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備忘録1 湘南Pホテル編
23 夢幻の主(三人称視点)
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ユリナが怒りのあまり、力を制御しない本来の唄を歌った。
それが何を意味するのかは明らかだった。
風もない空間で意思を持つように巻き上がっていた彼女の特徴的なツインテールが、急に力を失う。
同時にユリナ自身も糸が切れた人形のようにゆっくりと崩れ落ちた。
「ふぅ。間に合ったか」
反射的な反応速度で麗央は動いた。
ユリナの体が完全に倒れる前に優しく腕で支えると、そっと抱き寄せたのだ。
彼にとって目の前に敵がいようとも関係なかった。
それ以上にユリナのことが心配で堪らなかったからだ。
儚い美少年――スバルは我知らず、眠りに落ちていたことにようやく気付いた。
ゆっくりと瞼を開ける。
何が起きたのかも全く、分からない。
寝起きのせいなのか、頭の回転が鈍い。
己が意識を失っていたことすら、思い出せなかった。
(眠っていた? この僕が? 眠る? 僕が? 何で?)
まず、驚いたのは古びた木製のロッキングチェアに自分が腰掛けていることだった。
だが、それ以上の事実が、彼に恐怖するという感情を与えた。
怯えたのには理由があるのだ。
スバルは自問する。
眠る必要性が無い生命体として、作られた完璧な存在であるはずの自分が僅かとはいえ、意識を喪失した。
驚くべき事実であり、恐るべき事実だった。
スバルは人間ではない。
大魔導を名乗ったのはそうするよう、創造主から、命ぜられたからに過ぎない。
主は双子の女神であり、水の強壮なる大神に連なる御子だった。
大神は星の彼方より、到来した蕃神と呼ばれる存在である。
彼らの力を垣間見た人間が、神を夢想し、神話が作られたと言われている。
彼らによって創造されたスバルの正体は人造人間(ホムンクルス)の亜種なのだ。
モデルとなった少年がいた。
オリジナル体と呼ばれる少年の名もスバルであり、蕃神が目を付けるだけの価値がある人間だった。
意に沿わないオリジナルではなく、忠実なコピーを欲した彼らはを完璧に再現すべく、彼を創造したのである。
ところが残念なことに完璧にモデリングが成功したのは、見た目だけだった。
性能に関してはオリジナルに遠く及ばない。
それでも”人”に負けない強さを与えられたのがコピー・スバルだったのだ。
(どうなっているんだ?)
スバルは周囲を見渡し、愕然とした。
狭い部屋だった。
それだけであれば、問題はない。
床が見えないほどに本が積まれている。
己を取り囲むように設置された本棚も本が埋め尽くしていた。
右を見ても左を見ても自然と目に入るのは本だ。
かび臭さが鼻をつき、光すらほとんど感じない薄暗い部屋だった。
なぜか恐怖を感じる。
そのような心を持たないはずのホムンクルスである自分がである。
スバルはそのことに違和感を覚えずにはいられなかった。
「なんだ!?」
その時、部屋が揺れた。
激しく、揺れる。
縦に揺れたかと思えば、横に揺られる。
がさがさと崩れていく本の山。
本棚からも派手な音を立て、本が落ちていった。
スバルはその様子をただ、見ていることしかできない。
そして、言い知れぬ恐怖に囚われた。
昏い。
狭い。
怖い。
死の恐怖。
ホムンクルスにはない概念だった。
それをはっきりと感じていた。
「案外、呆気なかったわね。所詮はイミテーションだもの。心がないせいかしら?」
ユリナは目を細め、見やる――視線の先には大きな蛇がいる。
樹齢百年を超えた巨木が楊枝程度に見える。
小山と見紛うばかりの大きな蛇だった。
その鱗は陽光に煌き、純白で美しい。
そして、ユリナの半身でもある。
正確には巨大な蛇の頭から、彼女の腰から上――おおよその上半身が生えていると言った方が正しい。
物質界でのユリナはあくまで人として生きている。
伴侶の麗央は人の強さと弱さを知っているがゆえに人であることに拘りを持つ。
そうである以上、麗央を愛するあまり、病的な彼女もそうであろうとするからだ。
しかし、彼らには本来、有する神格と呼ばれる姿がある。
人としての姿はあくまで現身(うつしみ)に過ぎない。
現身と分霊は似ていて非なるものだ。
どちらも本来の姿から分かれしモノである点は同じだが、分霊は各々が個性を有した別個体と言っていい。
ところが現身は本来の個性をそのまま引き継いだ忠実な分身である。
ある程度の制限がかけられたリモートワークに近い。
