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第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様
第40話 野生の野良先生が現れた
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『名も無き島』の島まるごと農園計画は順調に進んでいて、最初は難色を示していたお舅様も今では率先して、鍬を握っているくらいに……。
でも、軌道に乗っていないことが一つある。
それがわたしの悩みの種にもなってますの。
「リーナ。また、折れちゃった……」
これでレオが折った剣は何本目かしら?
ミスリル製のロングソードでもダメなんて。
物入れにたくさん物が入っているから、どれか一つくらいまともにレオが使える物があるのではないかと考えて、色々と試してもらったのよね。
「どうなってるの?」
「どうなってるも何もあいつの力が強すぎるだけでしょうよお」
肩を竦ませて、お道化るネズミ君があまり、役に立っていないわ。
まぁ、仕方ないかしら?
ネズミ君は戦士ではなく、魔法使いですもの。
「ごめん、リーナ」
「気にしないで。まだまだ、たくさんあるのよ? レオ君がちゃんと使える武器がいるわね」
眉尻を下げて、本当にすまなそうにしているレオを見ると何か、助けになることをしてあげたいと思うの。
今のところ、これといった打開策を見つけられないまま。
お舅様もネズミ君にも特にいいアイデアはないみたい。
それも仕方ないとは思いましてよ?
ここは絶海の孤島で外界とは隔たれているようなもの。
「まぁ。そのうち、なんとかなるわ」
「リーナってさ。たまに本当にお姫様なのか、怪しいよね?」
「レオ君はたま~に失礼なこと言うわね」
彼を威圧するように腰に手を当てて、挑発的なポーズをとってみる。
でも、レオは頭を右手で掻きむしりながら、はにかむような笑顔を浮かべるんですもの。
わたしもつられて、つい笑ってしまうの。
その日もいつものように農産物の様子を見て回ってから(勿論、手を繋いでだから♪)、我が家に戻ったのです。
ところがいつもと違ったのは神妙な面持ちのお舅様と見知らぬ男性の姿があったこと……。
「誰だろう?」
「さぁ? わたしも知らない方ですわ」
小声でレオと相談していると、席に着くようにと促されたので仕方がありませんわ。
それでもレオと指まで絡めた手は決して、離しませんけど!
不思議な雰囲気の人だわ。
年は二十代から三十代といったところに見えますけど、少年としての幼さを残した青年のように見えるかと思ったら、老け込んだ老人のようにも見える。
どうなっているのかしら?
癖の無い直毛でちょっと頭を動かしただけで揺れる肩口まである青みがかった金色――灰色の金髪。
暗緑色の瞳を宿した切れ長の目。
鼻筋が通った彫りの深い面構え。
これは……
「まるでヒーローですわ」
「うん。絵本に出てくる王子様みたいだね」
レオとこうして、こそこそと小声で話し合うのも悪くないと思うのよね。
秘密を共有しているみたいで何だか、嬉しいんですもの。
「ね?」
「ん?」
彼は急に同意を求められて、きょとんとした顔をしているけどその表情すら、わたしには愛おしくて、仕方がないの。
「コホン。そろそろ、話を切り出してもいいか? この御方はシグムンド卿だ。お前達が良く知っているアレだ、アレ」
アレだけで通じると考えるお舅様も十分にアレでしてよ?
「伝説の勇者様だ!」
レオは興奮した様子で勢いよく、立ち上がりましたけどそれよりも驚いたのはその伝説の勇者様の一言でした。
「そうだす。わたすが勇者シグムンドだす」
真面目な顔で顔色一つ変えずにそう言い切った瞬間、部屋の中に何とも言えない気まずい空気が流れたのは気のせいではないと思いますわ。
日没が間近なことを知らせるかのように窓から差し込んでくる茜色の光がとても、きれいなので現実を逃避することにしました。
わたしは何も聞いてないですわ~!
でも、軌道に乗っていないことが一つある。
それがわたしの悩みの種にもなってますの。
「リーナ。また、折れちゃった……」
これでレオが折った剣は何本目かしら?
ミスリル製のロングソードでもダメなんて。
物入れにたくさん物が入っているから、どれか一つくらいまともにレオが使える物があるのではないかと考えて、色々と試してもらったのよね。
「どうなってるの?」
「どうなってるも何もあいつの力が強すぎるだけでしょうよお」
肩を竦ませて、お道化るネズミ君があまり、役に立っていないわ。
まぁ、仕方ないかしら?
ネズミ君は戦士ではなく、魔法使いですもの。
「ごめん、リーナ」
「気にしないで。まだまだ、たくさんあるのよ? レオ君がちゃんと使える武器がいるわね」
眉尻を下げて、本当にすまなそうにしているレオを見ると何か、助けになることをしてあげたいと思うの。
今のところ、これといった打開策を見つけられないまま。
お舅様もネズミ君にも特にいいアイデアはないみたい。
それも仕方ないとは思いましてよ?
ここは絶海の孤島で外界とは隔たれているようなもの。
「まぁ。そのうち、なんとかなるわ」
「リーナってさ。たまに本当にお姫様なのか、怪しいよね?」
「レオ君はたま~に失礼なこと言うわね」
彼を威圧するように腰に手を当てて、挑発的なポーズをとってみる。
でも、レオは頭を右手で掻きむしりながら、はにかむような笑顔を浮かべるんですもの。
わたしもつられて、つい笑ってしまうの。
その日もいつものように農産物の様子を見て回ってから(勿論、手を繋いでだから♪)、我が家に戻ったのです。
ところがいつもと違ったのは神妙な面持ちのお舅様と見知らぬ男性の姿があったこと……。
「誰だろう?」
「さぁ? わたしも知らない方ですわ」
小声でレオと相談していると、席に着くようにと促されたので仕方がありませんわ。
それでもレオと指まで絡めた手は決して、離しませんけど!
不思議な雰囲気の人だわ。
年は二十代から三十代といったところに見えますけど、少年としての幼さを残した青年のように見えるかと思ったら、老け込んだ老人のようにも見える。
どうなっているのかしら?
癖の無い直毛でちょっと頭を動かしただけで揺れる肩口まである青みがかった金色――灰色の金髪。
暗緑色の瞳を宿した切れ長の目。
鼻筋が通った彫りの深い面構え。
これは……
「まるでヒーローですわ」
「うん。絵本に出てくる王子様みたいだね」
レオとこうして、こそこそと小声で話し合うのも悪くないと思うのよね。
秘密を共有しているみたいで何だか、嬉しいんですもの。
「ね?」
「ん?」
彼は急に同意を求められて、きょとんとした顔をしているけどその表情すら、わたしには愛おしくて、仕方がないの。
「コホン。そろそろ、話を切り出してもいいか? この御方はシグムンド卿だ。お前達が良く知っているアレだ、アレ」
アレだけで通じると考えるお舅様も十分にアレでしてよ?
「伝説の勇者様だ!」
レオは興奮した様子で勢いよく、立ち上がりましたけどそれよりも驚いたのはその伝説の勇者様の一言でした。
「そうだす。わたすが勇者シグムンドだす」
真面目な顔で顔色一つ変えずにそう言い切った瞬間、部屋の中に何とも言えない気まずい空気が流れたのは気のせいではないと思いますわ。
日没が間近なことを知らせるかのように窓から差し込んでくる茜色の光がとても、きれいなので現実を逃避することにしました。
わたしは何も聞いてないですわ~!
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