薔薇の姫は夕闇色に染まりて

黒幸

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第二部 偽りから生まれる真実

第54話 小さき者の誤算

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(パミュ視点)

 パミュ、知ってる。
 大きな男と女が組んずほぐれつするって、知ってる。
 パラケ・ルッスースの記憶がちょっとだけ、戻ったから知ってる。
 
 パパとママ、それをしようとしてた。
 間違いない。
 パミュ、賢いから、分かる。

 パミュ、聞こえる。
 パパとママの声、聞こえる。
 他の人の声、聞こえない。
 パパとママのだけ、聞こえる。

 便利なようで便利じゃない。
 二人とも秘密がたくさん。
 パミュにも秘密ある。

 魚よりお肉が好き。
 お風呂嫌い。
 たくさん、たくさん!

 でも、二人の秘密は変。

 パパはむっつり。
 パミュ、知ってる。
 むっつりだけど、パパ知らないって知ってる。

 パパがとにかく、上の方の町からやってきた人でホントの名前、違う。
 考えてることと言ってることが違うのはいつも。
 それでもパミュにもママにも優しい。
 これ、ホント。
 パパはカッコいい。
 ワクワクする。

 ママはパミュに優しくて、強い。
 でも、たまに考えてること、怖い。
 ママ、すんごくズレてる。
 パミュよりも知らないかもしんない。
 だから、ママはかわいい。



 パミュ、頑張ってママを守る。
 ママ、知識ない。
 パパ、経験ない。
 パミュ、頑張るしかない。
 シャルルも手伝ってくれる。

 ママをいじめるのなら、パパでも「めっ」する!

「パパ。ママいじめた?」
「ち、違うぞ。パミュ。これはいじめたのではなくてだな」
「いいわけよくない」

 パパはママの部屋でパミュに隠れて、悪いことしようとしてた。
 言い訳までするのよくない。

 シャルルがパミュの代わりにパパを止めてくれる。
 シャルル、いい子。
 ほら、ちゃんと……。



 そして、パミュ、お風呂でゴシゴシ、洗われてる。
 頭もザッブーンで泡がたくさんで気持ちいい。

「パミュさん。大丈夫ですからね」

 シャルルもお風呂で一緒。
 シャルルはパパを止めて、名誉の戦死を遂げた。
 おててとおめめが取れちゃった。

「まずはキレイキレイにしましょう」
「すぃ」

 お風呂嫌いだけど、ママが洗ってくれるのは好き。
 一緒にお湯につかって、お歌を歌うのも好き。
 今日はシャルルも一緒だ!

「あれ? おかしいですね。んー?」
(ちょっと力を入れて、洗っただけなのにもう一本の腕が外れてしまいました……。でも、大丈夫です。突き刺したり、切断するのは得意です。裁縫なんて、へっちゃらです)

 ママ、力入れすぎ。
 パミュのおててが両方なくなっちゃった。
 ホントにシャルル、なおる?

「うわ。きちゃない」
「かなり汚れていたみたいですね。もっとキレイにしましょう」
(これは綺麗にしがいのある汚れ具合です! どこまで落ちるのか、楽しみ♪)

 ママ、本気だ。
 目つきが怖い……。

 シャルルをキレイキレイしたお水が黒くなってる。
 かなり、ばっちっち。
 ホントは黒猫さんじゃなくて、灰色猫さんだった。

「ふぅ。綺麗になりました。アッシュブルーでビロードのようですね」
「すぃ」

 ママ、やりすぎ。
 シャルル、キレイになった。
 でも、おててと足が全部、取れちゃった。

「ま、任せてください。猫ちゃんは私が直してみせます!」
「……すぃ」

 ママの鼻息、すんごい荒い。
 はりきってるけど、ホントに大丈夫?

 あとタオル、ちゃんと巻いて。
 パミュと違って、ママのはおっきいからあぶない。

 ママ、気付いてない。
 パパが見てないようでしっかりと見てるの、気付いてない。
 パミュ、お見通し。

(アリーさん、無防備すぎじゃないか。いかんいかん。揺れている……いや、違うぞ。そうじゃないだろう、アーベント)

 パパは難しい本を読んでるふりしてるだけだって、パミュ知ってる。
 パパ、むっつり。
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