そして、彼ら本来の姿――本体は地球とは異なる別の惑星に隠されているのだ。
ユリナの半身半蛇の姿は本来の姿と現身を丁度、半々に具現化したものとも言えた。
リュウの因子と呼ばれる特殊な因子が強く影響している。
本来の姿は人が見て、正気を保てるかどうも怪しい。
神々しいゆえなのか、禍々しいゆえなのか。
それは誰にも分からない。
生きているモノで見たモノがいないからだ。
現身であるユリナからすれば、第二形態と呼ぶに相応しい半身半蛇の姿でも、あばら家にも等しい小屋一つを噛み砕き、咀嚼することなど訳はなかった。
ただ、彼女はそのような無駄な行為に及ばない。
なぜなら、その地は彼女の唄で開かれた夢幻の世界、絶対領域(アブソリューターベライヒ)。
そこでの絶対者は彼女である。
囚われた者にある過酷なルールが適用される。
直接、手を下す必要がないのだ。
夢幻の世界でもっとも重要なのは心だった。
そして、夢幻の世界で死を迎えたからといって、現実の世界で死んでいる訳ではない。
夢幻の世界で死を迎えているのは心である。
それゆえに絶対者ユリナの望むがまま、何度でも死を体験させられる。
心が完全に死ぬまで何度でも繰り返されるのだ……。
心を完全に殺された者がどうなるのか。
現実世界に戻ったとしても廃人になるか、狂人になるかの二択と言っていいだろう。
ホムンクルスは仮初の命を持つ者、創造されし者である。
心を持たないがゆえに強いと考えるのは早計だった。
心を持たないがゆえに、肉体が持たないのだ。
だから、肉体が自壊する。
ホムンクルスであっても、もしも心を持っていれば、そうはならない。
スバルは外側だけをそっくりそのままに創造された模造品に過ぎなかった。
心がない。
だから、非常に脆かった。
オリジナル体の有するトラウマを何度も見せ、完膚なきまでに壊し尽くすだけで簡単に蹂躙出来るのだ。
「レオが心配してるかしらぁ? 早く戻らなきゃ……」
さすがにユリナも冷静さを取り戻した。
つい怒りに任せるがまま、夢幻の世界を開いた。
多少の無茶をしても麗央が守ってくれる。
彼の優しさに甘えた自分を不甲斐ないとさえ、思った。
目を覚ましてから、いつもより麗央に甘えればいい。
そう納得したユリナだが、そこではたと気付いた。
(んんん? 何か、違う気がするけど)
ともあれ目的を果たした彼女は、夢の世界に別れを告げることを決めた。
それが何を意味するのかは明らかだった。
風もない空間で意思を持つように巻き上がっていた彼女の特徴的なツインテールが、急に力を失う。
同時にユリナ自身も糸が切れた人形のようにゆっくりと崩れ落ちた。
「ふぅ。間に合ったか」
反射的な反応速度で麗央は動いた。
ユリナの体が完全に倒れる前に優しく腕で支えると、そっと抱き寄せたのだ。
彼にとって目の前に敵がいようとも関係なかった。
それ以上にユリナのことが心配で堪らなかったからだ。
儚い美少年――スバルは我知らず、眠りに落ちていたことにようやく気付いた。
ゆっくりと瞼を開ける。
何が起きたのかも全く、分からない。
寝起きのせいなのか、頭の回転が鈍い。
己が意識を失っていたことすら、思い出せなかった。
(眠っていた? この僕が? 眠る? 僕が? 何で?)
まず、驚いたのは古びた木製のロッキングチェアに自分が腰掛けていることだった。
だが、それ以上の事実が、彼に恐怖するという感情を与えた。
怯えたのには理由があるのだ。
スバルは自問する。
眠る必要性が無い生命体として、作られた完璧な存在であるはずの自分が僅かとはいえ、意識を喪失した。
驚くべき事実であり、恐るべき事実だった。
スバルは人間ではない。
大魔導を名乗ったのはそうするよう、創造主から、命ぜられたからに過ぎない。
主は双子の女神であり、水の強壮なる大神に連なる御子だった。
大神は星の彼方より、到来した蕃神と呼ばれる存在である。
彼らの力を垣間見た人間が、神を夢想し、神話が作られたと言われている。
彼らによって創造されたスバルの正体は人造人間(ホムンクルス)の亜種なのだ。
モデルとなった少年がいた。
オリジナル体と呼ばれる少年の名もスバルであり、蕃神が目を付けるだけの価値がある人間だった。
意に沿わないオリジナルではなく、忠実なコピーを欲した彼らはを完璧に再現すべく、彼を創造したのである。
ところが残念なことに完璧にモデリングが成功したのは、見た目だけだった。
性能に関してはオリジナルに遠く及ばない。
それでも”人”に負けない強さを与えられたのがコピー・スバルだったのだ。
(どうなっているんだ?)
