19 / 58
第2章 幼女リリス
第10話 ヘルちゃんとイズン
しおりを挟む
魔力を極力、抑えておいたので感謝して欲しいですわ。
何も消滅させようとして、撃った訳ではありませんもの。
ただ、ちょっとばかりは調整を失敗したかもしれませんけど。
「ちょっとぉ! このあほんだらぁ! 死んじゃうでしょうがぁ!!」
ふぅ~ん。
失敗でもなかったようですわ。
彼女も素を出せたのではなくて?
感謝のあまり、声も出せないのかしら?
立ち昇る凄まじい煙が晴れて、ようやく姿が見えたイズンは……あら?
結構、ボロボロに見えますわね。
「何してくれんの? 林檎がこんなに減っちゃったのよ!?」
イズンが左手に抱えている籠にはたっぷりのリンゴが詰まっていましたけど、今は大分、減りましたわね。
どうしてかしら?
リリス、分からないですわ~。
「かんちゃして欲しいでしゅわ。とても、しゅなおにお話出来ましゅでしょう?」
「それはそうなんだけど、死んじゃうって!」
「死なないでしゅわ。だって、ここは死者の国でしゅもの」
「だって、じゃないってば! 死なないのに死ぬっちゅうの!!」
「でも、死なないから、だいじょうぶでしゅわね」
「でも、じゃねぇってば!」
「だって……」
「だぁぁってじゃぁなぁいから! ぜぇはぁ」
あまり、からかうとイズンが倒れてまうかしら?
そろそろやめてあげてもいいんですけど……。
でも、だって、でもでも、だってと言っているだけで面白いですわ。
暫く、遊べそうですわね。
「でも、とても楽しかったでしょう?」
こうして、わたしとイズンは友になったのだ。
「この本に書いてあるのでしゅわ」
「違うからね。あれはあたしが一方的にヤラレタだけって言うの。そういうのは本の中だけ!」
イズンはわたしが見せた本を十六分割して、きれいに細切れにすると全否定をしてきましたの。
確かに書いてありましてよ。
男の人が殴り合いをして、『さすがだぜ、兄貴は』『お前もだ』とガッチリと握手をして、友情が深まると書いてありましてよ!
「そういうのは男がやりたがるだけでしょ。女はもっと分からないようにやるものなんだから」
そう言って、遠い目をするイズンの姿はどこか、大人びて見えますわ。
人間で言ったら、十歳くらいの見た目なのに不思議ですわね。
「だから、あたしの顔色を窺わないで本気でやってくるあんた達兄妹は好きよ」
「もっと、ヤラレタイなんて、変わった趣味でしゅわね」
「違うからねっ。その物騒な爪をしまいなさいよ」
ちょっとした冗談で舌なめずりをしながら、爪をうっとりとした表情で見ただけなのに本気にするなんて。
面白いですわ。
アグネスだったら、小一時間ほどは説教と言う名の淑女講義が始まりますもの。
「あんた達おかしいからね! あの変態銀髪は何て言ったと思うの?」
「おにいちゃまは変態ではありましぇんわ。かなりお馬鹿なだけでしゅわ!」
「それはそれで酷くない?」
でも、本当のことですもの。
お兄様にとっての判断基準とは食べられるか、食べられないかの二択しかないのでは? と思うくらいに脳が残念ですわ。
「あいつね。あたしのことを食べたいって、言ったのよ。あぁ、こいつも同じかと思ったら、違ったの。『お前は頭からマルカジリにすると美味しそうである』と満面の笑顔で言ったのよ! 鳥肌が立って、ゾワッとしたけど初めてだったから、嬉しかったわ」
「まぁ、おにいちゃまの考えそうなことでしゅわね」
「だから、あたしはここが好き。ずっと、ここにいたいなぁ……」
軽く溜息を吐きながら、再び、遠い目をしているイズンを見ているとそのまま、消えてしまいそうに見えましたの。
「ずっと、ここにいれば、いいのでしゅわ」
「うん」
イズンは少し、驚いたように目を瞬かせてましたけど、頷いてくれましたの。
彼女の目が潤んで、僅かに光る物が見えたのは気のせいかしら?
