異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第14章 侵略する帝国篇

第159話 人海

　「みんな。着いたぞ」

　目の前には巨大な壁で囲まれた城塞都市が広がる。それがナバル帝国だ。

　「何だか静かですわね」

　「私たちが来ることは知っているはずだが…」

　確かに不自然に静かにな気がする。すると、草陰や壁の上で蠢くものを感じた。そして、唐突に城門が開いた。

　「来るぞ！みんな構えろ」

　各自武器を構える。全身を鎧で武装し、様々な武器を持った、たくさんの兵士たちが雪崩のように押し寄せる。まさに人の海だ。

　「な、なんて数だ」

　「一体どこからこのような戦力を確保したんだ？」

　俺達はあっという間に取り囲まれてしまった。その数はざっと10万。対する俺達は6人。圧倒的な量差だ。しかし、負けるような俺達では無い。

　「吹き飛べ！炎神プロメテウス！」

　魔法で兵士たちを吹き飛ばす。特にこれと言った強さは感じない。何処と無く違和感を感じる。

　「重力操作グラヴィティ･プロセス！」

　「白き乙女の心ホワイト･ハート！」

　「破滅の雨ルイン･レイン！」

　クリア、サレナ、ミラはいつもの攻撃で敵を蹴散らしている。

　「堕落の雨クラッシュ･レイン！」

　ローザは以前手に入れた形なき魔器ノーデモンズを完璧に使いこなしていた。

　そして、1番目を見張ったのはルージュだった。

　「炎魔法･壱式」

　ルージュの前方に巨大な魔法陣が出現する。

　「紅蓮渦ルージュ･スパイラル」

　巨大な炎の渦が巻き起こる。その火力は俺の最大炎魔法に引けを取らない。初めて出会ったあの朝と見比べるととてつもない成長だ。全員の中で一番成長率が凄い気がする。

　「光魔法･参式、爆裂光エクスプロージョン･レイ！」

　大規模な光の爆発が起こる。大勢の敵兵が吹き飛ぶ。この大魔法が何発も撃てるのだ。対多数戦なら間違いなくルージュが群を抜いている。
　
　「やるなルージュ！俺も負けてはいられない！」 

　一応、ルージュに魔法を教える側だった俺も負ける訳には行かない。ルージュでは出来ない魔法で対抗する。

　「合成ユナイト」

　俺の右手にビー玉サイズの虹色の玉が出来る。

　「弾け飛べ！虹玉爆散レインボー･ビックバン」

　右手から玉が飛んでいき、敵兵の真ん中で止まる。そこから虹色の光が広がり、巻き込まれた敵兵達は消滅した。

　「おかしい」

　「リュート？どうしたの？」

　「いくらなんでも静かすぎる」

　爆発に巻き込まれようと、炎に焼かれようと、切り裂かれても、兵士たちは声ひとつあげない。

　「こいつは…！クローンか？」

　顔を覆っていた兜が外れた。兵士たちは皆同じ顔をしていた。