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126 予想外の歓迎
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魔動車屋からドロテアの屋敷までは歩いてそこそこの距離があったけど、お父様に何と言って取り次いでもらおうか考えているうちに着いていた。
「き、気まずいかも」
前回アリアに会いに来た時もそうだったけど、もう二度と帰らないつもりで飛び出した家に、こうやって足を運ぶのって気が重い。
こういう時こそ、アリアが唐突に出てきてくれると助かる。私は周囲を見回した。
「アリア? お姉ちゃんだよ、居るなら出ておいで~」
シーン。
返事はなく、遠くで鳴いている虫の声がよく聞こえた。どうやら神出鬼没の妹が姿を見せてくれることはなさそうだ。
「だよね。よ、よし。行くわよ」
いつもの調子で門を潜ろとして、そこではたと足を止める。
「ん? あれ? 訪問文字、鳴らした方がいいのかな?」
いくら実家とは言えあれだけ啖呵を切って出た家なのだ、今更我もの顔で勝手に入るのは問題かな?
少し考えて、私は門の横にある壁、そこに描かれている魔方陣に魔力を通すことにした。訪問文字自体にも魔力が通っているので連絡を取るだけなら触れるだけで大丈夫なんだけど、こうすることで誰が来たのか相手に伝えることができる。もちろん陣に魔力を登録している人に限るけど。
返事は予想より随分と早かった。
「お帰りなさいませ、ドロシーお嬢様。今迎えの者を向かわせますので少々お待ち下さい」
「ハクさん」
術式越しに聞こえてきた声にほっとする。知らない門弟さんが出たら、前回屋敷で暴れた身としてはすごく気まずかった。
「あの迎えは大丈夫です。それよりも入って大丈夫ですか」
「もちろんです。ここは貴方の家なのですから」
ハクさんにそう言われると反論しにくい。
私は恐縮しながらも門をくぐった。門から屋敷まで無駄に距離があるけど、緊張のせいかここまで来る時同様、やけに短く感じた。
心臓の音が凄いことになってるし、屋敷に入る前に深呼吸して気持ちを落ち着けよう。
そう思っていたのにーー
「ええっ!? な、なんで?」
玄関の前に使用人が整列している。私を見るなり彼らは一斉に頭を下げた。
「お帰りなさいませ、ドロシーお嬢様」
「えっと、あの、た、ただいま?」
な、何なの? 今まで王様やラルド王子と一緒でない時にこんな出迎え受けたことなかったのに。
「あの、お父様に会いたいので、取り次いで貰えますか?」
「勿論でございます。お嬢様がお望みであればご当主様はいつでもお会いになられますよ」
この執事さんはどこの時空のお父様のことを話してるのかな? 少なくても私の知っているお父様は私が会いに来たからと言って、諸手を上げて喜ぶような人じゃなかったんだけど。
歓迎はされているものの、素直に喜べない気持ちを抱えて、私は玄関から屋敷の中へと入った。広いロビー。ここでお父様と決闘したのがもう何年も前の事のように思えた。
「上着をお預かりいたします」
「え? えっと……」
スカート履く時に愛用しているローブ似のパーカー。これを脱ぐと短いスカートが一層目立っちゃう。他の場所なら全然平気なんだけど、お父様の前だとーー
過去に頰を打たれた時のトラウマが蘇ってくる。
「お嬢様?」
「えっ? あ、はい。分かりました。……お願いします」
私は脱いだ上着を執事さんに手渡した。
「こちらでごさいます」
まだちょっと怖いけど、もうあの時とは違う。お父様がまた打ってきたって、黙ってやられたりしないんだから。
そう決心した私は、執事さんに続いてお父様のいるリビングルームへと足を踏み入れた。
「き、気まずいかも」
前回アリアに会いに来た時もそうだったけど、もう二度と帰らないつもりで飛び出した家に、こうやって足を運ぶのって気が重い。
こういう時こそ、アリアが唐突に出てきてくれると助かる。私は周囲を見回した。
「アリア? お姉ちゃんだよ、居るなら出ておいで~」
シーン。
返事はなく、遠くで鳴いている虫の声がよく聞こえた。どうやら神出鬼没の妹が姿を見せてくれることはなさそうだ。
「だよね。よ、よし。行くわよ」
いつもの調子で門を潜ろとして、そこではたと足を止める。
「ん? あれ? 訪問文字、鳴らした方がいいのかな?」
いくら実家とは言えあれだけ啖呵を切って出た家なのだ、今更我もの顔で勝手に入るのは問題かな?
少し考えて、私は門の横にある壁、そこに描かれている魔方陣に魔力を通すことにした。訪問文字自体にも魔力が通っているので連絡を取るだけなら触れるだけで大丈夫なんだけど、こうすることで誰が来たのか相手に伝えることができる。もちろん陣に魔力を登録している人に限るけど。
返事は予想より随分と早かった。
「お帰りなさいませ、ドロシーお嬢様。今迎えの者を向かわせますので少々お待ち下さい」
「ハクさん」
術式越しに聞こえてきた声にほっとする。知らない門弟さんが出たら、前回屋敷で暴れた身としてはすごく気まずかった。
「あの迎えは大丈夫です。それよりも入って大丈夫ですか」
「もちろんです。ここは貴方の家なのですから」
ハクさんにそう言われると反論しにくい。
私は恐縮しながらも門をくぐった。門から屋敷まで無駄に距離があるけど、緊張のせいかここまで来る時同様、やけに短く感じた。
心臓の音が凄いことになってるし、屋敷に入る前に深呼吸して気持ちを落ち着けよう。
そう思っていたのにーー
「ええっ!? な、なんで?」
玄関の前に使用人が整列している。私を見るなり彼らは一斉に頭を下げた。
「お帰りなさいませ、ドロシーお嬢様」
「えっと、あの、た、ただいま?」
な、何なの? 今まで王様やラルド王子と一緒でない時にこんな出迎え受けたことなかったのに。
「あの、お父様に会いたいので、取り次いで貰えますか?」
「勿論でございます。お嬢様がお望みであればご当主様はいつでもお会いになられますよ」
この執事さんはどこの時空のお父様のことを話してるのかな? 少なくても私の知っているお父様は私が会いに来たからと言って、諸手を上げて喜ぶような人じゃなかったんだけど。
歓迎はされているものの、素直に喜べない気持ちを抱えて、私は玄関から屋敷の中へと入った。広いロビー。ここでお父様と決闘したのがもう何年も前の事のように思えた。
「上着をお預かりいたします」
「え? えっと……」
スカート履く時に愛用しているローブ似のパーカー。これを脱ぐと短いスカートが一層目立っちゃう。他の場所なら全然平気なんだけど、お父様の前だとーー
過去に頰を打たれた時のトラウマが蘇ってくる。
「お嬢様?」
「えっ? あ、はい。分かりました。……お願いします」
私は脱いだ上着を執事さんに手渡した。
「こちらでごさいます」
まだちょっと怖いけど、もうあの時とは違う。お父様がまた打ってきたって、黙ってやられたりしないんだから。
そう決心した私は、執事さんに続いてお父様のいるリビングルームへと足を踏み入れた。
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