後に少女と呼ばれる見た目に成長したわたしとイズンが『真実の愛』について、ある賭けをすることになるのですけど、それはまた、別の機会ですわ~。
何も消滅させようとして、撃った訳ではありませんもの。
ただ、ちょっとばかりは調整を失敗したかもしれませんけど。
「ちょっとぉ! このあほんだらぁ! 死んじゃうでしょうがぁ!!」
ふぅ~ん。
失敗でもなかったようですわ。
彼女も素を出せたのではなくて?
感謝のあまり、声も出せないのかしら?
立ち昇る凄まじい煙が晴れて、ようやく姿が見えたイズンは……あら?
結構、ボロボロに見えますわね。
「何してくれんの? 林檎がこんなに減っちゃったのよ!?」
イズンが左手に抱えている籠にはたっぷりのリンゴが詰まっていましたけど、今は大分、減りましたわね。
どうしてかしら?
リリス、分からないですわ~。
「かんちゃして欲しいでしゅわ。とても、しゅなおにお話出来ましゅでしょう?」
「それはそうなんだけど、死んじゃうって!」
「死なないでしゅわ。だって、ここは死者の国でしゅもの」
「だって、じゃないってば! 死なないのに死ぬっちゅうの!!」
「でも、死なないから、だいじょうぶでしゅわね」
「でも、じゃねぇってば!」
「だって……」
「だぁぁってじゃぁなぁいから! ぜぇはぁ」
あまり、からかうとイズンが倒れてまうかしら?
そろそろやめてあげてもいいんですけど……。
でも、だって、でもでも、だってと言っているだけで面白いですわ。
暫く、遊べそうですわね。
「でも、とても楽しかったでしょう?」
こうして、わたしとイズンは友になったのだ。
「この本に書いてあるのでしゅわ」
「違うからね。あれはあたしが一方的にヤラレタだけって言うの。そういうのは本の中だけ!」
イズンはわたしが見せた本を十六分割して、きれいに細切れにすると全否定をしてきましたの。
確かに書いてありましてよ。
男の人が殴り合いをして、『さすがだぜ、兄貴は』『お前もだ』とガッチリと握手をして、友情が深まると書いてありましてよ!
「そういうのは男がやりたがるだけでしょ。女はもっと分からないようにやるものなんだから」
そう言って、遠い目をするイズンの姿はどこか、大人びて見えますわ。
人間で言ったら、十歳くらいの見た目なのに不思議ですわね。
「だから、あたしの顔色を窺わないで本気でやってくるあんた達兄妹は好きよ」
「もっと、ヤラレタイなんて、変わった趣味でしゅわね」
「違うからねっ。その物騒な爪をしまいなさいよ」
ちょっとした冗談で舌なめずりをしながら、爪をうっとりとした表情で見ただけなのに本気にするなんて。
面白いですわ。
アグネスだったら、小一時間ほどは説教と言う名の淑女講義が始まりますもの。
「あんた達おかしいからね! あの変態銀髪は何て言ったと思うの?」
「おにいちゃまは変態ではありましぇんわ。かなりお馬鹿なだけでしゅわ!」
「それはそれで酷くない?」
でも、本当のことですもの。
お兄様にとっての判断基準とは食べられるか、食べられないかの二択しかないのでは? と思うくらいに脳が残念ですわ。
「あいつね。あたしのことを食べたいって、言ったのよ。あぁ、こいつも同じかと思ったら、違ったの。『お前は頭からマルカジリにすると美味しそうである』と満面の笑顔で言ったのよ! 鳥肌が立って、ゾワッとしたけど初めてだったから、嬉しかったわ」
「まぁ、おにいちゃまの考えそうなことでしゅわね」
「だから、あたしはここが好き。ずっと、ここにいたいなぁ……」
軽く溜息を吐きながら、再び、遠い目をしているイズンを見ているとそのまま、消えてしまいそうに見えましたの。
「ずっと、ここにいれば、いいのでしゅわ」
「うん」
イズンは少し、驚いたように目を瞬かせてましたけど、頷いてくれましたの。
彼女の目が潤んで、僅かに光る物が見えたのは気のせいかしら?
後に少女と呼ばれる見た目に成長したわたしとイズンが『真実の愛』について、ある賭けをすることになるのですけど、それはまた、別の機会ですわ~。
0
今度こそ、スローライフになっている(はずの)続編的扱いの新作『わたしが愛する夫は小さな勇者様~お姫様と勇者のスローライフ~』でヘルちゃんの暴走はさらに悪化します🙄
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる