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11.5 その頃の王都

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 マイメエントの王城、玉座の間には王をはじめとした国の重要人物が集まっていた。

「……皆揃っているな」

 マイメエント王が重々しく口を開く。

「集まってもらったのは他でもない……闇の聖女についてだ」

 その言葉に全員の表情が険しくなる。王は内心気が進まないながらも話しはじめた。

「闇の聖女が逃亡してから五日経った。私を含め皆すぐに捕まるだろうと考えていたが、いまだ痕跡さえ掴めていない」

 臣下たちの反応は様々で安堵する者もいれば苛立っている様子の者もいる。
 長引けばまた言い争いがはじまるだろうと王は言葉を続ける。

「そこで、本日より人員を増やし捜索範囲も国全体に広げる。指揮は今まで通りアオキロスに任せる。先に厳命した通り闇の聖女について語らぬこと、傷つけず捕縛すること、これを厳守するように言ってある」

 本来近衛騎士であるアオキロスがこのような任を任されることはないのだが、兵の殆どは派閥どちらかの息がかかっているため『問題が起こらないように』信頼厚い彼が選ばれた。

「皆思うことはあるだろうがまずは捕らえてからだ。それまで誰の介入も許さぬ。よいな?」

 王は持てる限りの威厳を言葉に込めた。

 臣下たちはなにか言いたそうな顔をしているが、お互いを牽制するように黙って頭を下げた。

「介入は許さぬか……ならばなぜワシを呼んだ?」

 そんな中言葉を発する人物がいた。

 茶色を基調とした質素ながらも品位を感じさせるローブをまとった老婆が王を睨んでいる。

「……地の聖女よ。貴女たち聖女には万が一に備えていてもらいたい」

 王はなんとか表情を引き締めているが、胃が全力で悲鳴を上げており気を抜けば情けない声が出そうになっていた。

 王と聖女。立場は当然王が上なのだがこの100歳を超える聖女に限ってはこの国の誰も頭があがらなかった。

「万が一、ね。アンデッドなら対応するが人間はお前さんたちがなんとかするんだよ」

「それはもちろんだ。貴女に仕事以外の面倒を頼みはしない」

「どうだかね……まぁなにか進展があったらちゃんと連絡しとくれよ」

 そう言って地の聖女は年齢を感じさせないしっかりとした足取りでひとり玉座の間を後にした。

「……以上だ。これにて解散」

 地の聖女が立ち去った後、王の絞り出したようなかすれた声に臣下たちは無言で従った。

「……どうして俺が王になった途端面倒ごとばかり……」

 最後に残された王は、大きくため息をついた。


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