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167 癒しのセラスティーヌ
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「全く無茶をする」
「え? あれ? ここは?」
気付けば私は真っ白な部屋の中にいた。……部屋? 部屋なのかな、ここ。
「えっと、私は確か……」
ラミアと戦って、それからーー
「そうだ! アリリアナ!? アリリアナは?」
「落ち着け。小娘ならピンピンしておる。むしろお主の方がよほど危なかったぞ。もしも儂があとほんの少しでも遅れたならば、お主は助からなかっただろう」
「えっと……」
誰だろう、この子?
目の前で蒼い髪と瞳をしたエルフの女の子が腕を組んでふんぞり返ってる。
「ん? なんじゃ。感謝の言葉もないのか? この可愛い頭を撫でて褒めてあげようとか思わんのか? ん?」
ど、どうしよう。すごくグイグイくるんだけど。でも凄く可愛い子だ。正直、ラーちゃんの影響でエルフの子供に苦手意識を持ちかけていたけど、そんなものを吹き飛ばす可愛らしさだ。
何もない空間にこんな可愛い子と二人っきり。唐突すぎる。ひょっとしてこれは……夢? 私、夢を見ているのかな。
「大量の出血に、魔力欠乏症の最終段階。お主を蘇生させるのは骨が折れたぞ。ギリギリすぎてマテリアルに以上をきたしていないか、こうして精神感応で確認にきたが、その様子では問題なさそうじゃな。カッカッカ。どうじゃ? 偉くて凄い儂の頭を撫でたくなったじゃろう」
なんでこの子、こんなに頭撫でられたいのかな? これが夢なら、私の願望……とかじゃないよね?
「どうしたんじゃ? 遠慮するでない。ほら、ほら、ほら」
す、凄い積極性。どうしよう。なんだか本当に私の願望な気がしてきた。
「そ、それじゃあちょっと失礼して」
「うむ。存分に失礼するがよい」
私は少女の蒼い髪を撫でた。サラサラとした絹のような手触り。そういえば昔はアリアの頭をこうしてよく撫でてあげてたっけ。あの時のアリア、いつも私の後ろをちょこちょこついてきて可愛いかったな。それなのに私が勝手な対抗意識を持ったせいで、いつの間にか関係がギクシャクしちゃったんだよね。
「どうじゃ? 気が済んだか?」
可愛らしいエルフがご満悦な表情で私を見上げる。いや、もうこれはエルフじゃない。アリアだ。きっとアリアのイメージとラーちゃんのイメージが混ざってこんな姿になったんだ。
私はエルフアリアを抱き抱えてギュッとした。
「おっ!? なんじゃなんじゃ。意外とアグレッシブじゃな。うむ。苦しゅうない」
「ごめんね、アリア。ダメなお姉ちゃんで」
「いや、儂はアリアではないぞ? 儂の名はーー」
アリアに頬擦りしながら、一層の力で抱きしめる。
「ぬぉおおおお!? な、中々のパワーじゃな」
ここが夢の中なら、私は今走馬灯のようなものを見てるってことなのかな?
「やっぱり私、死んじゃうんだね」
「いや、死にはせん。むしろ今は儂の方がピンチじゃ。死にそうじゃ」
心細さからアリアを抱きしめている腕に自然と力が入る。
「うぉおおおおお!? ア、アカン! これはプリティーな儂にはアカン圧力じゃ。おい、小娘。今すぐドロテアを起こせ。儂の精神が押し潰される」
「えっ!? 急にどったの? 今コールするか悩んでる感じなんだけど」
え? この声ーー
「アリリアナ!? アリリアナなの!?」
飛び起きる。起きる? やっぱり私寝てた? もう周りは真っ白な空間じゃない。部屋、それもかなり広い部屋だ。やっぱり私夢を見ていた。それじゃあ今の声も夢なの?
