【完結】聞いてない、知らないで許されると思ったら、甘いです

黒幸

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閑話 五人の王子1

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三人称視点

 後世の歴史家はステファヌス王は慈愛の人、善良王と呼ぶ。

 果断の人であり、英雄王と呼ばれた先代ヒエロニムス王とは正反対の評価を得ている理由の一つとして、その治世が常に平和であったことが非常に大きい。

 ヒエロニムス王の時代、アッケルマン家による王権はまだ確立していなかった。
 安定した治世であるとは到底言えたものではなく、王といえども戦場にその身を置くことが多かったのだ。

 ステファヌス王は多くの犠牲を払い、父が築いた平和な世を受け継いだに過ぎないと批判する者より、平和を長く維持した統治能力の巧みさを賞賛する者の方が圧倒的多数を占めている。
 この王を影から、支えたのが王妃であるリーセロットである。

 ステファヌス王と王妃リーセロットが政略結婚だったことは広く、世に知られていた。
 二人の婚約はステファヌスが五歳、リーセロットが二歳という幼少期である。
 当時の混沌とした勢力状況を鑑みた結果、中立派の筆頭であるクラーセン侯爵家の令嬢であるリーセロットに白羽の矢が立ったのだ。

 本人達の意志を全く、無視した婚約。
 しかし、その関係を危惧する周囲を他所にステファヌスとリーセロットは静かにしかし、着実に愛情を育てた。
 誰が見ても仲睦まじい国王夫妻の様子を模範としてなのか、貴族社会の中でも一夫一妻をたっとぶ基盤が出来たのもこの頃である。

 だが、二人の愛の深さに反して、待望された世継ぎが生まれなかった。
 リーセロットのみを愛するステファヌスにとって、他の女性を迎えることは余程、我慢ならないことだったのだろう。
 そこで考えられたのがまだ、普及して間もない新たな技術を用いて、不妊治療することだった。
 魔法文化が大きく、発展している友好国に頭を下げて、協力を申し出たのである。

 その甲斐もあってなのか、リーセロットは懐妊した。
 国中が歓喜に溢れ、民が祝福する中、生まれた王子は五人である。

 第一王子フェリクス。
 第二王子エルヴィン。
 第三王子カスペル。
 第四王子ヨーゼフ。
 第五王子リューク。

 王子は五つ子だったのだ。
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