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第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様

第28話 乙女心は複雑

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 手直しが終わったコート・ドレスを受け取り、着替えたので防具の準備は完了ですわ。
 太腿が露わになってますけれど、こればかりは仕方がないかしら?
 たまにから、この方が動きやすいですもの。
 ただ、袖が鳥の翼のように広がるデザインなので気を付けないと危ないですわね。

 次はレオの武器を探す為、武具類を扱う階に移動でしてよ。
 階段を上がっている途中でレオがなぜか、チラチラとこちらを窺ってくるのですけど……何ですの?

「何ですの?」
「だってさ。リーナのたくさん見えているから、気になるんだよ」
「やだぁ、えっちぃ! レオもおませさんになったわね♪」
「ち、違うよ!? ただ、他の人がリーナを見る目が気になって……あれ?」

 それがおませになったということですわ。
 君の中でわたしが気になる存在になっている証拠だと思えて、嬉しいけど!

「心配は嬉しいですけど、君にしかと言ったでしょう?」
「でも、気になるよ」
「だって、わざと見せているんですもの」
「え? どういうこと?」
「ん? そういうことよ? レオ君には早かったかしら?」

 もしかして、レオはわたしがアピールしていることに気が付いてませんでしたの?
 先が思いやられる事実ですわ。
 分かってはいましたけど……。

「お二人さん。いちゃつくのはいいけどよお。別れて、探すのかい?」

 ネズミ君はふざけているようで意外と真面目なのね。
 この百貨店という場を冷静な目で捉えていて、レオの性格も把握しているといったところかしら?

 繋いでいる手を振りほどいたら、レオは好奇心の赴くままにあちこちに行ってしまうもの。

「いいえ。迷子になったら、困るでしょう? ちゃんと手を繋いでおきましょう。ねぇ、レオ」
「うん」
「ちょい。俺も迷子になるってえ」

 ネズミ君が迷子になるのは鼻の下を伸ばして、行き交う女の子に気を取られ過ぎのせいだと思いましてよ?
 レオは絶対にそんなことをしませんもの。

 今だって、手を繋いでわたしを見ていてくれ……ないですわね。
 見たことがないたくさんの武器に心がときめいている感じかしら?
 良くも悪くも素直なのよね。

 さてとネズミ君という雑音は無視しておいて、まずは……

「あら? あれはもしかして」
「どうしたの、リーナ?」

 レオの武器を見つける前に見つけてしまいましたわ。
 あれはわたしが使えそうな……いえ、わたしにしか、使えない物ではなくって?
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