「ビ、ビックリしたぁ~。ちょっとドロシー。大丈夫な感じ? そんな急に起きて」
その声に振り返る。そこには床に胡座をかいてエルフ達とカードゲームに興じているーー
「アリリアナ!!」
「わっ!?」
「ぬおっ!?」
アリリアナに抱きついて強く強く抱きしめる。アリリアナ以外の声が聞こえた気がしたけど、そんなことはどうでもいい。彼女が、アリリアナが生きてる。生きててくれた。
「よかった。よかったよぉ~」
「アハハ。ちょっとドロシーったら。もう、大袈裟な感じなんだから」
「お、大袈裟って。全然そんなことないよ。本当に危なかったんだからね」
抱きしめた彼女から伝わってくる体温。夢じゃない。これは夢じゃないんだ。
「ぐぉおお。何故偉くてプリティーな儂がこんな目に。は、離せ。離すのじゃ」
「え? きゃっ?」
お、驚いた。私とアリリアナにサンドイッチにされる形で誰かいる。エルフ? エルフの子供だ。
「あれ? 君は?」
「まったく。のほほんとした顔をして、中々デンジャラスな小娘よな。この圧力娘めが」
「あ、圧力娘? え、え~と、その……ご、ごめんね?」
夢の中に中に出てきた子だ。というかここは……ラミア討伐前に私達がご飯を食べた建物だ。そこに私たちだけじゃなくエルフの人達がたくさん集まってて、食事をしたり、傷の治療をしたり、子供達の面倒を見たりしている。
「もう、セラスティーヌちゃんったら、可愛い顔して結構小言多い感じなんだから。ほら、頭撫でてあげるから笑って。笑って」
「ふっふっふ。良い。良いぞ。もっと撫でるが良い」
アリリアナの膝の上でご満足なエルフの子供。やっぱり可愛い。でもこの子、ただの子供にしては何ていうか、こう、存在感? が強いような……。
「あの、貴方は?」
「む? 儂の名を聞いてもピンとこんとは寝ぼけておるのか? クックック。まぁ良かろう。聞いて驚くがいい。儂はーー」
「ドロシー」
「わっ?」
横合いから突然誰かに抱きつかれた。このロールの巻いた金髪はーー
「イリーナさん?」
「心配しましたわよ。もう動いて大丈夫ですの? 無理してません?」
「えっと……うん。全然平気だよ」
気怠さが少しあるけど、意識を失う前の状態を考えたら嘘みたいに回復してる。
「カッカッカ。この儂が治療してやったのじゃ。なんの心配もいらんわい」
「偉いですわ。流石はセラスティーヌ様ですわね」
セラスティーヌちゃんの頭を撫でるイリーナさん。気を失っていたのがどれくらいの時間かは分からないけど、治療中のエルフの人達がいることからも、ラミアを倒してそれほど時間は経っていないはず。なのにみんな随分とセラスティーヌちゃんに気安い感じがした。
やっぱりこれだけ可愛いからかな。それにしてもセラスティーヌ? どっかで聞いたことがあるような……あれ? 前にもこんなことなかったっけ。あれはそう、確かガルドさんと初めて会った時ーー
「なんじゃ? 喉に小骨でも刺さったような顔をしおって。儂の頭をナデナデしたいなら、素直にそう言わんか」
「ああっ!? セラスティーヌって、セラスティーヌ・イリアリアス!? 三聖の?」
「カッカッカ。その通り、三聖が一人『癒しのセラスティーヌ』とはこの儂のことよ。存分に可愛い儂を讃え、甘やかすがいいぞ」
そう言ってエルフに三人しかいない聖人の一人は豪快に笑った。
「え? あれ? ここは?」
気付けば私は真っ白な部屋の中にいた。……部屋? 部屋なのかな、ここ。
「えっと、私は確か……」
ラミアと戦って、それからーー
「そうだ! アリリアナ!? アリリアナは?」
「落ち着け。小娘ならピンピンしておる。むしろお主の方がよほど危なかったぞ。もしも儂があとほんの少しでも遅れたならば、お主は助からなかっただろう」
「えっと……」
誰だろう、この子?
目の前で蒼い髪と瞳をしたエルフの女の子が腕を組んでふんぞり返ってる。
「ん? なんじゃ。感謝の言葉もないのか? この可愛い頭を撫でて褒めてあげようとか思わんのか? ん?」
ど、どうしよう。すごくグイグイくるんだけど。でも凄く可愛い子だ。正直、ラーちゃんの影響でエルフの子供に苦手意識を持ちかけていたけど、そんなものを吹き飛ばす可愛らしさだ。
何もない空間にこんな可愛い子と二人っきり。唐突すぎる。ひょっとしてこれは……夢? 私、夢を見ているのかな。
「大量の出血に、魔力欠乏症の最終段階。お主を蘇生させるのは骨が折れたぞ。ギリギリすぎてマテリアルに以上をきたしていないか、こうして精神感応で確認にきたが、その様子では問題なさそうじゃな。カッカッカ。どうじゃ? 偉くて凄い儂の頭を撫でたくなったじゃろう」
なんでこの子、こんなに頭撫でられたいのかな? これが夢なら、私の願望……とかじゃないよね?
「どうしたんじゃ? 遠慮するでない。ほら、ほら、ほら」
す、凄い積極性。どうしよう。なんだか本当に私の願望な気がしてきた。
「そ、それじゃあちょっと失礼して」
「うむ。存分に失礼するがよい」
私は少女の蒼い髪を撫でた。サラサラとした絹のような手触り。そういえば昔はアリアの頭をこうしてよく撫でてあげてたっけ。あの時のアリア、いつも私の後ろをちょこちょこついてきて可愛いかったな。それなのに私が勝手な対抗意識を持ったせいで、いつの間にか関係がギクシャクしちゃったんだよね。
「どうじゃ? 気が済んだか?」
可愛らしいエルフがご満悦な表情で私を見上げる。いや、もうこれはエルフじゃない。アリアだ。きっとアリアのイメージとラーちゃんのイメージが混ざってこんな姿になったんだ。
私はエルフアリアを抱き抱えてギュッとした。
「おっ!? なんじゃなんじゃ。意外とアグレッシブじゃな。うむ。苦しゅうない」
「ごめんね、アリア。ダメなお姉ちゃんで」
「いや、儂はアリアではないぞ? 儂の名はーー」
アリアに頬擦りしながら、一層の力で抱きしめる。
「ぬぉおおおお!? な、中々のパワーじゃな」
ここが夢の中なら、私は今走馬灯のようなものを見てるってことなのかな?
