剣になった魔神様

名無しの夜

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「大丈夫、お母さんは治る」

 大人達がパニックを起こしている中、元凶であるマリは酷く落ち着いていた。しかし透過とは。魔神である俺様は人間が扱えるありとあらゆる魔術を行使できるが、剣となった身ではそれも簡単なことではない。正直さっき刀身を巨大化させた時も想像以上にマナを消費して、内心「やべっ」となったくらいだ。しかし今は透過という術的現象を行使しているにも関わらず、マナの消耗がまるでない。いや、正確にいうならばマリのマナが使われている。所有者がマナを注ぐことで所有者のマナの性質に合わせた魔術が発動する。なるほど。これが剣としての俺様の能力なのか。

「魔剣ちゃん……お願い」

 瘴気を吸えと、マリは俺様にそう言っている。物質透過を行えたなら瘴気の除去くらいできそうなものだが、やはりマリが俺様を使って発動できるのは能力は一つだけなのか。いつまでも剣でいるつもりはないが、剣として在る以上、その辺りもその内ちゃんと調べておく必要がありそうだ。何はともあれ今はマリ母を助けてやるとするか。

 そんなわけで俺様はマリ母の体を侵す瘴気を吸い上げた。純粋なマナではないので吸収するのに幾つかの工程を挟まなければならず、結果として俺様の腹に収まるエネルギーは雀の涙となった。割のいい食事ではなかったが、治療としては大成功だ。

「へっ!? えっ!? こ、これはもしかして……ふっかぁああああああつ!! 私、ふっかぁああああつ!!」

 マリ母の全身からマナが吹き荒れる。それに部屋の全員が一斉に吹き飛んだ。

「ふぎゃあああ!?」
「ぬぎゃあああ!?」

 男達が叩き潰された虫の如く壁に貼り付く中、マリとメイドだけは垂直に立つような形で壁に着地。そのまま難なく地面に生還を果たした。

「漲るぅうう!! 力がこれでとかと漲ってくるわぁあああ!!」

 溢れるマナでマリ母の髪が逆立ってる。初対面の印象では落ち着いた大人の女に見えたが、中々にファンキーな一面があるようだ。

「……お母さん?」
「マリ!? ああ、マリ」

 俺様という剣を持ったマリとマナの噴出で髪を逆撫でたマリ母が向かい合う。母親の完治を祝う感動の場面なんだろうが、絵面だけ見るとバトルでも初めそうだ。無論、そんなことは起こらず、二人はヒシリと抱き合った。

「お母さん、元気?」
「元気よ。私はもう、すっごい元気」
「うぉおおお!! マリーナ様が完治された! うおぉおおおお!!」
 
 メイドが歓喜の声を上げる。中々のボリュームだ。気のせいか、この館の人間、無駄にうるさい気がする。
 
「奇跡や! これは奇跡や!!」
「ソードアート家、万歳! ソードアート家、万歳!」
 
 いや、やはり気のせいではないな。壁に張り付いていた男共が大声を上げて、何事かとやってきた他の使用人までおおはしゃぎ。信じられないことに、そのまま街全体を巻き込んでちょっとした祭りが始まった。
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