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第一部 薔薇姫と夕暮れ
第29話 揺蕩う薔薇姫
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三日間も意識がなかったのはまずいかも……。
ギルドの方に断りを入れていないので無断欠勤の扱いにされて、最悪、失職なんてことになったら困ります。
あんなお仕事にうってつけな職業は滅多にないんですから!
カーズニのフロントがわざわざ斡旋してくれたんです。
私がなるべく目立たないで生きていける表の仕事はそれくらいしか、ないと……。
「え? 休暇の届けを出してくれたのですか?」
「はい。一週間分です。あと三日。ゆっくりと体を休めてください」
「きにしるな、ママ」
したり顔でまたも見透かしているような遠い目をしているパミュさんはいいんです。
何だか、慣れてきましたから。
それよりもシルさんの口から、飛び出した内容が衝撃的でした。
休暇が一週間!?
そんなに休んでいたら、お仕事に支障が出てしまいますし、何よりも体が鈍ってしまいます。
「こうしてはいられません。ちょっと走ってきま……あら?」
まだ、体が完全に戻っていないのに急に立ち上がったせいでしょうか。
立ち眩みを起こすなんて、普段の私であれば、ありえないのに!
「大丈夫ですか?」
「ひ、ひゃい。らいじょうぶです」
シルさんの手がそっと肩に副えられて、支えられていました。
近いです。
距離が近いんです!
スマートでいて、エレガントな所作としか言いようのない動きについ見惚れてしまったけど、そんなに接近しなくてもいいですよね?
「まだ、横になっていた方がいいのでは?」
「だ、大丈夫ですから。単なる立ち眩みが起きただけで……」
「むりしるな、ママ」
二人が純粋に私の身を案じているのは分かっています。
分かってはいるのだけど……ここで譲歩したら、まずい状況になるとも分かっているんです。
そう私の直感がそう囁いています。
シルさんは紳士的な人。
きっとこういうだろう。
「アリーさんは病み上がりなので無理をしてはいけませんよ」と……。
そして、私を横抱きに抱えるに違いない。
彼の部屋に連れていかれて、抵抗なんて出来るのかしら?
今の私は妙な槍使いの毒のせいで弱っています。
優しくしてくれるなら、いいかも……。
きゃっー。
私ったら、いけません!
「あの……アリーさん?」
「パパ。ママはそっとすておく」
「そ、そうか」
火照る体と熱っぽい頭で身悶えしていた私は、二人の間にそんな会話がされていたことに全く、気付きませんでした。
気が付いたら、やや薄暗くなった部屋に一人ぼっち……。
今までもずっと一人でした。
寂しくなんて、ありません。
項垂れて部屋に戻ろうとすると小さなお皿を数枚、手にしたパミュさんと目が合いました。
「ママ。どこいく?」
彼女の後ろには湯気が立つ大きなグラタン皿を持ったシルさんが……。
「アリーさん、夕食が出来ましたよ」
「え?」
どうやら、私はまた、勘違いをしていたようです。
恥ずかしい……。
ギルドの方に断りを入れていないので無断欠勤の扱いにされて、最悪、失職なんてことになったら困ります。
あんなお仕事にうってつけな職業は滅多にないんですから!
カーズニのフロントがわざわざ斡旋してくれたんです。
私がなるべく目立たないで生きていける表の仕事はそれくらいしか、ないと……。
「え? 休暇の届けを出してくれたのですか?」
「はい。一週間分です。あと三日。ゆっくりと体を休めてください」
「きにしるな、ママ」
したり顔でまたも見透かしているような遠い目をしているパミュさんはいいんです。
何だか、慣れてきましたから。
それよりもシルさんの口から、飛び出した内容が衝撃的でした。
休暇が一週間!?
そんなに休んでいたら、お仕事に支障が出てしまいますし、何よりも体が鈍ってしまいます。
「こうしてはいられません。ちょっと走ってきま……あら?」
まだ、体が完全に戻っていないのに急に立ち上がったせいでしょうか。
立ち眩みを起こすなんて、普段の私であれば、ありえないのに!
「大丈夫ですか?」
「ひ、ひゃい。らいじょうぶです」
シルさんの手がそっと肩に副えられて、支えられていました。
近いです。
距離が近いんです!
スマートでいて、エレガントな所作としか言いようのない動きについ見惚れてしまったけど、そんなに接近しなくてもいいですよね?
「まだ、横になっていた方がいいのでは?」
「だ、大丈夫ですから。単なる立ち眩みが起きただけで……」
「むりしるな、ママ」
二人が純粋に私の身を案じているのは分かっています。
分かってはいるのだけど……ここで譲歩したら、まずい状況になるとも分かっているんです。
そう私の直感がそう囁いています。
シルさんは紳士的な人。
きっとこういうだろう。
「アリーさんは病み上がりなので無理をしてはいけませんよ」と……。
そして、私を横抱きに抱えるに違いない。
彼の部屋に連れていかれて、抵抗なんて出来るのかしら?
今の私は妙な槍使いの毒のせいで弱っています。
優しくしてくれるなら、いいかも……。
きゃっー。
私ったら、いけません!
「あの……アリーさん?」
「パパ。ママはそっとすておく」
「そ、そうか」
火照る体と熱っぽい頭で身悶えしていた私は、二人の間にそんな会話がされていたことに全く、気付きませんでした。
気が付いたら、やや薄暗くなった部屋に一人ぼっち……。
今までもずっと一人でした。
寂しくなんて、ありません。
項垂れて部屋に戻ろうとすると小さなお皿を数枚、手にしたパミュさんと目が合いました。
「ママ。どこいく?」
彼女の後ろには湯気が立つ大きなグラタン皿を持ったシルさんが……。
「アリーさん、夕食が出来ましたよ」
「え?」
どうやら、私はまた、勘違いをしていたようです。
恥ずかしい……。
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