33 / 73
第一部 薔薇姫と夕暮れ
第30話 彼と彼女と出かけた
しおりを挟む
意識を失っていたのは三日間。
目が覚めてから、丸一日たっぷりと体を休めました。
これは半ば強制的なもの。
シルさんもパミュさんも私が、ちょっと何かをしようとしただけで止めるのだから。
「こんな感じですが、よろしいでしょうか?」
「よ、よろしいと思いますよ?」
髪留めを普段、使っていたヘアバンドから、リボンの飾りがついたカチューシャに変えました。
勿論、髪の色が珍しくて目立つので下ろさずにまとめてアップにしてあります。
服は裾丈が長く、膝下まであるワンピースを選びました。
淡い色合いのクリームイエローなので目立ちもしないし、地味という訳でもありません。
気になるのは少々、胸元と背中が空きすぎていて、大胆なデザインな点かしら?
シルさんも何だか、おかしな態度ですし、まずかったのでしょうか?
「ママ。それでいい。パパもそうおもてる」
「そ、そうなんですか、パミュさん?」
「うん。パミュ、かすこい。わかる」
よく分かりませんが、私よりも義父と娘としてそれなりに長い時間を過ごしているパミュさんが言うのですから、間違いないでしょう。
それから、私達三人が連れ立って、向かったのはパラティーノでもっとも大きな商店であるエ・ウンポ・カーロ百貨店。
まるで本物の夫婦と親子のようにパミュさんを真ん中にして、手を繋いで歩いているのですが、これも周囲から怪しまれないのが目的。
しかし、偽りの関係であっても私にはかけがえのないもの。
私にも家族はいた……と思います。
たまに夢で見るんです。
顔も朧気にしか、分かりません。
「ママ。どした?」
「何でもありませんよ」
ふと嫌なことを思い出しただけ。
こういうときはお仕事のことを考えましょう。
仕事着はフロントから支給されるので気にしたことがありません。
「出来れば、返り血が目立たない物が望ましいでしょうか」と言ったら、真っ黒なドレスしか、送られてこないだけ。
ただ、それだけのこと。
問題は何もありません。
黒いドレスであれば、どんなに返り血が飛んでも大丈夫なのだから!
「ママ……つよくいくろ」
手を繋いでいるパミュさんにとても、生温かい目を向けられたのですが……。
なぜでしょうか?
まずはパミュさんの普段着と外出着、礼服を買いに子供服の売り場へと向かいました。
男児服と女児服で分けられているだけではなく、インナーとアウターの売り場も別に設けられています。
見ているだけで日が暮れるのではないかと思えるほどに様々な商品が並んでいて、見ているだけでも楽しいです。
「うわぁ。凄く、広いんですね」
「アリーさんはあまり、来たことがないのですか?」
「は、はい」
あまりではなく、実は一度も来たことがないのは内緒です。
そんなことを言ったら、シルさんに嫌われてしまうかもしれません。
名義上だけであっても少しくらいは出来る女であるというアピールをしないと……。
でも、具体的に何をすれば、いいのでしょう。
「ママ……いくろ」
「え? ええ、また!?」
またも心の内を見透かされたような妙な感覚。
パミュさんの視線はなぜか、とても大人びてます。
不思議な感覚……。
パミュさんはまだ、幼いので自分でも簡単に着替えが出来るワンピースを主体に選び、シルさんがコーディネイトしました。
私とパミュさんが選ぶと日が暮れても終わりそうにないからです。
あれもいいし、これもいいと目移りするのが原因でしょうか。
少し、赤みがかった金髪に合う濃緑色や濃灰色のワンピースはかわいらしくて、パミュさんにピッタリと合っているのでさすがシルさんとしか、言いようがありません。
「次はアリーさんの服を選びますよ」
「えぇ!? わ、私はいいです。今の服でも十分……」
「約束しましたよ? 貴女をエスコートすると」
彼は実に卑怯です。
そんな言い方をされたら、断れないじゃない?
