48 / 73
第二部 偽りから生まれる真実
第41話 私は飲んだ
しおりを挟む
折角、早く終わったので買い物をしてから、帰ることにしました。
シルさんが「荷物は僕が持ちますよ」と気を遣ってくれるので本当に夫婦みたいです。
夫婦なのですけど、本物の夫婦ではないのに……。
契約結婚に過ぎないのにこんなにも大事にされていいのでしょうか。
胸の中で一つの疑念が湧いてきているのを否定出来ません。
シルさんの優しさや気遣いも外面を良く見せる為にしているだけ。
本当は私のことなんて、何とも思っていないのでは?
そう考えると妙に気持ちが沈んできます。
「まだ、どこかが痛んだり、調子が悪いですか?」
「あ……いえ、そういう訳ではありません。何でもないんです」
「そうですか」
それなのにシルさんはずるいです。
それではまるで、私のことを気にかけていて、様子がおかしいのにすぐに気が付いたように見えます。
違いますよね?
勘違いをしたら、ダメ。
でも、もしかしたら、本当に私のことを考えてくれているのかも……。
そんなことはありえないのかしら?
契約であって、偽りの関係であって。
だけど顎に手をやり、考え事に耽るシルさんの姿は絵になっていて。
素敵でかっこよくて。
私には勿体ない人にしか、思えない。
互いに利があるから。
契約しただけの関係に過ぎない。
それだけのはず……。
「本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。ちょっと考え事をしてしまっただけで……」
「僕でよければ、悩みを……余計なお世話だったかな」
えぇぇぇ!?
急に手を握られて、真っ直ぐに見つめられたのでびっくり。
シルさんの紫水晶のように澄んだ瞳はとても、きれいで引き込まれそう。
そこに反射している自分の顔が映っていたら、勘違いが加速しそうでまずい……。
「ほ、本当に大丈夫です。こ、こ、このトミャトも買いましょう!?」
慌てて、顔を逸らして話題を変えたけど、不自然だったかもしれません。
火照ったように顔が熱くて、顔が赤くなっているのがバレたかも……。
もしかして、私がシルさんのことを本当に好きになっている?
好き?
私が男の人を?
でも……シルさんのことが気になっているのは事実。
さらに驚くことが待っていました。
帰宅するとパミュさんとティナが、実の姉妹のように打ち解けていたのです。
思わず、シルさんと顔を見合わせて、吹き出してしまったほどでした。
何があったのでしょうか?
しかし、早くティナのように子供の心に寄り添える人のいる保育所を探す必要があります……。
その前にパミュさんの教育方針について、シルさんとちゃんと話し合わないといけません。
パミュさんがお休みになってから、ゆっくりと話し合えばいいんです。
ちょっと遅めの昼食はシルさんとティナが調理を担当しました。
どこか、疎外感を感じましたが、仕方ないですよね。
私が作った料理はお世辞にも人にお出し出来る代物ではないですし。
こんなことでいいのでしょうか?
いくら偽りの関係と言っても妻としても母親としても役に立てているとは思えません……。
ティナは昼食をとってから、名残惜しそうにしながらも帰宅しました。
辻馬車の駅まで見送る途中、感情の機微に聡いティナは私が自信を失いかけていると気付いてしまったみたいです。
「大丈夫ですよぉ。先輩は前よりもかわいくなってますからぁ。もっと自信を持ってくださいよぉ」と慰めるように言葉をかけられました。
かえって、惨めなのはなぜでしょう。
賑やかな夕食が終わり、パミュさんをお風呂に入れて、寝支度が終わる頃にはあんなにも華やかに見えていたリビングは暗く、寂しく見えます。
まるで今の私の心みたいに……。
こういう時は甘い物をとって、気分を落ち着かせましょう。
本当はいけないことです。
寝る前に甘い物をとるなんて、あるまじきことなんです。
でも、バーのマスターから快気祝いとして、慈悲の代わりと果実ジュースをいただいたのです。
飲まないのは失礼にあたりますよね?
そうです。
飲みましょう。
ヤケ酒ならぬヤケジュースですが、いいんです。
「甘くて美味しい……あ、ありぇ?」
最近の果実ジュースは気分が高揚して、ほわほわしてくるものなんでしょうか。
一杯だけで終わらせるつもりがついつい、美味しくて何杯も飲んだせいか、とても楽しいです。
楽しくて、服を脱ぎたいくらい♪
「アリーさん。まだ、寝てなかったんですね。何を飲んで……え?」
「くおりゃあ。ひるはん。ほりあえずぅ。ひょこにしゅわりなしゃい」
シルさんに双子の御兄弟がいたのでしょうか?
