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107 景気づけ
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「そう言うわけで、アリリアナ組の皆様、今日からよろしくお願いしますわ」
同じクランとして活動することになったイリーナさんとロロルドさんとドルドさん。金髪縦ロールを揺らしながらイリーナさんが三人を代表して頭を下げてきた。
「えっと、よろしくお願いします」
「よろしくな」
自己紹介は既に前回会っている時に終えているから、レオ君と一緒に頭を下げるに留めておく。
「んじゃ、挨拶も終わった感じだし、そろそろ食べましょうか。今日は私の奢りだから、まだまだ好きなモノを遠慮なく頼んじゃっていいからね」
ギルドが運営する定食屋『ギルドにおいでやす』。冒険者がクエストの話をしやすいよう席は全部個室として区切られていて、聞き耳を立てたくらいでは隣の話は聞こえてこない。その上駆け出しの冒険者からベテランの冒険者まで幅広い層に満足できる味と値段を提供できる優良店だ。
「お美しいお嬢さんに奢ってもらうのは気が引けますが、リーダーの命令とあればこのロロルド、断腸の思いで奢られましょうぞ」
白髪をオールドバックにしたイリーナさんの護衛兼執事であるロロルドさん。貴族ではないって話だけど、ナイフとフォークの使い方が凄く様になっていた。スキンヘッドでちょっとだけ強面のドルドさんは注文した料理を前にジッと見つめたまま何故か動かない。
「あれだな、普段どんな物を食べているかがテーブルに現れてるな」
皆が注文した品を見て、レオ君がそんなことを呟いた。
私たち三人の前にはちょっとお高いけど、どちらかといえば庶民派の料理。だけどイリーナさん達の前にはお父様の屋敷で出くるような品々が並んでいる。
『ギルドにおいでやす』は新人冒険者のために値段と量が反比例するかのような料理がたくさんあるけど、ベテランさんを対象とした高級な物も多く取り扱っていて、それらが三人の前に見事に並んでた。
「しまった。つい、いつもの定番頼んじゃったけど、考えたら私もこの機会に新しい味を開拓するべきよね」
「アリリアナ、大丈夫なの?」
何やら追加注文しそうな雰囲気の友人に、私はこっそりと耳打ちした。
「何が?」
「何って、お金。やっぱり私も出すよ」
「アハハ。S級討伐のお金、いくらだったか忘れちゃった感じ? このくらいどうってことない感じでしょ」
「それはそうだけど……」
一緒に暮らしてると分かるけど、最近のアリリアナの散財具合がひどい気がする。
「ドロシー、前から思ってたけどアンタって良いところの出にしてはちょっと細かすぎな感じじゃない? 大丈夫? 人生楽しんでる?」
「何言ってるの! アリリアナが大雑把すぎなんでしょ」
人生楽しいかって、最近誰かさんのおかげですっごく楽しいんだから。もちろん言ってあげないけど。
「アハハ。ごめん、ごめん。確かに最近ちょっと使いすぎな自覚はある感じ。それ気にして言ってくれたんでしょ? ありがとね」
「分かってるなら良いけど……」
「まっ、新メンバーの歓迎会にケチくさいこと言いたくなかったのもあるけど、景気づけも兼ねてるんだからドロシーも楽しんでよ」
「景気づけ?」
「そっ。は~い。ちょっとみんな注目~」
アリリアナが手をパンパン叩いて、皆の注意を引いた。
「実はギルドで採取系クエストの競売やってたから、十%引きプラス期間申請三週間で申し込んだら見事に受かっちゃた感じなのよね。なのでここでついでに新生アリリアナ組の初クエストを発表したいと思います」
「いいですわね。私も食事会だけでは物足りないと思っていたところですわ。その手腕、さすがは私やドロシーさんの上に立つだけのことはありますわね」
「アハハ。もっと言って、もっと言って」
アリリアナは何故か私の肩をバシバシと叩いた。
「ドロシーさん、これすごく美味いぞ」
「え? どれ」
「ほら、これ。よかったら食べてみろよ」
隣に座るレオ君がお皿に乗った串料理を私の手の届く所に置いてくれた。なんか焼き鳥っぽくないけど、なんのお肉だろ? でも折角勧めてくれたんだし、一つ頂いちゃおう。
「……あっ、本当だ。美味しい」
「だろ」
ニッコリと笑うレオ君がすっごく可愛くて、ついその頭を撫でちゃった。
「……何してるんだ?」
「あ、ご、ごめんなさい。つい」
炎のような真っ赤な髪からパッと手を離す。
「まぁ、いいんだけどさ」
そうは言いつつもレオ君はちょっぴり不満そうだ。うう、私ったら。レオ君が子供扱いされるのを嫌いなの知ってるから、以前ならこんな考えなしに触ったりしなかったのに。なんか一緒に暮らしているうちにどんどんアリリアナの影響を受けてる気がする。
「ちょっとそこ、いちゃついてないで私の話を聞くように」
「いちゃついてなんてないだろ。てか早く言えよ」
「ごめん。でも本当に美味しいよ。アリリアナも一本どう?」
「どれどれ? ……うまっ、私も頼むわこれ。すみませーん。と言いつつ呼び出しボタンを連続プッシュ」
「やめなよ、もう」
私が傍迷惑な友人を止めていると、イリーナさんが呆れたような半目をアリリアナに向けた。
「まったく。クエストの話はどうなったのかしら? どうやら我らがリーダーはうつろいやすい精神をしているようですわね」
「良いではありませんか、お嬢様。生真面目ではあれど折れやすい心よりは余程安心できると言うものですぞ」
「だと良いのですが。……はぁ。ではせっかくなのでお酒でも頼むことにしますわ」
「お、イリーナさん飲める口? 言っておくけど私は結構強い感じよ」
私と飲むといっつも先にダウンするのに、どこからそんな自信が出てくるんだろう? 友人の根拠のない自信を不思議に思いつつも、私はレオ君に自分が注文した料理の一つを勧めた。
「騎士であるこの私を前に面白いことを言いますわね。それならこのお店で一番強いお酒をお願いしますわ」
「良いじゃん。良いじゃん。そうこなくっちゃ」
ギルドが運営するお店で一番強いのって、ちょっとチャレンジャーすぎる気がする。
「クエストの話、今日中に出来ると思うか?」
「分かんないけど……ちょっと無理かも」
「だよな」
私とレオ君はため息を一つ付くと、つぶれたアリリアナをどっちが運ぶかを話し合った。
同じクランとして活動することになったイリーナさんとロロルドさんとドルドさん。金髪縦ロールを揺らしながらイリーナさんが三人を代表して頭を下げてきた。
「えっと、よろしくお願いします」
「よろしくな」
自己紹介は既に前回会っている時に終えているから、レオ君と一緒に頭を下げるに留めておく。
「んじゃ、挨拶も終わった感じだし、そろそろ食べましょうか。今日は私の奢りだから、まだまだ好きなモノを遠慮なく頼んじゃっていいからね」
ギルドが運営する定食屋『ギルドにおいでやす』。冒険者がクエストの話をしやすいよう席は全部個室として区切られていて、聞き耳を立てたくらいでは隣の話は聞こえてこない。その上駆け出しの冒険者からベテランの冒険者まで幅広い層に満足できる味と値段を提供できる優良店だ。
「お美しいお嬢さんに奢ってもらうのは気が引けますが、リーダーの命令とあればこのロロルド、断腸の思いで奢られましょうぞ」
白髪をオールドバックにしたイリーナさんの護衛兼執事であるロロルドさん。貴族ではないって話だけど、ナイフとフォークの使い方が凄く様になっていた。スキンヘッドでちょっとだけ強面のドルドさんは注文した料理を前にジッと見つめたまま何故か動かない。
「あれだな、普段どんな物を食べているかがテーブルに現れてるな」
皆が注文した品を見て、レオ君がそんなことを呟いた。
私たち三人の前にはちょっとお高いけど、どちらかといえば庶民派の料理。だけどイリーナさん達の前にはお父様の屋敷で出くるような品々が並んでいる。
『ギルドにおいでやす』は新人冒険者のために値段と量が反比例するかのような料理がたくさんあるけど、ベテランさんを対象とした高級な物も多く取り扱っていて、それらが三人の前に見事に並んでた。
「しまった。つい、いつもの定番頼んじゃったけど、考えたら私もこの機会に新しい味を開拓するべきよね」
「アリリアナ、大丈夫なの?」
何やら追加注文しそうな雰囲気の友人に、私はこっそりと耳打ちした。
「何が?」
「何って、お金。やっぱり私も出すよ」
「アハハ。S級討伐のお金、いくらだったか忘れちゃった感じ? このくらいどうってことない感じでしょ」
「それはそうだけど……」
一緒に暮らしてると分かるけど、最近のアリリアナの散財具合がひどい気がする。
「ドロシー、前から思ってたけどアンタって良いところの出にしてはちょっと細かすぎな感じじゃない? 大丈夫? 人生楽しんでる?」
「何言ってるの! アリリアナが大雑把すぎなんでしょ」
人生楽しいかって、最近誰かさんのおかげですっごく楽しいんだから。もちろん言ってあげないけど。
「アハハ。ごめん、ごめん。確かに最近ちょっと使いすぎな自覚はある感じ。それ気にして言ってくれたんでしょ? ありがとね」
「分かってるなら良いけど……」
「まっ、新メンバーの歓迎会にケチくさいこと言いたくなかったのもあるけど、景気づけも兼ねてるんだからドロシーも楽しんでよ」
「景気づけ?」
「そっ。は~い。ちょっとみんな注目~」
アリリアナが手をパンパン叩いて、皆の注意を引いた。
「実はギルドで採取系クエストの競売やってたから、十%引きプラス期間申請三週間で申し込んだら見事に受かっちゃた感じなのよね。なのでここでついでに新生アリリアナ組の初クエストを発表したいと思います」
「いいですわね。私も食事会だけでは物足りないと思っていたところですわ。その手腕、さすがは私やドロシーさんの上に立つだけのことはありますわね」
「アハハ。もっと言って、もっと言って」
アリリアナは何故か私の肩をバシバシと叩いた。
「ドロシーさん、これすごく美味いぞ」
「え? どれ」
「ほら、これ。よかったら食べてみろよ」
隣に座るレオ君がお皿に乗った串料理を私の手の届く所に置いてくれた。なんか焼き鳥っぽくないけど、なんのお肉だろ? でも折角勧めてくれたんだし、一つ頂いちゃおう。
「……あっ、本当だ。美味しい」
「だろ」
ニッコリと笑うレオ君がすっごく可愛くて、ついその頭を撫でちゃった。
「……何してるんだ?」
「あ、ご、ごめんなさい。つい」
炎のような真っ赤な髪からパッと手を離す。
「まぁ、いいんだけどさ」
そうは言いつつもレオ君はちょっぴり不満そうだ。うう、私ったら。レオ君が子供扱いされるのを嫌いなの知ってるから、以前ならこんな考えなしに触ったりしなかったのに。なんか一緒に暮らしているうちにどんどんアリリアナの影響を受けてる気がする。
「ちょっとそこ、いちゃついてないで私の話を聞くように」
「いちゃついてなんてないだろ。てか早く言えよ」
「ごめん。でも本当に美味しいよ。アリリアナも一本どう?」
「どれどれ? ……うまっ、私も頼むわこれ。すみませーん。と言いつつ呼び出しボタンを連続プッシュ」
「やめなよ、もう」
私が傍迷惑な友人を止めていると、イリーナさんが呆れたような半目をアリリアナに向けた。
「まったく。クエストの話はどうなったのかしら? どうやら我らがリーダーはうつろいやすい精神をしているようですわね」
「良いではありませんか、お嬢様。生真面目ではあれど折れやすい心よりは余程安心できると言うものですぞ」
「だと良いのですが。……はぁ。ではせっかくなのでお酒でも頼むことにしますわ」
「お、イリーナさん飲める口? 言っておくけど私は結構強い感じよ」
私と飲むといっつも先にダウンするのに、どこからそんな自信が出てくるんだろう? 友人の根拠のない自信を不思議に思いつつも、私はレオ君に自分が注文した料理の一つを勧めた。
「騎士であるこの私を前に面白いことを言いますわね。それならこのお店で一番強いお酒をお願いしますわ」
「良いじゃん。良いじゃん。そうこなくっちゃ」
ギルドが運営するお店で一番強いのって、ちょっとチャレンジャーすぎる気がする。
「クエストの話、今日中に出来ると思うか?」
「分かんないけど……ちょっと無理かも」
「だよな」
私とレオ君はため息を一つ付くと、つぶれたアリリアナをどっちが運ぶかを話し合った。
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