6 / 29
第5話 本日お日柄も良く婚約破棄日和!?
しおりを挟む
ベッドの上でもサインは出来ます。
でも、次々に差し出される書類の数の多さには少々、辟易としましたが。
サイン済みの書類を任せた早馬は出立しました。
そもそも、私と第五王子殿下との婚約は王家側からの強い要望と恩義に報いる為のもの。
双方の利害関係が一致して、成立していたのです。
ほぼ無条件で結ばれた婚約ですし、契約に近いものでした。
ただ一つだけ、絶対に破ってはいけない条項があったのですが……。
殿下の頭はそれすらも覚えていないのでしょう。
そして、私の体調もどうにか、元に戻りました。
ついに迎えることになりました。
出来れば、迎えたくは無かったのですが……。
あのような御方でもいいところはあったのです。
「ねぇ。あったわよね?」
「だから、顔だけだって!」
「それだけ?」
「頭が空っぽでやることなすことがてんでダメ。どこにいいところがあるのよ」
「あったような気がするのだけど……」
義妹は口を尖らせて、不満を隠そうともしません。
彼女は最初から、この婚約に反対でした。
なぜ、よりにもよって、もっとも何も無い王子となのか? とずっと言い続けています。
「手荒なことはしないようにね」
「分かっているわ」
口ではそう言っている割にユリアナは手に持っていた扇を軽く、折りました。
彼女の手は小さくて、可愛らしい女の子らしいおててなのですが、林檎を絞って、ジュースに出来ることは有名な話です。
この辺境伯領でそれを知らない者は……思いついたアレを手でかき消しておきます。
「まずは話し合いをしないと駄目なのよ」
「片腕は折ってもいいよね? サイン書ける腕は一本、あればいいじゃない」
「駄目ですってば」
「じゃあ、指なら?」
「駄目です」
「ちぇっ」
ユリアナは小柄で華奢な小動物のような愛らしさに溢れた美少女なのです。
髪は眩く、神々しささえ感じられる黄金の色。
腰まで伸ばされたその長く、艶やかな金髪は神様がお与えになった賜物なのよ。
瞳もまるで宝石のエメラルドそのもので肌はシミ一つなくて、透き通っているわ。
こんなにも素晴らしい妹を私に与えてくれた神様に感謝しないと……。
でも、この守ってあげたくなるような庇護欲を掻き立てるかわいらしいユリアナが、実は……
「不測の事態が起こりました」
突然のノックの音に私は突如、現実に引き戻されました。
常に冷静で焦る姿を見せたことがないセバスの顔に珍しく、焦りの色が見えます。
「どうしました?」
「幽霊船団でございます」
「ええ?」
「何てタイミングで来るのよっ」
ユリアナが腹立ちまぎれに叩きつけた拳で応接室のテーブルがまた、あの世に旅立ちました。
これで何卓目だったかしら?