なんて、嘘。
本当はシルさんと服を選ぶのが、嬉しくて仕方がないのに……。
私ったら、馬鹿みたいですね。
目が覚めてから、丸一日たっぷりと体を休めました。
これは半ば強制的なもの。
シルさんもパミュさんも私が、ちょっと何かをしようとしただけで止めるのだから。
「こんな感じですが、よろしいでしょうか?」
「よ、よろしいと思いますよ?」
髪留めを普段、使っていたヘアバンドから、リボンの飾りがついたカチューシャに変えました。
勿論、髪の色が珍しくて目立つので下ろさずにまとめてアップにしてあります。
服は裾丈が長く、膝下まであるワンピースを選びました。
淡い色合いのクリームイエローなので目立ちもしないし、地味という訳でもありません。
気になるのは少々、胸元と背中が空きすぎていて、大胆なデザインな点かしら?
シルさんも何だか、おかしな態度ですし、まずかったのでしょうか?
「ママ。それでいい。パパもそうおもてる」
「そ、そうなんですか、パミュさん?」
「うん。パミュ、かすこい。わかる」
よく分かりませんが、私よりも義父と娘としてそれなりに長い時間を過ごしているパミュさんが言うのですから、間違いないでしょう。
それから、私達三人が連れ立って、向かったのはパラティーノでもっとも大きな商店であるエ・ウンポ・カーロ百貨店。
まるで本物の夫婦と親子のようにパミュさんを真ん中にして、手を繋いで歩いているのですが、これも周囲から怪しまれないのが目的。
しかし、偽りの関係であっても私にはかけがえのないもの。
私にも家族はいた……と思います。
たまに夢で見るんです。
顔も朧気にしか、分かりません。
「ママ。どした?」
「何でもありませんよ」
ふと嫌なことを思い出しただけ。
こういうときはお仕事のことを考えましょう。
仕事着はフロントから支給されるので気にしたことがありません。
「出来れば、返り血が目立たない物が望ましいでしょうか」と言ったら、真っ黒なドレスしか、送られてこないだけ。
ただ、それだけのこと。
問題は何もありません。
黒いドレスであれば、どんなに返り血が飛んでも大丈夫なのだから!
「ママ……つよくいくろ」
手を繋いでいるパミュさんにとても、生温かい目を向けられたのですが……。
なぜでしょうか?
まずはパミュさんの普段着と外出着、礼服を買いに子供服の売り場へと向かいました。
男児服と女児服で分けられているだけではなく、インナーとアウターの売り場も別に設けられています。
見ているだけで日が暮れるのではないかと思えるほどに様々な商品が並んでいて、見ているだけでも楽しいです。
「うわぁ。凄く、広いんですね」
「アリーさんはあまり、来たことがないのですか?」
「は、はい」
あまりではなく、実は一度も来たことがないのは内緒です。
そんなことを言ったら、シルさんに嫌われてしまうかもしれません。
名義上だけであっても少しくらいは出来る女であるというアピールをしないと……。
でも、具体的に何をすれば、いいのでしょう。
「ママ……いくろ」
「え? ええ、また!?」
またも心の内を見透かされたような妙な感覚。
パミュさんの視線はなぜか、とても大人びてます。
不思議な感覚……。
パミュさんはまだ、幼いので自分でも簡単に着替えが出来るワンピースを主体に選び、シルさんがコーディネイトしました。
私とパミュさんが選ぶと日が暮れても終わりそうにないからです。
あれもいいし、これもいいと目移りするのが原因でしょうか。
少し、赤みがかった金髪に合う濃緑色や濃灰色のワンピースはかわいらしくて、パミュさんにピッタリと合っているのでさすがシルさんとしか、言いようがありません。
「次はアリーさんの服を選びますよ」
「えぇ!? わ、私はいいです。今の服でも十分……」
「約束しましたよ? 貴女をエスコートすると」
彼は実に卑怯です。
そんな言い方をされたら、断れないじゃない?
なんて、嘘。
本当はシルさんと服を選ぶのが、嬉しくて仕方がないのに……。
私ったら、馬鹿みたいですね。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】偽物の王女だけど私が本物です〜生贄の聖女はよみがえる〜
白崎りか
恋愛
私の婚約者は、妹に夢中だ。
二人は、恋人同士だった賢者と聖女の生まれ変わりだと言われている。
「俺たちは真実の愛で結ばれている。おまえのような偽物の王女とは結婚しない! 婚約を破棄する!」
お好きにどうぞ。
だって私は、偽物の王女だけど、本物だから。
賢者の婚約者だった聖女は、この私なのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる