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備忘録2 鈴鳴村編

28 抗う力

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「我は求め訴えたり! 時は来たれり!」
「リーナ、どうしたの? 何か、悪い物食べた?」
「ちっが~うっ!」

 断じて違うからねっ!
 レオも酷いわね。
 変な物を食べたから、わたしがおかしなことを言っているみたいな反応しなくてもいいじゃない?
 偶にそういうことがないとも言い切れないのが、辛いところだわ……。

「違うんだからねぇ? 例の村の案件に取り掛かれるってことなのっ」
「ああ。何だ、それか。って、そうか。ようやくできるんだね」
「そうなのよぉ。Kトンネルの方は……アレを使いたいそうよ。投入してみるんだって、試験もかねてね」
「アレって、何だっけ?」
「アレはアレだわぁ。ほら、計画前倒しで試作されていたアレよ」
「ああ、アレか。装甲機兵(アーマードマシナリー)の計画、進んでたんだ?」

 レオが驚くのも無理はない。
 アーマードマシナリーは力を持たない者に与える抗う術だから。

 巨大カラクリ兵器。
 機械仕掛けの大きな鎧のお化け。
 例え方は色々とあるけれど、二足歩行する人型の機動兵器って、呼ぶのが一番だと思う。

 この開発に携わったのはアメリカに本社を置くグローリー社であって……。
 つまり、わたし自身が深く、関わっているってことなの。
 まぁ、機械工学に関しては専門外だから、そこは知らないけどアーマードマシナリーの動力源になる永久機関の開発はわたしなくしては成功しなかったのよね。

 それでどうにか、開発に漕ぎつけたのが試作型の初号機クリュメネだったの。
 ただ、全てが手探り状態の中で開発されたモデルだから、機動兵器っていうよりもパワードスーツに近い代物にしかならなかったわ。
 当然、そのままロールアウトできなくて、さらに改良の必要性ありということで……。

 それから、幾星霜……は冗談にしてもそれなりに時間が必要だったみたいで先行量産型試作機のプロメテウスを経て、ようやく制式量産型のエピメテウスが日の目を見たって訳なの。
 そのエピメテウスがついに実戦に投入されるのよね。

「だからぁ、Kトンネルはとりあえず、スルーってことになるわね」
「大丈夫なのかな?」
「何とも言えないわねぇ。レオも分かるでしょう? あそこのヤバさ」
「ああ」

 さっきまでちょっと、おどけていたのにレオが真顔になった。
 それも当然かしら。
 だって、本当にヤバいところなんだから!
 死霊の溜まり場なんて言い方では生温いわね。
 戦場、処刑場。
 諸々の条件が重なり合っていて、穢れで澱み切った地と言えば、いいのかしら?

「村をさっさと解放しましょう。そうしたら、レオが心配することも起こらないんじゃない?」
「それが一番かな。リーナのことだから、既に手筈が……」
「整っているわぁ♪ ほらぁ、あの子達って優秀だから?」

 ”あの子達”って言い方をするとレオは苦笑する。
 それも仕方ないとは思うの。
 わたしが子供達って呼んでいる”あの子達”……。
 見た目だけなら、わたしやレオよりも年上に見えるんだもん。
 気になっちゃうのよね。

 でも、大丈夫。
 手を繋いで一緒に寝ているのだから!
 わたし達の赤ちゃんもきっと、すぐにくるわ。

「だからぁ、レオ。手を繋ぎましょう。ねぇ?」
「だから? え? 何? あのリーナさん?」

 その後、戸惑うレオと恋人繋ぎとやらをして、お昼寝をすることにしたの。
 それでもキャベツ畑には何も来なかったのよね。
 なぜかしら?
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