見事に真っ二つに折れています。
「あたしが出るしか、ないじゃない。ミーナ」
「はい?」
「あたしが戻るまで早まった真似をしないでね」
「分かっているわ」
「本当に分かってるのかな……」
最後まで後ろ髪を引かれるかのように何度も念を押してから、船上の人となったユリアナがいなくなりました。
絶対的な味方であり、騒々しくも心強い彼女がいない中、私は対峙しなければなりません。
少々、不安ではありますが何とか、なるでしょう。
でも、次々に差し出される書類の数の多さには少々、辟易としましたが。
サイン済みの書類を任せた早馬は出立しました。
そもそも、私と第五王子殿下との婚約は王家側からの強い要望と恩義に報いる為のもの。
双方の利害関係が一致して、成立していたのです。
ほぼ無条件で結ばれた婚約ですし、契約に近いものでした。
ただ一つだけ、絶対に破ってはいけない条項があったのですが……。
殿下の頭はそれすらも覚えていないのでしょう。
そして、私の体調もどうにか、元に戻りました。
ついに迎えることになりました。
出来れば、迎えたくは無かったのですが……。
あのような御方でもいいところはあったのです。
「ねぇ。あったわよね?」
「だから、顔だけだって!」
「それだけ?」
「頭が空っぽでやることなすことがてんでダメ。どこにいいところがあるのよ」
「あったような気がするのだけど……」
義妹は口を尖らせて、不満を隠そうともしません。
彼女は最初から、この婚約に反対でした。
なぜ、よりにもよって、もっとも何も無い王子となのか? とずっと言い続けています。
「手荒なことはしないようにね」
「分かっているわ」
口ではそう言っている割にユリアナは手に持っていた扇を軽く、折りました。
彼女の手は小さくて、可愛らしい女の子らしいおててなのですが、林檎を絞って、ジュースに出来ることは有名な話です。
この辺境伯領でそれを知らない者は……思いついたアレを手でかき消しておきます。
「まずは話し合いをしないと駄目なのよ」
「片腕は折ってもいいよね? サイン書ける腕は一本、あればいいじゃない」
「駄目ですってば」
「じゃあ、指なら?」
「駄目です」
「ちぇっ」
ユリアナは小柄で華奢な小動物のような愛らしさに溢れた美少女なのです。
髪は眩く、神々しささえ感じられる黄金の色。
腰まで伸ばされたその長く、艶やかな金髪は神様がお与えになった賜物なのよ。
瞳もまるで宝石のエメラルドそのもので肌はシミ一つなくて、透き通っているわ。
こんなにも素晴らしい妹を私に与えてくれた神様に感謝しないと……。
でも、この守ってあげたくなるような庇護欲を掻き立てるかわいらしいユリアナが、実は……
「不測の事態が起こりました」
突然のノックの音に私は突如、現実に引き戻されました。
常に冷静で焦る姿を見せたことがないセバスの顔に珍しく、焦りの色が見えます。
「どうしました?」
「幽霊船団でございます」
「ええ?」
「何てタイミングで来るのよっ」
ユリアナが腹立ちまぎれに叩きつけた拳で応接室のテーブルがまた、あの世に旅立ちました。
これで何卓目だったかしら?
見事に真っ二つに折れています。
「あたしが出るしか、ないじゃない。ミーナ」
「はい?」
「あたしが戻るまで早まった真似をしないでね」
「分かっているわ」
「本当に分かってるのかな……」
最後まで後ろ髪を引かれるかのように何度も念を押してから、船上の人となったユリアナがいなくなりました。
絶対的な味方であり、騒々しくも心強い彼女がいない中、私は対峙しなければなりません。
少々、不安ではありますが何とか、なるでしょう。
0
新作『わたしが愛する夫は小さな勇者様~お姫様と勇者のスローライフ~』を開始したのでよしなに!なのです。
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】待ち望んでいた婚約破棄のおかげで、ついに報復することができます。
みかみかん
恋愛
メリッサの婚約者だったルーザ王子はどうしようもないクズであり、彼が婚約破棄を宣言したことにより、メリッサの復讐計画が始まった。
婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。
石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。
やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。
失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。
愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
嫌われ聖女は魔獣が跋扈する辺境伯領に押し付けられる
kae
恋愛
魔獣の森と国境の境目の辺境領地の領主、シリウス・レングナーの元に、ある日結婚を断ったはずの聖女サラが、隣の領からやってきた。
これまでの縁談で紹介されたのは、魔獣から国家を守る事でもらえる報奨金だけが目当ての女ばかりだった。
ましてや長年仲が悪いザカリアス伯爵が紹介する女なんて、スパイに決まっている。
しかし豪華な馬車でやってきたのだろうという予想を裏切り、聖女サラは魔物の跋扈する領地を、ただ一人で歩いてきた様子。
「チッ。お前のようなヤツは、嫌いだ。見ていてイライラする」
追い出そうとするシリウスに、サラは必死になって頭を下げる「私をレングナー伯爵様のところで、兵士として雇っていただけないでしょうか!?」
ザカリアス領に戻れないと言うサラを仕方なく雇って一月ほどしたある日、シリウスは休暇のはずのサラが、たった一人で、肩で息をしながら魔獣の浄化をしている姿を見てしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる