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くろいゆきと映画の話・とある遊園地ホラー

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 皆様、ごきげんようですわ~。

 今回、取り上げる映画は『としまえん』でしてよ。
 二〇二〇年に閉園した遊園地・としまえんを舞台にしたホラー映画で閉園の前年に公開された一種のメモリアル作品ですわね。

 としまえんには都市伝説となっている”としまえんの呪い”なる不可解な噂が広まっており、冒頭のシーンではそれを試そうと動画配信する三人の男女の姿が描写されてますの。
 字幕が流れていくスタイルなので恐らくはニコニコ動画の実況配信ぽい雰囲気を出していると思われるこのシーンなのですけど、コテコテの心霊バラエティよろしく、呪いの信憑性を探るべく奇妙な洋館の扉をノックしたところ、画面にノイズが走り……
 そこから先は配信する者が誰もいなくなったという心霊バラエティの本当にあった怖い話テイストでプロローグに幕が下りますの。
 いわゆる”としまえんの呪い”のお披露目といったところかしら?

 プロローグが終わるとようやく主人公の登場となりますわ。
 海外留学が決まった女子大生の辻本早希が主人公で、彼女には幼馴染で同級生だった小林由香が高校時代に謎の失踪を遂げたというトラウマになっている過去がありますの。
 留学で晴れやかなはずの気持ちがどこか、晴れない早希は由香が失踪して以来、引っ越してしまいいなかったはずの小林家に人の姿があることに気付き、近づくとその正体は何と”売家にするので片付け”に来た由香の両親。
 どこか不気味な感じが否めない両親の姿に何か不安を感じる早希ですけど、視聴者もここはどこか釈然としないものを感じると思いますわ。
 特に父親の方が不気味でまるで操られているのか、死んでいるみたい……。
 これがなぜなのかと種明かしがされるのは物語のラストなので実は伏線になってますのよね。

 由香の母親から、としまえんの入場チケットを貰った早希は、高校時代の友人ら(何と偶然なのかしら? 早希を入れて!)と留学前の思いで作りも兼ねて、としまえんへと向かうことになりますの。
 このとしまえんこそ、早希と由香が幼い頃に遊んでいた因縁の地でもあり、これから始まる恐ろしいショーの舞台。

 そして、ホラー映画のもはや様式美とも言うべき、やらなければいいのに! を自ら、やっていくスタイルですわ。
 リーダー格の香西杏樹の発案で”としまえんの呪い”を試してみることになり、そんなものがあるはずないと鼻から馬鹿にした態度で件の洋館の扉をノックしたところ……
 第一の犠牲者・樋口かやの誕生ですわ~🌿
 呪いにかかった者は秘密の場所に連れていかれるの意味はどうやら、この世ではない別の次元に迷い込んでしまう。
 かやからは友人の姿が見えるのに早希達からは一切、かやが見えない。

 消えたかやがどうせ悪ふざけをしているだけと考えた彼らは、かやを探すもののお化け屋敷の中で出てきたかやは既に人ではなくなっており……
 パニック状態に陥った佐藤亜美が第二の犠牲者に確定ですわ。
 呪いは返事をした者を秘密の場所に連れて行く。
 亜美は恐怖のあまり一人ぼっちになった時、つい返事をしてしまったのでもう彼女は……
 「もう帰る」と母親に連絡し、逃げようとする亜美でしたけどそれも叶わず、彼女も異世界に囚われることに。

 残ったのは早希、杏樹。
 それに呪いを試そうとする友人を止めていた横峯千秋の三人だけ。

 ここまでに分かったことは杏樹のグループが早希をグループに入れようと画策し、早希としか仲良くしない人見知りが強すぎる由香に対して、いじめに近い行為を行っていたこと。
 早希がいないところで由香に”としまえんの呪い”を撮影してこいと理不尽な要求を出し、都市伝説に詳しく才女キャラな千秋が詳しく解説を入れた地図を渡したのですけど……

 そう。
 この呪いで一人、また一人消えていく真相は呪いを試した結果、異世界に囚われ人ではなくなった由香による復讐劇だったのですわ~。
 一見、無関係のように見えた千秋も地図を渡す際、わざと呪いを解く方法を教えなかったことで由香の恨みを買っており、「何で教えてくれなかったの?」であちらの世界へご招待に……。
 こうして、残ったのが早希と杏樹の二人だけ。
 千秋の情報で呪いを解いて、異世界のとしまえんを抜けるにはメリーゴーランドに乗らなくてはいけないと急ぐ二人の前に絶望的なお知らせ。
 メリーゴーランドに電源が来ていなかったのですわ~🌿

 すぐに管理室に向かい、電源を通さなくてはいけない! とまるでホラーゲームをやらされている展開ですわね。
 そんな二人の前についに姿を現した由香の精神攻撃に早希と杏樹のSAN値は既に〇よ! になっており……。
 作品の評価はそれほど芳しい物ではありませんけど、ホラーとしての定番要素は満載で怖さはないものの楽しめるとは思いますわ~。

 さて、ここからは視聴したい方は見ない方がいいネタバレになりましてよ?





 管理室でメリーゴーランドの電源を入れることに成功した二人ですけれど、さらなる衝撃的な事実が判明ですの。
 管理室には由香が異世界に取り込まれ、一人ぼっちで孤独な心のままに段々と病んでいく様子が刃物で刻まれた文字で明らかになり……。
 さらにブルーシートで隠された明らかに触ってはいけない謎の膨らみに敢えて、挑戦する早希はもしかして、SAN値チェックでファンブルでも出したのではなくって? と思えるくらいに常軌を逸してますわね。
 何とブルーシートの下には男女の白骨死体が……。
 どうやら白骨の正体は由香の両親。
 寂しさのあまり両親を異世界に引きずり込んだ由香によって、既にこの世の人ではなかったという驚愕の真相ですわね。
 つまり、冒頭のシーンで早希にとしまえんのチケットを渡した母親も不気味に立っていた父親も生きた人ではなかった!
 これはちょっと涼しくなれましたわ~。

 杏樹は由香の手で管理室に引きずり込まれ、恐らくは非業の最期を……。
 この映画は恐らく演出としてなのでしょうけど、被害者が直接的にどういう扱いをされたのかと描写しませんの。
 だから、早希の友人達の最期も恐怖に引き攣った叫び声などだけ。
 これが良かったと思いますの。
 ホラー好きな界隈ではそういうシーンが見たい方もおられるので好き嫌いは出るかもしれませんけど。

 さて、悲鳴を上げながらも早希はメリーゴーランドへと辿り着き、お馬さんに乗ってさぁ、脱出! といった時の表情でこれまで先に抱いていた違和感が決定的になった気がしますわ。
 これまで八方美人な対応で誰にでもいい顔を見せている早希。
 主人公として、ヒロインとして、隙の無さそうでいて偶に由香のことを憂いているような表情も見せる。
 でも、何だか八方美人過ぎて、非常に胡散臭いとも言えますのよね。
 それがメリーゴーランドで逃げられると分かった途端に見せた何とも言えない愉悦の表情が、とても性格がいいとは思えないものでしてよ?

 しかし、由香が「ずっ友だよ」と幼少期に約束していたのに裏切った早希を許すはずもなく、落ちていた写真を拾おうとお馬さんを降りて、手を伸ばした早希の腕は由香に捕まって……

 これでバッドエンドで終わりと思いきやまだ終わっていませんのよ。
 由香に捕まり、終わったと思った早希が目覚めたのはとしまえんの救護室。
 窓の外では何の変哲もない日常のとしまえんが描かれており、まるで夢オチと思わせておいてからの……暗転で由香さんがやってきて早希も異世界のとしまえんに囚われたのでした! というオチですわ~🌿

 この早希、実はとんでもなく性格が悪く、杏樹のグループからハブられており、いじめらている由香に手を差し伸べて助けるどころか、突き放して止めを刺していたことが判明ですの。
 この事実をラストまで隠していた演出が中々に良かったですわね。
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