スバルは周囲を見渡し、愕然とした。
狭い部屋だった。
それだけであれば、問題はない。
床が見えないほどに本が積まれている。
己を取り囲むように設置された本棚も本が埋め尽くしていた。
右を見ても左を見ても自然と目に入るのは本だ。
かび臭さが鼻をつき、光すらほとんど感じない薄暗い部屋だった。
なぜか恐怖を感じる。
そのような心を持たないはずのホムンクルスである自分がである。
スバルはそのことに違和感を覚えずにはいられなかった。
「なんだ!?」
その時、部屋が揺れた。
激しく、揺れる。
縦に揺れたかと思えば、横に揺られる。
がさがさと崩れていく本の山。
本棚からも派手な音を立て、本が落ちていった。
スバルはその様子をただ、見ていることしかできない。
そして、言い知れぬ恐怖に囚われた。
昏い。
狭い。
怖い。
死の恐怖。
ホムンクルスにはない概念だった。
それをはっきりと感じていた。
「案外、呆気なかったわね。所詮はイミテーションだもの。心がないせいかしら?」
ユリナは目を細め、見やる――視線の先には大きな蛇がいる。
樹齢百年を超えた巨木が楊枝程度に見える。
小山と見紛うばかりの大きな蛇だった。
その鱗は陽光に煌き、純白で美しい。
そして、ユリナの半身でもある。
正確には巨大な蛇の頭から、彼女の腰から上――おおよその上半身が生えていると言った方が正しい。
物質界でのユリナはあくまで人として生きている。
伴侶の麗央は人の強さと弱さを知っているがゆえに人であることに拘りを持つ。
そうである以上、麗央を愛するあまり、病的な彼女もそうであろうとするからだ。
しかし、彼らには本来、有する神格と呼ばれる姿がある。
人としての姿はあくまで現身(うつしみ)に過ぎない。
現身と分霊は似ていて非なるものだ。
どちらも本来の姿から分かれしモノである点は同じだが、分霊は各々が個性を有した別個体と言っていい。
ところが現身は本来の個性をそのまま引き継いだ忠実な分身である。
ある程度の制限がかけられたリモートワークに近い。
そして、彼ら本来の姿――本体は地球とは異なる別の惑星に隠されているのだ。
ユリナの半身半蛇の姿は本来の姿と現身を丁度、半々に具現化したものとも言えた。
リュウの因子と呼ばれる特殊な因子が強く影響している。
本来の姿は人が見て、正気を保てるかどうも怪しい。
神々しいゆえなのか、禍々しいゆえなのか。
それは誰にも分からない。
生きているモノで見たモノがいないからだ。
現身であるユリナからすれば、第二形態と呼ぶに相応しい半身半蛇の姿でも、あばら家にも等しい小屋一つを噛み砕き、咀嚼することなど訳はなかった。
ただ、彼女はそのような無駄な行為に及ばない。
なぜなら、その地は彼女の唄で開かれた夢幻の世界、絶対領域(アブソリューターベライヒ)。
そこでの絶対者は彼女である。
囚われた者にある過酷なルールが適用される。
直接、手を下す必要がないのだ。
夢幻の世界でもっとも重要なのは心だった。
そして、夢幻の世界で死を迎えたからといって、現実の世界で死んでいる訳ではない。
夢幻の世界で死を迎えているのは心である。
それゆえに絶対者ユリナの望むがまま、何度でも死を体験させられる。
心が完全に死ぬまで何度でも繰り返されるのだ……。
心を完全に殺された者がどうなるのか。
現実世界に戻ったとしても廃人になるか、狂人になるかの二択と言っていいだろう。
ホムンクルスは仮初の命を持つ者、創造されし者である。
心を持たないがゆえに強いと考えるのは早計だった。
心を持たないがゆえに、肉体が持たないのだ。
だから、肉体が自壊する。
ホムンクルスであっても、もしも心を持っていれば、そうはならない。
スバルは外側だけをそっくりそのままに創造された模造品に過ぎなかった。
心がない。
だから、非常に脆かった。
オリジナル体の有するトラウマを何度も見せ、完膚なきまでに壊し尽くすだけで簡単に蹂躙出来るのだ。
「レオが心配してるかしらぁ? 早く戻らなきゃ……」
さすがにユリナも冷静さを取り戻した。
つい怒りに任せるがまま、夢幻の世界を開いた。
多少の無茶をしても麗央が守ってくれる。
彼の優しさに甘えた自分を不甲斐ないとさえ、思った。
目を覚ましてから、いつもより麗央に甘えればいい。
そう納得したユリナだが、そこではたと気付いた。
(んんん? 何か、違う気がするけど)
ともあれ目的を果たした彼女は、夢の世界に別れを告げることを決めた。
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