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114 控室
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「もう、急なんだから」
「アハハ。ゴメーン。でもさ、イリーナも言ってたけど他のメンバーの実力を把握しておくのも大切なことじゃない?」
「そうだけど、模擬戦の準備って大変なんだよ?」
私達は杖や道具に身代わり魔法を掛けていく。魔法を使った模擬戦闘では一歩間違えると大惨事になるから、こうやってあらかじめ魔法を掛けておくことで、模擬戦闘で受けるダメージを身代わりの人形へと移すことができる。もちろんダメージの転化というは本来かなり難易度の高い魔法であって、事前にちょっと準備したくらいで可能になるものじゃないけど、特殊な魔法陣の上でならそれが可能になる。そしてその魔法陣があるのはギルドや魔法学校など限られた場所だけ。
「俺は模擬戦闘がある授業は取ってこなかったからちょっと楽しみだな。騎士がどれくらい強いのかも気になってたし」
ギルドで借りた大剣に身代わり魔法を掛けながら、レオ君が年頃の男の子そのまんまな顔でそんなことを言う。
「最近のレオっち、本当私好みのノリじゃん。どう? 私を二人目の彼女にしてみる気はない?」
「バッ、な、何言ってんだよ。それに二人目ってなんだよ? 一人目がいるみたいな言い方すんなよな」
「あ~、居なかったっけ? でも候補はいるんじゃないのかな~」
アリリアナがわざとらしくこちらをチラチラ見てくる。アリリアナのことは大好きだけど、レオ君のことでいちいちからかってこようとするのはちょっとだけ腹立たしい。私は胸当てやら籠手やら模擬戦で使うかどうかも分からない道具を持って親友の側へと移動した。
そしてニッコリと笑いかけるのだ。
「アリリアナ、これもお願い」
「え? あの、ドロシー……さん? でもそれ使わないとおもーー」
「お願い」
「あ、はい」
しゅんとなったアリリアナにこれでもかと防具を渡していく。ちょっとやりすぎかな? まぁアリリアナのことだから途中で何だかんだ理由をつけて逃げるだろうし、大丈夫だよね。
「やっていますね」
身代わり魔法が掛かっているギルドの闘技場へと続く控室。私達が借りたその部屋に入ってきたのは、縁のない眼鏡をかけた美女だった。
「アマギさん、どうしてここに?」
「確認係ですよ。身代わり魔法がちゃんと掛かっているか確認する人がいないと問題でしょう? それと最近できた教え子にこれを渡しに」
「おお、ついに免許皆伝な感じ?」
「初歩の初歩を学んでいる身で何を言ってるんですか。とは言えセンスは悪くないので普段から糸を使う練習を欠かさないように」
アマギさんが取り出したのは白いグローブ。アリリアナは受け取ったそれを早速身につけた。
「どう、ドロシー。いい感じ?」
「うん。格好いいよ」
そういえばアリリアナ、以前アマギさんにキスされた時に何でも一つ言うこと聞くと言われて、その約束を使って糸を使った魔法を習ってるんだっけ。
「そのグローブは小型ロッドの代わりにもなりますので、上手く使ってくださいね」
「超便利じゃん。ハッ!? まさか後で代金請求されたりとか?」
「そんなことはしません。ですが、そうですね。今度食事でもしませんか? もちろん私の奢りです」
「アハハ。それって結局私が得してるんですけど」
「若い子との会話は私にとって貴重な楽しみなので、どうぞ存分に得してください」
そう言ってニッコリと笑うアマギさん。な、何だろ? あの笑みを見ているとよく分からないけどちょっぴり怖い……ような?
