいね。あは。あはは」
「セナ、顔色が良くありませんけど、大丈夫ですか?」
「あのね、シルビア。実は……」
背中と膝をなぜ、怪我したのかとシルビアにかいつまんで説明するとシルビアはまるで自分のことのように憤っている。
さっき、友人として付き合い始めたばかりなのにここまで思ってくれるなんて、嬉しいような、恥ずかしいような。
何だか、心がムズ痒くなってくるわね。
「ですが、クラスが違うようですし、大丈夫ですよ」
「そうだといいんだけど。シルビアもいるし、頼りにしてるわ」
「まぁ。嬉しいですわ。わたしにお任せくださいね」
ふんすと鼻息荒く、胸を強調するように反らして見せる姿もとても愛らしいわね。
十二歳にしてはちょっと育ちすぎな気がするけど。
私は……うん、まだ成長途中だから、これからだから。
件のピンク頭に気付かれないうちにシルビアと教室に向かうことにした。
なぜか、分からないけど彼女と手を繋いで。
友人って、きっとこういうものなんだろう。
私がそう言うとシルビアは大きな目をさらに見開くもんだから、きれいなアメジストの瞳が落ちちゃいそう。
何もそんなに驚かなくてもいいと思うんだけど。
「はい、喜んで。セナ様」
「様はいらなくてよ?」
そして、握られた手が痛い。
シルビアって、力加減を知らない可能性があるわね。
魔法の使い手の中には無意識で身体強化使っちゃう場合があるから。
「は、はい。セナ」
「何、シルビア?」
あれ? どうして、見つめ合ってる訳?
しかも頬を桜色に染める必要性がないよね。
顔も近すぎでは?
「あのシルビア。手が痛いんですけど」
「あっ、す、すみません。わたしとしたことが」
慌てて、手を放してくれたシルビアはあわあわとしていて、かわいらしい。
見た目がとても、しっかりしていて凛とした感じの女の子だから、こういう表情の意外性とのギャップで愛らしさが増すのだろう。
しかし、まさか、将来の縁戚と学園でお友達になるとは予想していなかったわ。
ふと思い返してみる。
学園時代から、私にはまともな友人がいなかったと思う。
いや、友人ではなかったのだ。
私と誼を通じることで恩恵を得られると近づいてきただけの打算的な関係に過ぎなかったんだろう。
その証拠に私が追い詰められた時、手を差し伸べてくれた者は誰一人いなかった。
そうね。
折角、神様がくれた機会だ。
シルビアとは打算的なものではなく、互いに尊重し合えるいい関係を築けたら、嬉しい。
「シルビアのお陰で痛くなくなったし、クラス分けを確認しに行きましょうか?」
「え? あっ、はい。行きましょう、セナ」
言い出したのは私なのに手首を掴まれ、ぐいぐい引っ張られている。
まぁ、いいわ。
これくらい強引でも何となく、許せる気がしてきたわ。
友人関係って、これくらい許してあげるものよね。
「えっと、私は一級クラスみたい。シルビアは?」
「わたしも一級ですわ。嬉しいですわ。セナと同じクラスで!」
シルビアは私の手をまた、握るとぶんぶんと上下に勢いよく振る。
喜怒哀楽が激しい。
そして、見た目以上にリアクションの動作が大きいのだ。
分かりやすい子なのかもしれない。
嫌いじゃない。
むしろ、ここまではっきりと感情を出してくれるのが嬉しいわ。
前世では常に相手の心の読み合いで表面上の付き合いだけ。
私の心が荒んでいったのはモデストのせいだけじゃなかったんだわ。
こういう心のバランスが大事だったのよ……。
「きっー、あたしが五級って、おかしいわっ! 不正があったんじゃないっ」
このキンキンするような声はもしかして、あのピンク頭では!?
「何か、騒いでらっしゃる方がおられるようですね」
「そ、そうみたいね。あは。あはは」
「セナ、顔色が良くありませんけど、大丈夫ですか?」
「あのね、シルビア。実は……」
背中と膝をなぜ、怪我したのかとシルビアにかいつまんで説明するとシルビアはまるで自分のことのように憤っている。
さっき、友人として付き合い始めたばかりなのにここまで思ってくれるなんて、嬉しいような、恥ずかしいような。
何だか、心がムズ痒くなってくるわね。
「ですが、クラスが違うようですし、大丈夫ですよ」
「そうだといいんだけど。シルビアもいるし、頼りにしてるわ」
「まぁ。嬉しいですわ。わたしにお任せくださいね」
ふんすと鼻息荒く、胸を強調するように反らして見せる姿もとても愛らしいわね。
十二歳にしてはちょっと育ちすぎな気がするけど。
私は……うん、まだ成長途中だから、これからだから。
件のピンク頭に気付かれないうちにシルビアと教室に向かうことにした。
なぜか、分からないけど彼女と手を繋いで。
友人って、きっとこういうものなんだろう。
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