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121 シャーベット
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「レオがたった一人で騎士三人を倒した?」
「一人っていうか、一応私達も手伝ったよ? でもレオ君がいたから逆転できたのは間違いないの」
それと三人全員が騎士じゃなくてドルドさんはドッペル族なんだけど、ちょっとデリケートな問題だから、そのあたりはまだセンカさんに話してない。
「最近のレオっちマジですごい感じよね。ちょっと前までは可愛い弟くらいにしか見えなかったのに、今はもう完全に男の子って感じ。シャドーデビルと戦ってた時も、正直めっちゃ格好良かったし」
「だがレオは魔法使いで、その上戦闘訓練を殆ど受けていないはずだろ。どうやって騎士三人を相手どったんだ?」
「それがさ、なんか身体強化魔法と併用して炎の魔法を使ってたのよね。こう、ブーストみたいに。ねっ」
と、アリリアナが私に視線を向けてきた。
「うん。単純な身体強化では騎士には勝てないから、炎を剣の一振りや自身の体に極小展開して、肉体の運動能力とは別に推進力を得ていたの」
「それは……凄いな。だが型稽古などの決められた動きの中でならともかく、戦闘行為の最中にそんなことが可能なのか?」
「少なくとも……私には無理かな」
レオ君が使っていた魔法自体は私でも扱える。でも、ただでさえ強化魔法を施した肉体はコントロールが難しいのに、あんな方法で推進力を上乗せしたらまともに動くのは絶対無理。出来て一方向だ。ううん。それ以前に近接戦闘の最中だと魔法の展開場所を間違えて自分を焼きかねない。
レオ君と同じ方法で運動能力を高めようと思ったら、私なら実戦に導入できるまで三年……もしかしたらその倍以上の時間修行しなくちゃいけないかも。それくらい難しい。なのに本人は自分がどれだけ高度なことをやっているのか気付いていない様子だった。
想像したものを当たり前のように実現させる力。
「天才……か」
ああ、口に出すと気分が重くなる。本当に嫌な言葉。それはね? 何となく気づいてたよ。そもそもドロテア家のガーディアンを単身で撃破できる時点であれ? って感じだったし。レオ君は炎の魔剣がすごいだけって言ってたけど、そして確かにあの剣は凄いけれど、それだけで倒せるほどあのガーディアンは甘い存在じゃなかった。天才……戦いの天才かぁ~。
「おい、アリリアナ。ドロシーはどうしたんだ? テーブルに突っ伏したまま動かなくなったぞ」
「たまにこんな感じになるのよね。ほら、ドロシーって色々考えるタイプじゃん? メルルがスイッチ入るとブラックメルルになるみたいに、ドロシーも何かの拍子に落ち込みドロシーになる感じ」
「放っておいていいのか?」
「ふっふっふ。このアリリアナさんに任せなさい」
「流石はルームメイトだな。で? 具体的にはどうするんだ?」
「悩める乙女に必要なもの。それは糖分でしょ。すみませーん。ナオさん、三色シャーベット一つください」
多分だけど近頃レオ君の様子が少しおかしかったのは自分の才能に気が付いたからだと思う。医療第二種の勉強は今まで通り頑張ってるけど、以前に比べて治癒魔法に対する熱量が変化してる気がするし。……レオ君、治癒使いになるの止めちゃうのかな? レオ君なら素敵な治癒使いになれると思うんだけどな。でも私にレオ君の将来に口出しする権利なんてないし。いや、でも……う~ん。
「ねぇねぇドロシー。ドロシーってば」
あれ? なんか体が揺れてるような? ああ、アリリアナか。
「……どうしたの?」
「はい。あーん」
「へ? あ、あーん……パクリ!」
あ、あまーーい!
「どう? コーヒーとシャーベットの組み合わせは? 案外いける感じでしょ」
「う、うん。凄く美味しい」
「そうでしょ。そうでしょ。はい、もう一回あーんして」
「あーん……パクリ!」
あまーーい!
コーヒーで温まった口内で溶けていくシャーベット。一緒に悩みまで溶けちゃいそう。
「美味しそうだな。私にも一口いいか?」
「いいわよ。はい、あーん」
パクリ!