「そんなんでいいなら全然オッケーな感じです。ふっふっふ。秘密兵器も手に入れたし。これで私たちの勝利間違いなしね」
「それは聞きづてなりませんわね」
別室で準備をしていたイリーナさんがやってきた。後ろにはドルドさんだけじゃなくてロロルドさんもいる。
「おっ、準備整った感じ?」
「ええ。S指定の魔物を倒した腕前。見せてもらいますわ」
「ふふん。腰抜かしても知らないからね」
視線で火花を散らすアリリアナとイリーナさんだけど、険悪な雰囲気は全然ない。見ればレオ君やロロルドさんもちょっと楽しそうな顔をしてる。私はあまり人と力比べって好きじゃないからこう言う空気ってちょっと苦手だけど、アリリアナやイリーナさんの言う通り必要なことだとは思うので、盛り上がる皆に続いてギルドの闘技場へと足を踏み入れた。
「アハハ。ゴメーン。でもさ、イリーナも言ってたけど他のメンバーの実力を把握しておくのも大切なことじゃない?」
「そうだけど、模擬戦の準備って大変なんだよ?」
私達は杖や道具に身代わり魔法を掛けていく。魔法を使った模擬戦闘では一歩間違えると大惨事になるから、こうやってあらかじめ魔法を掛けておくことで、模擬戦闘で受けるダメージを身代わりの人形へと移すことができる。もちろんダメージの転化というは本来かなり難易度の高い魔法であって、事前にちょっと準備したくらいで可能になるものじゃないけど、特殊な魔法陣の上でならそれが可能になる。そしてその魔法陣があるのはギルドや魔法学校など限られた場所だけ。
「俺は模擬戦闘がある授業は取ってこなかったからちょっと楽しみだな。騎士がどれくらい強いのかも気になってたし」
ギルドで借りた大剣に身代わり魔法を掛けながら、レオ君が年頃の男の子そのまんまな顔でそんなことを言う。
「最近のレオっち、本当私好みのノリじゃん。どう? 私を二人目の彼女にしてみる気はない?」
「バッ、な、何言ってんだよ。それに二人目ってなんだよ? 一人目がいるみたいな言い方すんなよな」
「あ~、居なかったっけ? でも候補はいるんじゃないのかな~」
アリリアナがわざとらしくこちらをチラチラ見てくる。アリリアナのことは大好きだけど、レオ君のことでいちいちからかってこようとするのはちょっとだけ腹立たしい。私は胸当てやら籠手やら模擬戦で使うかどうかも分からない道具を持って親友の側へと移動した。
そしてニッコリと笑いかけるのだ。
「アリリアナ、これもお願い」
「え? あの、ドロシー……さん? でもそれ使わないとおもーー」
「お願い」
「あ、はい」
しゅんとなったアリリアナにこれでもかと防具を渡していく。ちょっとやりすぎかな? まぁアリリアナのことだから途中で何だかんだ理由をつけて逃げるだろうし、大丈夫だよね。
「やっていますね」
身代わり魔法が掛かっているギルドの闘技場へと続く控室。私達が借りたその部屋に入ってきたのは、縁のない眼鏡をかけた美女だった。
「アマギさん、どうしてここに?」
「確認係ですよ。身代わり魔法がちゃんと掛かっているか確認する人がいないと問題でしょう? それと最近できた教え子にこれを渡しに」
「おお、ついに免許皆伝な感じ?」
「初歩の初歩を学んでいる身で何を言ってるんですか。とは言えセンスは悪くないので普段から糸を使う練習を欠かさないように」
アマギさんが取り出したのは白いグローブ。アリリアナは受け取ったそれを早速身につけた。
「どう、ドロシー。いい感じ?」
「うん。格好いいよ」
そういえばアリリアナ、以前アマギさんにキスされた時に何でも一つ言うこと聞くと言われて、その約束を使って糸を使った魔法を習ってるんだっけ。
「そのグローブは小型ロッドの代わりにもなりますので、上手く使ってくださいね」
「超便利じゃん。ハッ!? まさか後で代金請求されたりとか?」
「そんなことはしません。ですが、そうですね。今度食事でもしませんか? もちろん私の奢りです」
「アハハ。それって結局私が得してるんですけど」
「若い子との会話は私にとって貴重な楽しみなので、どうぞ存分に得してください」
そう言ってニッコリと笑うアマギさん。な、何だろ? あの笑みを見ているとよく分からないけどちょっぴり怖い……ような?
「そんなんでいいなら全然オッケーな感じです。ふっふっふ。秘密兵器も手に入れたし。これで私たちの勝利間違いなしね」
「それは聞きづてなりませんわね」
別室で準備をしていたイリーナさんがやってきた。後ろにはドルドさんだけじゃなくてロロルドさんもいる。
「おっ、準備整った感じ?」
「ええ。S指定の魔物を倒した腕前。見せてもらいますわ」
「ふふん。腰抜かしても知らないからね」
視線で火花を散らすアリリアナとイリーナさんだけど、険悪な雰囲気は全然ない。見ればレオ君やロロルドさんもちょっと楽しそうな顔をしてる。私はあまり人と力比べって好きじゃないからこう言う空気ってちょっと苦手だけど、アリリアナやイリーナさんの言う通り必要なことだとは思うので、盛り上がる皆に続いてギルドの闘技場へと足を踏み入れた。
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