「やっぱり私、死んじゃうんだね」
「いや、死にはせん。むしろ今は儂の方がピンチじゃ。死にそうじゃ」
心細さからアリアを抱きしめている腕に自然と力が入る。
「うぉおおおおお!? ア、アカン! これはプリティーな儂にはアカン圧力じゃ。おい、小娘。今すぐドロテアを起こせ。儂の精神が押し潰される」
「えっ!? 急にどったの? 今コールするか悩んでる感じなんだけど」
え? この声ーー
「アリリアナ!? アリリアナなの!?」
飛び起きる。起きる? やっぱり私寝てた? もう周りは真っ白な空間じゃない。部屋、それもかなり広い部屋だ。やっぱり私夢を見ていた。それじゃあ今の声も夢なの?
「ビ、ビックリしたぁ~。ちょっとドロシー。大丈夫な感じ? そんな急に起きて」
その声に振り返る。そこには床に胡座をかいてエルフ達とカードゲームに興じているーー
「アリリアナ!!」
「わっ!?」
「ぬおっ!?」
アリリアナに抱きついて強く強く抱きしめる。アリリアナ以外の声が聞こえた気がしたけど、そんなことはどうでもいい。彼女が、アリリアナが生きてる。生きててくれた。
「よかった。よかったよぉ~」
「アハハ。ちょっとドロシーったら。もう、大袈裟な感じなんだから」
「お、大袈裟って。全然そんなことないよ。本当に危なかったんだからね」
抱きしめた彼女から伝わってくる体温。夢じゃない。これは夢じゃないんだ。
「ぐぉおお。何故偉くてプリティーな儂がこんな目に。は、離せ。離すのじゃ」
「え? きゃっ?」
お、驚いた。私とアリリアナにサンドイッチにされる形で誰かいる。エルフ? エルフの子供だ。
「あれ? 君は?」
「まったく。のほほんとした顔をして、中々デンジャラスな小娘よな。この圧力娘めが」
「あ、圧力娘? え、え~と、その……ご、ごめんね?」
夢の中に中に出てきた子だ。というかここは……ラミア討伐前に私達がご飯を食べた建物だ。そこに私たちだけじゃなくエルフの人達がたくさん集まってて、食事をしたり、傷の治療をしたり、子供達の面倒を見たりしている。
「もう、セラスティーヌちゃんったら、可愛い顔して結構小言多い感じなんだから。ほら、頭撫でてあげるから笑って。笑って」
「ふっふっふ。良い。良いぞ。もっと撫でるが良い」
アリリアナの膝の上でご満足なエルフの子供。やっぱり可愛い。でもこの子、ただの子供にしては何ていうか、こう、存在感? が強いような……。
「あの、貴方は?」
「む? 儂の名を聞いてもピンとこんとは寝ぼけておるのか? クックック。まぁ良かろう。聞いて驚くがいい。儂はーー」
「ドロシー」
「わっ?」
横合いから突然誰かに抱きつかれた。このロールの巻いた金髪はーー
「イリーナさん?」
「心配しましたわよ。もう動いて大丈夫ですの? 無理してません?」
「えっと……うん。全然平気だよ」
気怠さが少しあるけど、意識を失う前の状態を考えたら嘘みたいに回復してる。
「カッカッカ。この儂が治療してやったのじゃ。なんの心配もいらんわい」
「偉いですわ。流石はセラスティーヌ様ですわね」
セラスティーヌちゃんの頭を撫でるイリーナさん。気を失っていたのがどれくらいの時間かは分からないけど、治療中のエルフの人達がいることからも、ラミアを倒してそれほど時間は経っていないはず。なのにみんな随分とセラスティーヌちゃんに気安い感じがした。
やっぱりこれだけ可愛いからかな。それにしてもセラスティーヌ? どっかで聞いたことがあるような……あれ? 前にもこんなことなかったっけ。あれはそう、確かガルドさんと初めて会った時ーー
「なんじゃ? 喉に小骨でも刺さったような顔をしおって。儂の頭をナデナデしたいなら、素直にそう言わんか」
「ああっ!? セラスティーヌって、セラスティーヌ・イリアリアス!? 三聖の?」
「カッカッカ。その通り、三聖が一人『癒しのセラスティーヌ』とはこの儂のことよ。存分に可愛い儂を讃え、甘やかすがいいぞ」
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