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1 逃走
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「ごめん、姉さん。もう一回言って」
「この後一発ヤらないかい?」
「いや、そこじゃなくて、いや、そこもだけど……え? ティナとサーラを妻に娶る? 何で?」
「何でって言われてもね。知っての通り神の血筋とも伝えられる聖王の血ってメッチャ貴重じゃない。特に聖王様が張られている結界。あれがないと普通に魔族が入ってくるし」
「確かに父さんが張ってる結界は凄いけど」
国を丸ごと覆って中に魔族が入ってこないようにするなんて、他のどんな王にだって出来ないことだ。
「いや、あれは凄いってレベルじゃないわよ。弟君も他の国にいってみればわかるけどさ、魔族の侵入を完全に遮断できる結界ってマジで反則だから。もうこれなしじゃ生きていけないってレベルだから」
興奮しているのか、ルル姉さんの炎のような紅い髪と瞳が魔力で淡く輝いた。
「で、でも、それとティナ達のことと、どう繋がるの?」
「ん? 普通に繋がるでしょう」
唐突にフワリ、と羽のような柔らかさで間合いを詰められる。
(姉さんって、本当に良い匂いだ)
何て考えているとーー
「魔族に負けないためにも、決して聖王の血筋は絶やせないのよ」
チュッ、と頬に唇が当たった。
「ね、姉さん!?」
「ふふ。口にされると思った? ねぇねぇ、されると思っちゃった?」
「そ、そんなこと思うわけないじゃないか!」
「そう? 私は弟君が望むならどこにだってキスしてあげちゃうんだけどな~」
「ど、どこにでも?」
ついつい俺は姉さんのぷっくらと膨らんだ薄紅色を凝視してしまう。
「どうする? どうしてほしいのかな? ほら、ほら。お姉ちゃんに言ってみて」
黒いロンググローブに包まれた手がからかうように頭を撫でてくるので、俺は慌ててそれを払いのけた。
「ああ、もう。話を戻すけど、子供を作る必要があるのは分かった……と言うか分かってたけど、それがどうしてあの二人なの?」
「あれ? ひょっとして知らない……わけないわよね。聖王の血族は特定の相手としか子供が作れないこと」
「え? あ、そういえばロイド兄さんがそんなことを言ってた気が……」
「だから以前より弟君の血を使って相性の良い相手を探す調査をしてたんだけど、この間その結果が出たんだって」
「それがティナとサーラ?」
「そう。それと私ね。国中の実力者の血を調べたから候補はもう少しいたけど、確率が高いのがこの三人ってことらしいわ」
説明に飽きてきたのか、ルル姉さんは自分の体を魔力で包むとふわふわと浮き始めた。
「それでティナとサーラはこの事を」
「今日、それぞれの当主から伝えられることになってるわ」
「ああ、さっきの……」
「そういうこと。明日から二人は弟君の婚約者だから」
「なんてこった」
思いもよらぬ展開に思わず頭を抱える。
「ちょっと弟君? その反応は失礼じゃないかな? 私は当
然としてティナもサーラも可愛いじゃない」
「いや、今まで幼馴染みとしてしか見てなかったのに急にそんなこと言われても……正直困る」
「贅沢な話ね~」
宙を泳いだ姉さんが背後から俺の体を抱き締める。そして耳元でそっと囁くのだ。
「それはそうと弟君。お姉ちゃんへの種蒔きはいつ行うのかな?」
頬にかかる甘い吐息。姉さんの手が俺のーー
「って、や、やらないからぁああああ!!」
俺はティナとの訓練では決して見せない全力をもって、その場から逃走した。
「この後一発ヤらないかい?」
「いや、そこじゃなくて、いや、そこもだけど……え? ティナとサーラを妻に娶る? 何で?」
「何でって言われてもね。知っての通り神の血筋とも伝えられる聖王の血ってメッチャ貴重じゃない。特に聖王様が張られている結界。あれがないと普通に魔族が入ってくるし」
「確かに父さんが張ってる結界は凄いけど」
国を丸ごと覆って中に魔族が入ってこないようにするなんて、他のどんな王にだって出来ないことだ。
「いや、あれは凄いってレベルじゃないわよ。弟君も他の国にいってみればわかるけどさ、魔族の侵入を完全に遮断できる結界ってマジで反則だから。もうこれなしじゃ生きていけないってレベルだから」
興奮しているのか、ルル姉さんの炎のような紅い髪と瞳が魔力で淡く輝いた。
「で、でも、それとティナ達のことと、どう繋がるの?」
「ん? 普通に繋がるでしょう」
唐突にフワリ、と羽のような柔らかさで間合いを詰められる。
(姉さんって、本当に良い匂いだ)
何て考えているとーー
「魔族に負けないためにも、決して聖王の血筋は絶やせないのよ」
チュッ、と頬に唇が当たった。
「ね、姉さん!?」
「ふふ。口にされると思った? ねぇねぇ、されると思っちゃった?」
「そ、そんなこと思うわけないじゃないか!」
「そう? 私は弟君が望むならどこにだってキスしてあげちゃうんだけどな~」
「ど、どこにでも?」
ついつい俺は姉さんのぷっくらと膨らんだ薄紅色を凝視してしまう。
「どうする? どうしてほしいのかな? ほら、ほら。お姉ちゃんに言ってみて」
黒いロンググローブに包まれた手がからかうように頭を撫でてくるので、俺は慌ててそれを払いのけた。
「ああ、もう。話を戻すけど、子供を作る必要があるのは分かった……と言うか分かってたけど、それがどうしてあの二人なの?」
「あれ? ひょっとして知らない……わけないわよね。聖王の血族は特定の相手としか子供が作れないこと」
「え? あ、そういえばロイド兄さんがそんなことを言ってた気が……」
「だから以前より弟君の血を使って相性の良い相手を探す調査をしてたんだけど、この間その結果が出たんだって」
「それがティナとサーラ?」
「そう。それと私ね。国中の実力者の血を調べたから候補はもう少しいたけど、確率が高いのがこの三人ってことらしいわ」
説明に飽きてきたのか、ルル姉さんは自分の体を魔力で包むとふわふわと浮き始めた。
「それでティナとサーラはこの事を」
「今日、それぞれの当主から伝えられることになってるわ」
「ああ、さっきの……」
「そういうこと。明日から二人は弟君の婚約者だから」
「なんてこった」
思いもよらぬ展開に思わず頭を抱える。
「ちょっと弟君? その反応は失礼じゃないかな? 私は当
然としてティナもサーラも可愛いじゃない」
「いや、今まで幼馴染みとしてしか見てなかったのに急にそんなこと言われても……正直困る」
「贅沢な話ね~」
宙を泳いだ姉さんが背後から俺の体を抱き締める。そして耳元でそっと囁くのだ。
「それはそうと弟君。お姉ちゃんへの種蒔きはいつ行うのかな?」
頬にかかる甘い吐息。姉さんの手が俺のーー
「って、や、やらないからぁああああ!!」
俺はティナとの訓練では決して見せない全力をもって、その場から逃走した。
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