異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第12章 反撃の狼煙篇

第141話 感情覚醒

　どのくらいの時間が経ったのだろうか。現在、俺は時間も空間もあやふやな場所を漂っている。俺はまた失敗してしまったのだろうか。

　いや、まだだ。まだ諦めきれない、諦める訳にはいかない。みんなの思いと使命を背負っているのだ。こんな所では終われない。
　
　何か策はないだろうか。今まであったことを思い出す。今まで色々な戦いがあった。
　今までの戦闘で必ずと言っていいほど勝敗に関係していたあるものがある。この世界はそのあるものが重要な役割のようだ。そう、「感情」だ。俺は怒りの感情覚醒者だ。怒れば怒るほど力が溢れてくる。
　つまり、俺の中の怒りを爆発させれば、この状況も打開できるかもしれない。

　怒れ、心の底から。弱者を蹂躙し、みんなを傷つけた魔王に。まんまと魔王の罠に嵌った挙句、百年後に飛ばされ、みんなに辛い思いをさせた自分に怒れ。

　『感情の規定値を突破しました』

　アナウンスが来た。だが、まだ足りない。まだまだ怒りを燃やす。

　『感情の規定値を突破しました』

　『感情の規定値を突破しました』

　『感情の規定値を突破しました』

　『感情の規定値を突破しました』

　『感情の規定値を突破しました』

　脳内アナウンスがとめどなく流れる。

　『感情の昂りが限界値になりました』

　『覚醒アウェークニングしますか？』

　『はい　いいえ』

　なんだ？今まで見たことの無い選択肢だ。なりふり構っては居られない。

　「はい」

　『覚醒アウェークニング承認。覚醒します』

　ドクン！体に力が漲る。それと同時に、感じたことの無い感覚が湧き上がる。この感覚は…不味い！意識が持っていかれる！

　『我に身を委ねろ！怒り、猛る感情の波に！』

　頭の中に声が響く。まるで感情が人格を持ったみたいな感覚だ。

　こんな得体の知れないやつに身を委ねる訳には行かない。そして何より…こんな力の塊を俺が手放すわけがない。

　「お前の力を寄越せ！」

　逆に俺がそれを取り込む。そうすれば、俺の中の何かが変わる気がした。

　『馬鹿な…感情の力に溺れないのか！』

　「あぁ！あまり俺を舐めるな！誰だか知らないが、お前は俺の踏み台になるんだよ！」

　『面白い！我の力を使い、世界を統べるがいい！』　

　脳内の声が消え去り、飛びそうだった意識が覚醒する。更なる力が内から溢れ出す。

　『覚醒が完了しました』

　この力ならば、行ける！

　「次元操作ディメンションプロセス･転移シフト！」

　次元の狭間をさまよっていた竜神は、新たな力を得て現世に帰還する。