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第一部 薔薇姫と夕暮れ
第15話 小さき者は眠る
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(三人称視点)
彼女――小さき者が初めて、その目で世界を知った時、彼女をこの世に生み出した創造主の命数は残り僅かであった。
「良いか、パルムよ。いずれ、お主の力が必要になる日がきっと来るであろう。その日まで眠るがいい……」
「はい。お父様」
「いい子だ。我が娘よ……」
だから、彼女は眠った。
自らを生み出した者が永遠の眠りにつき、誰からも忘れられた存在となってただ、ひたすらに眠った。
いずれ来るその時まで……。
完璧なる人造人間であるパルムは伝説的な錬金術師パラケ・ルッスースによって、創られた人工生命体である。
製造過程こそ、違いはあるもののゴーレムやガーゴイルと同じ魔法生物の一種といっても過言ではないだろう。
だが、ゴーレムやガーゴイルは命令を忠実に実行することが出来ても自我が芽生えることはない。
ホムンクルスは自我を持つ独立した生命体なのだ。
パラケ・ルッスースは著書の中でその製法を詳しく、書き記していたが現在、その書は失われて久しい。
彼の存在はアルケミストの間でも異端とされた。
その著作だけではなく、研究結果に至るまでの一切が消去されている。
これは新たな生命を自らの手で生み出すという神の領域に踏み込もうとした彼の姿勢が危険視されたせいである。
パラケ・ルッスースはまた、アゾートと柄に銘打たれた小剣を常に携帯していたと言われている。
ところが、彼の死後、そのアゾートを目にした者は誰もいない。
一説によれば、アゾートを手にした者はかの大錬金術師の遺産を手に入れられるのだと言う。
『永遠の町』の郊外にパラケ・ルッスースが、晩年の一時を過ごした別荘が残されている。
かつては貴族の別宅の如く、きらびやかで優雅な屋敷といった趣きある邸宅として知られていた。
だが、現在は管理する者がおらず、荒れ果てている。
生前のパラケ・ルッスースの良くない噂を気味悪がって誰も近寄らなかったせいだった。
整備が行き届いていた頃は美しかった庭園も今は昔。
邸宅も苔むし、さながら、お化け屋敷の様相を呈していた。
あまりの不人気ぶりについには破格の安値で売りに出されたが、パラケ・ルッスースの噂が付きまとい、一向に売れない。
そんなパラケ・ルッスースの別荘がついに売れた。
それだけでも噂好きの人々を刺激するのに十分なニュースだったが、購入したのが若い夫婦――それも稀に見る美男美女だった為に憶測が憶測を呼ぶのだった。
彼女――小さき者が初めて、その目で世界を知った時、彼女をこの世に生み出した創造主の命数は残り僅かであった。
「良いか、パルムよ。いずれ、お主の力が必要になる日がきっと来るであろう。その日まで眠るがいい……」
「はい。お父様」
「いい子だ。我が娘よ……」
だから、彼女は眠った。
自らを生み出した者が永遠の眠りにつき、誰からも忘れられた存在となってただ、ひたすらに眠った。
いずれ来るその時まで……。
完璧なる人造人間であるパルムは伝説的な錬金術師パラケ・ルッスースによって、創られた人工生命体である。
製造過程こそ、違いはあるもののゴーレムやガーゴイルと同じ魔法生物の一種といっても過言ではないだろう。
だが、ゴーレムやガーゴイルは命令を忠実に実行することが出来ても自我が芽生えることはない。
ホムンクルスは自我を持つ独立した生命体なのだ。
パラケ・ルッスースは著書の中でその製法を詳しく、書き記していたが現在、その書は失われて久しい。
彼の存在はアルケミストの間でも異端とされた。
その著作だけではなく、研究結果に至るまでの一切が消去されている。
これは新たな生命を自らの手で生み出すという神の領域に踏み込もうとした彼の姿勢が危険視されたせいである。
パラケ・ルッスースはまた、アゾートと柄に銘打たれた小剣を常に携帯していたと言われている。
ところが、彼の死後、そのアゾートを目にした者は誰もいない。
一説によれば、アゾートを手にした者はかの大錬金術師の遺産を手に入れられるのだと言う。
『永遠の町』の郊外にパラケ・ルッスースが、晩年の一時を過ごした別荘が残されている。
かつては貴族の別宅の如く、きらびやかで優雅な屋敷といった趣きある邸宅として知られていた。
だが、現在は管理する者がおらず、荒れ果てている。
生前のパラケ・ルッスースの良くない噂を気味悪がって誰も近寄らなかったせいだった。
整備が行き届いていた頃は美しかった庭園も今は昔。
邸宅も苔むし、さながら、お化け屋敷の様相を呈していた。
あまりの不人気ぶりについには破格の安値で売りに出されたが、パラケ・ルッスースの噂が付きまとい、一向に売れない。
そんなパラケ・ルッスースの別荘がついに売れた。
それだけでも噂好きの人々を刺激するのに十分なニュースだったが、購入したのが若い夫婦――それも稀に見る美男美女だった為に憶測が憶測を呼ぶのだった。
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