わたしの旦那様は小さな勇者~お姫様と勇者のスローライフ~

黒幸

文字の大きさ
上 下
43 / 85
第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様

第38話 お姫様の人に言えない趣味

しおりを挟む
 窓から、差し込んだ月の光が照らすパメラの身体は幻想的でありながら、どこまでも魅惑的にアベルの心を捉えて、離さなかった。

「私は君だけを愛すると誓おう」
「アベル様」
「本当にいいのかな?」
「ええ。お願いします。勇者様」
「分かった。お姫様」

 アベルの手はパメラが纏っていた薄絹を取り払うと彼女の体を優しく、寝台の上に寝かせた。
 パメラは既に身を隠すもの一つない生まれたままの姿でいるのが恥ずかしいのか、身を捩るがそれがかえって、アベルの劣情を刺激する。

「パメラ。じっとして」
「は、はい」

 アベルの手がパメラの敏感な花弁に触れると蜜が溢れ……

「リーナ、何を読んでるんだい?」
「うっきゃあああああ」

 わたしは慌てて、起き上がり、読んでいたロマンス小説を慌てて、背中に隠しました。
 全くもう、心臓に悪いわ……。

「何か、隠さなかった?」
「し、知らないわ!? レオの気のせいじゃない?」

 実はパ・シェル・ブーク百貨店で島に必要な種子だけでなく、新刊のロマンス小説も買っていたのよね。
 それも刺激が強いので読んではいけないと言われていたのを……。

 今、読んでいたのは『勇者と姫の秘密の睦み事』というタイトルの典型的なロマンス物語。
 魔王に攫われたお姫様を助けた勇者がそのお姫様と結ばれるだけだから、特に変哲の無いストーリーですけど、つい二人の逢瀬に自分とレオの姿を重ねてしまうの。

「ふーん。そうなんだ。気のせいかー。あっー! ピーちゃんが巨大化してる!」
「嘘ぉ!?」

 小鳥サイズのピーちゃんが巨大化するなんて、一大事よ。
 大変だわ。
 大変!? レオに本を取られましたわ。

「まさか、あんな簡単なのに引っかかるとは思わなかったよ」
「ちょっと! レオ!! それはダメ! 君はまだ、大人じゃないでしょ? 返してぇ、お願いだからぁ」
「そう言われると逆に気になるんだよ」

 レオにまんまと担がれるなんて、思っていなかったから、わたしがうっかりなのではないですからね?
 そんなことよりもレオが本を読もうとしている方が大問題ですわ~。
 わたしの人生が終わってしまいましてよ!

「えーと、あーアベルのか、かたく? あ、熱いに、肉のつー、つるぎがパメラのかー。かーべん? を開き、ひー、ひ、ひしょにつきい」
「ダメぇ!!」

 無我夢中でレオを止めようとした結果、かえって状況が悪化した気がするわ。
 これではわたしがレオを押し倒して、襲っているようにしか、見えないのですけど!
 完全に馬乗りになっていて、彼の腰の上に女の子座りしてますもの。

「どうしたの、リーナ?」
「レオ君。その本、早く返して」
「なんで? 文字を覚える勉強になるよ」

 そこで君は何で満面の笑みを浮かべるのかしら~?
 内容がアレだから、レオが悪い子になってしまうわ。

「んっ……それは君が覚えるにはまだ、早いの」
「リーナはいいの?」
「わ、わたしはほら! 大人ですから?」
「ふーん。本当かな?」
「何よ、レオ君。疑ってますの? 正真正銘、わたしは大人でしょ?」
「ふぅーん」

 彼の上に乗った状態で胸を張るのも変ですけど、胸を張ってみるとなぜか、見られているような……。

「確かにこういう視点で見るとリーナの胸は僕と違うよね。えっと」
「だぁからぁ! その本を見ちゃダメだってばぁ!」
「分かった! リーナのおっぱいだね!」
「ど、どこ見てるのよ!? レオ君、悪い子になっちゃったの?」
「どこって、僕は普通に前を見ているだけだよ」

 悪い子にはなってないわね……。
 うん。
 真っ直ぐ、前しか見ていないし、澄んだ真っ直ぐな瞳ですわ。
 ただ、真っ直ぐに胸を凝視されても困るのですけど!?

 慌てて、両手で胸を隠したのはいいですけど、何か、お尻に当たっているのよね。
 何ですの?

「リーナが恥ずかしがっていると何か、新鮮でかわいいね」
「か、かわいい? そう? 君にそう言われると嬉しいかも」
「リーナはかわいいよ」

 即答なの!? そんなストレートに言われると破壊力が高すぎるわ。
 それにしても何なのかしら? さっきから、当たっているのは……。

「ねぇ、レオ。さっきから、これは何なの?」
「え? 何の話?」

 レオはきょとんとして、目を丸くしたままで本当に分からないみたい。
 仕方ないので手で探って、触ると何か、硬くて熱を持った物がお尻に当たっているのです。

「これだってば」
「リーナ、痛いよ」
「え?」
「うん?」

 思い切り、掴んだらレオが痛がっているということはもしかして、このグニュとするわたしが握っているのは……

「も、も、もしかして、レオ君……これって?」
「どうしたの?」
「きゃうんっ」

 最近、悲鳴を上げて気絶していることが多くありません?
 なんて、冷静なのに妙なことを考えながら、わたしの意識は徐々に暗闇に囚われていく……。
 うん、この判断は間違っていないと思うのよ?



 目を覚ますとちゃんとベッドに寝かせてくれているんですもの。
 レオは優しいわ。
 だから、大好き♪ と思ったら、彼と目が合いました。
 手にはあの本がしっかりと握られていて、まさに読み耽っていたところ!

「大丈夫? これ、良く分かんないだけど、リーナにもしたら……あれ? リーナ?」

 わたしは再び、意識を手放して逃げることにしました。
 この判断も間違ってないと思いますわ。

 純朴な彼のことですもの。
 これをどうするの?
 どうなっているのかな?
 リーナのを見せて欲しいな!

 絶対、なぜなに攻撃が始まる未来が見えるんですもの。
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

処理中です...