センカさんの凛とした美貌が蕩けていく。やっぱりスイーツって凄い。これはもう魔法と言っても過言じゃない気がする。
「ふむ。やはり甘いものは正義だな」
「正義な感じよね」
「正義だよね」
私達は三つの色に分かれたアイスを皆で楽しんだ。
「一人っていうか、一応私達も手伝ったよ? でもレオ君がいたから逆転できたのは間違いないの」
それと三人全員が騎士じゃなくてドルドさんはドッペル族なんだけど、ちょっとデリケートな問題だから、そのあたりはまだセンカさんに話してない。
「最近のレオっちマジですごい感じよね。ちょっと前までは可愛い弟くらいにしか見えなかったのに、今はもう完全に男の子って感じ。シャドーデビルと戦ってた時も、正直めっちゃ格好良かったし」
「だがレオは魔法使いで、その上戦闘訓練を殆ど受けていないはずだろ。どうやって騎士三人を相手どったんだ?」
「それがさ、なんか身体強化魔法と併用して炎の魔法を使ってたのよね。こう、ブーストみたいに。ねっ」
と、アリリアナが私に視線を向けてきた。
「うん。単純な身体強化では騎士には勝てないから、炎を剣の一振りや自身の体に極小展開して、肉体の運動能力とは別に推進力を得ていたの」
「それは……凄いな。だが型稽古などの決められた動きの中でならともかく、戦闘行為の最中にそんなことが可能なのか?」
「少なくとも……私には無理かな」
レオ君が使っていた魔法自体は私でも扱える。でも、ただでさえ強化魔法を施した肉体はコントロールが難しいのに、あんな方法で推進力を上乗せしたらまともに動くのは絶対無理。出来て一方向だ。ううん。それ以前に近接戦闘の最中だと魔法の展開場所を間違えて自分を焼きかねない。
レオ君と同じ方法で運動能力を高めようと思ったら、私なら実戦に導入できるまで三年……もしかしたらその倍以上の時間修行しなくちゃいけないかも。それくらい難しい。なのに本人は自分がどれだけ高度なことをやっているのか気付いていない様子だった。
想像したものを当たり前のように実現させる力。
「天才……か」
ああ、口に出すと気分が重くなる。本当に嫌な言葉。それはね? 何となく気づいてたよ。そもそもドロテア家のガーディアンを単身で撃破できる時点であれ? って感じだったし。レオ君は炎の魔剣がすごいだけって言ってたけど、そして確かにあの剣は凄いけれど、それだけで倒せるほどあのガーディアンは甘い存在じゃなかった。天才……戦いの天才かぁ~。
「おい、アリリアナ。ドロシーはどうしたんだ? テーブルに突っ伏したまま動かなくなったぞ」
「たまにこんな感じになるのよね。ほら、ドロシーって色々考えるタイプじゃん? メルルがスイッチ入るとブラックメルルになるみたいに、ドロシーも何かの拍子に落ち込みドロシーになる感じ」
「放っておいていいのか?」
「ふっふっふ。このアリリアナさんに任せなさい」
「流石はルームメイトだな。で? 具体的にはどうするんだ?」
「悩める乙女に必要なもの。それは糖分でしょ。すみませーん。ナオさん、三色シャーベット一つください」
多分だけど近頃レオ君の様子が少しおかしかったのは自分の才能に気が付いたからだと思う。医療第二種の勉強は今まで通り頑張ってるけど、以前に比べて治癒魔法に対する熱量が変化してる気がするし。……レオ君、治癒使いになるの止めちゃうのかな? レオ君なら素敵な治癒使いになれると思うんだけどな。でも私にレオ君の将来に口出しする権利なんてないし。いや、でも……う~ん。
「ねぇねぇドロシー。ドロシーってば」
あれ? なんか体が揺れてるような? ああ、アリリアナか。
「……どうしたの?」
「はい。あーん」
「へ? あ、あーん……パクリ!」
あ、あまーーい!
「どう? コーヒーとシャーベットの組み合わせは? 案外いける感じでしょ」
「う、うん。凄く美味しい」
「そうでしょ。そうでしょ。はい、もう一回あーんして」
「あーん……パクリ!」
あまーーい!
コーヒーで温まった口内で溶けていくシャーベット。一緒に悩みまで溶けちゃいそう。
「美味しそうだな。私にも一口いいか?」
「いいわよ。はい、あーん」
パクリ!
センカさんの凛とした美貌が蕩けていく。やっぱりスイーツって凄い。これはもう魔法と言っても過言じゃない気がする。
「ふむ。やはり甘いものは正義だな」
「正義な感じよね」
「正義だよね」
私達は三つの色に分かれたアイスを皆で楽しんだ。
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