そっくり!
あはははは。
今なら、何でも言えるかも♪
シルさんが「荷物は僕が持ちますよ」と気を遣ってくれるので本当に夫婦みたいです。
夫婦なのですけど、本物の夫婦ではないのに……。
契約結婚に過ぎないのにこんなにも大事にされていいのでしょうか。
胸の中で一つの疑念が湧いてきているのを否定出来ません。
シルさんの優しさや気遣いも外面を良く見せる為にしているだけ。
本当は私のことなんて、何とも思っていないのでは?
そう考えると妙に気持ちが沈んできます。
「まだ、どこかが痛んだり、調子が悪いですか?」
「あ……いえ、そういう訳ではありません。何でもないんです」
「そうですか」
それなのにシルさんはずるいです。
それではまるで、私のことを気にかけていて、様子がおかしいのにすぐに気が付いたように見えます。
違いますよね?
勘違いをしたら、ダメ。
でも、もしかしたら、本当に私のことを考えてくれているのかも……。
そんなことはありえないのかしら?
契約であって、偽りの関係であって。
だけど顎に手をやり、考え事に耽るシルさんの姿は絵になっていて。
素敵でかっこよくて。
私には勿体ない人にしか、思えない。
互いに利があるから。
契約しただけの関係に過ぎない。
それだけのはず……。
「本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。ちょっと考え事をしてしまっただけで……」
「僕でよければ、悩みを……余計なお世話だったかな」
えぇぇぇ!?
急に手を握られて、真っ直ぐに見つめられたのでびっくり。
シルさんの紫水晶のように澄んだ瞳はとても、きれいで引き込まれそう。
そこに反射している自分の顔が映っていたら、勘違いが加速しそうでまずい……。
「ほ、本当に大丈夫です。こ、こ、このトミャトも買いましょう!?」
慌てて、顔を逸らして話題を変えたけど、不自然だったかもしれません。
火照ったように顔が熱くて、顔が赤くなっているのがバレたかも……。
もしかして、私がシルさんのことを本当に好きになっている?
好き?
私が男の人を?
でも……シルさんのことが気になっているのは事実。
さらに驚くことが待っていました。
帰宅するとパミュさんとティナが、実の姉妹のように打ち解けていたのです。
思わず、シルさんと顔を見合わせて、吹き出してしまったほどでした。
何があったのでしょうか?
しかし、早くティナのように子供の心に寄り添える人のいる保育所を探す必要があります……。
その前にパミュさんの教育方針について、シルさんとちゃんと話し合わないといけません。
パミュさんがお休みになってから、ゆっくりと話し合えばいいんです。
ちょっと遅めの昼食はシルさんとティナが調理を担当しました。
どこか、疎外感を感じましたが、仕方ないですよね。
私が作った料理はお世辞にも人にお出し出来る代物ではないですし。
こんなことでいいのでしょうか?
いくら偽りの関係と言っても妻としても母親としても役に立てているとは思えません……。
ティナは昼食をとってから、名残惜しそうにしながらも帰宅しました。
辻馬車の駅まで見送る途中、感情の機微に聡いティナは私が自信を失いかけていると気付いてしまったみたいです。
「大丈夫ですよぉ。先輩は前よりもかわいくなってますからぁ。もっと自信を持ってくださいよぉ」と慰めるように言葉をかけられました。
かえって、惨めなのはなぜでしょう。
賑やかな夕食が終わり、パミュさんをお風呂に入れて、寝支度が終わる頃にはあんなにも華やかに見えていたリビングは暗く、寂しく見えます。
まるで今の私の心みたいに……。
こういう時は甘い物をとって、気分を落ち着かせましょう。
本当はいけないことです。
寝る前に甘い物をとるなんて、あるまじきことなんです。
でも、バーのマスターから快気祝いとして、慈悲の代わりと果実ジュースをいただいたのです。
飲まないのは失礼にあたりますよね?
そうです。
飲みましょう。
ヤケ酒ならぬヤケジュースですが、いいんです。
「甘くて美味しい……あ、ありぇ?」
最近の果実ジュースは気分が高揚して、ほわほわしてくるものなんでしょうか。
一杯だけで終わらせるつもりがついつい、美味しくて何杯も飲んだせいか、とても楽しいです。
楽しくて、服を脱ぎたいくらい♪
「アリーさん。まだ、寝てなかったんですね。何を飲んで……え?」
「くおりゃあ。ひるはん。ほりあえずぅ。ひょこにしゅわりなしゃい」
シルさんに双子の御兄弟がいたのでしょうか?
そっくり!
あはははは。
今なら、何でも言えるかも♪
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる