異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第19章 最強の証篇

第239話 優勝者

　「な、何者だ！アイツ！」

　「勇者に勝っただと…」

　「なんて強さ」

　フィールドに立っているのはミスターKのみ。あれだけ無双していたリュートでさえ、地面に伏せている。誰も知らないダークホースであるミスターKの勝利に会場も騒然としている。

　「こんな逸材が居たとは…大会を開いて正解でしたね。彼をぜひ手元に置いておきたいですね…」

　ユリウスはそう呟く。

　ミスターKの勝利から数時間後。

　「うぅ…ここは？」

　リュートが目を覚ます。そこは知らない天井だった。

　「ここは医務室です。リュート様は戦闘時に気を失いましてこちらに運び込まれました」

　闘技大会の医療スタッフがそこには居た。そうだ。俺はカナトことミスターKに敗北してしまったのだ。

　「ご気分はどうですか？どこか痛む場所はありませんか？」

　「すまない、迷惑をかけた。もう大丈夫だ。ありがとう」

　ベッドから起き上がり、医務室を後にする。

　「あっ！リュート大丈夫？」

　医務室から出て早々、クリア達が待っていた。クリア達の方が先に目覚めていたようだ。

　「あぁ。怪我とかはしてないから大丈夫だよ」

　「リュート様が眠っている間に、闘技大会はお開きになりましたわ」

　「俺が寝ていた間に何があった？」

　クリア達から優勝したミスターKの行動を聞いた。ミスターKは賞金を受け取った後、ユリウスの王から直々に直属の部隊への推薦があり、それを断ったそうだ。王直属の部隊など、一般人がなれるようなものでは無い。ミスターKが本当に欲しかったのは賞金だけみたいだ。

　「はぁ…負けちまったな…」

　魔王に出し抜かれる事はあったが、敗北という敗北はしてこなかった。正直言って悔しい。

　「あのミスターKって言う人はリュートでも勝てないってこと？」

　「本気を出しても勝てるかわからないな」

　「リュートも歯が立たない。そんな強敵がまだこの世界にいるということか…」

　確かにそうだ。クリア達はミスターKがカナトという事は知らない。その事を考えると、俺たち異世界人は強くなれるシステムがあるのかもしれない。最近この世界に来たばかりのカナトでさえ、あの力のつけようだ。もしも、まだ会っていない異世界人が居て、尚且つその人物が長時間この世界に滞在したらとんでもない強さになっているのではないだろうか。

　「リュート？ボーっとして、どうしたの？まだ体の調子が悪い？」

　「いや、大丈夫だクリア。心配かけたな。大会も終わったし、帰ろう」

　「そうだね」

　こうして、ユリウス主催の闘技大会はミスターKことカナトの優勝で幕を閉じた。