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第11話 同じ穴のムッジーナ
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眠りの国へ旅している暗殺者の一団に手際よく、縄をかけるヨーゼフ殿下とクルト。
私はただ、黙って見守るしかありません。
下手に手を出すと縄がこんがらがったりしますしね。
私とファン・ハール卿が入っていた牢に代わりに彼らが入ることになりました。
ぐるぐる巻きになっているので色々と大変でしょうが、事態を収めてから対処すればいいので見なかったことにしましょう。
「この魔法は効力が解けるまで無理なんだ」という殿下の言葉でお休み中のファン・ハール卿もそのまま、お眠りいただくということで放っておきます。
「まさか、殿下がいらっしゃるとは思いませんでしたよ」
「逆だよ、逆。兄上がここに来ても役に立たなかったからね」
「ああ、なるほどね」
殿下とクルトが私の方に向かって、意味深な表情を浮かべています。
何なのでしょう?
「まあ。うちのお嬢様も相当にアレなんで丁度いいんじゃないですかね」
「そうだね。そうかもしれない」
また、意味深な表情。
本当、何なのでしょう?
しかも笑いましたね?
クルトはどこか意地悪なところがある子だったから、分かります。
殿下までも同じ穴のムッジーナだったんですね。
「さてと。色々と説明しないとデ・ブライネ代理辺境伯には分からないことが多いだろうね。だが、時間はあまりない。手短に説明するよ」
先程まではお道化た表情をしていたヨーゼフ殿下が急に真面目な顔つきをしたかと思うと私を真っ直ぐと見つめながら、そう仰いました。
簡単な話でした。
私もリューク殿下もまんまとしてやられただけ、だったのです。
私達の婚約は何があろうとも決して、揺るがないものであり、そこに愛はなくても契約による婚姻が為されるはずでした。
でも、それを快く思わない方がおられた。
その御方は私とリューク殿下の距離が縮まることも望んでいない。
だから、私の足元である騎士団から、崩してきた。
ここでその御方にとって誤算だったのはクルトがそれに乗った振りをしてくれたことでしょうか?
残念ながら、リューク殿下はああいう方ですから、篭絡されただけではなく、完全に骨抜きとなったようですが……。
決して、悪い人ではないんです。
ただ、残念ながら、あまりにも純真で素直すぎるだけ。
そこを付けこまれてしまったのです。
「それじゃ、兄上を止めに行くとしますか」
簡単な説明を終えたヨーゼフ殿下はいつものお茶目な表情に戻っていました。
器用な方ですね。
「ちょっとばかり、酔うかもしれないけど、我慢してね」
「え、え!? それはいけませんわ」
私の拒否する言葉が聞こえなかったのか、ヨーゼフ殿下はウインクをすると手にした杖を振り上げました。
ああ、これはまずいと思う間もなく、私達四人の姿が牢獄から、消えるのでした。
私、滅茶苦茶酔うのですけど……。
私はただ、黙って見守るしかありません。
下手に手を出すと縄がこんがらがったりしますしね。
私とファン・ハール卿が入っていた牢に代わりに彼らが入ることになりました。
ぐるぐる巻きになっているので色々と大変でしょうが、事態を収めてから対処すればいいので見なかったことにしましょう。
「この魔法は効力が解けるまで無理なんだ」という殿下の言葉でお休み中のファン・ハール卿もそのまま、お眠りいただくということで放っておきます。
「まさか、殿下がいらっしゃるとは思いませんでしたよ」
「逆だよ、逆。兄上がここに来ても役に立たなかったからね」
「ああ、なるほどね」
殿下とクルトが私の方に向かって、意味深な表情を浮かべています。
何なのでしょう?
「まあ。うちのお嬢様も相当にアレなんで丁度いいんじゃないですかね」
「そうだね。そうかもしれない」
また、意味深な表情。
本当、何なのでしょう?
しかも笑いましたね?
クルトはどこか意地悪なところがある子だったから、分かります。
殿下までも同じ穴のムッジーナだったんですね。
「さてと。色々と説明しないとデ・ブライネ代理辺境伯には分からないことが多いだろうね。だが、時間はあまりない。手短に説明するよ」
先程まではお道化た表情をしていたヨーゼフ殿下が急に真面目な顔つきをしたかと思うと私を真っ直ぐと見つめながら、そう仰いました。
簡単な話でした。
私もリューク殿下もまんまとしてやられただけ、だったのです。
私達の婚約は何があろうとも決して、揺るがないものであり、そこに愛はなくても契約による婚姻が為されるはずでした。
でも、それを快く思わない方がおられた。
その御方は私とリューク殿下の距離が縮まることも望んでいない。
だから、私の足元である騎士団から、崩してきた。
ここでその御方にとって誤算だったのはクルトがそれに乗った振りをしてくれたことでしょうか?
残念ながら、リューク殿下はああいう方ですから、篭絡されただけではなく、完全に骨抜きとなったようですが……。
決して、悪い人ではないんです。
ただ、残念ながら、あまりにも純真で素直すぎるだけ。
そこを付けこまれてしまったのです。
「それじゃ、兄上を止めに行くとしますか」
簡単な説明を終えたヨーゼフ殿下はいつものお茶目な表情に戻っていました。
器用な方ですね。
「ちょっとばかり、酔うかもしれないけど、我慢してね」
「え、え!? それはいけませんわ」
私の拒否する言葉が聞こえなかったのか、ヨーゼフ殿下はウインクをすると手にした杖を振り上げました。
ああ、これはまずいと思う間もなく、私達四人の姿が牢獄から、消えるのでした。
私、滅茶苦茶酔うのですけど……。
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